「ストレス社会におけるセロトニン的生活の勧め」

「ストレス社会におけるセロトニン的生活の勧め」

運動連鎖アプローチ研究所
セロトニン道場第一期生
山本尚司

(keyword)ストレス・精神障害・セロトニンの基礎と応用

Ⅰ.はじめに
 セロトニン的生活とは、まさに規則正しく自然の摂理に則って生活をするということが大前提となります。この太古から太陽が昇ると同時に活動を始め、陽が落ちると就寝するという基本が現代生活において崩れていることは明らかです。当たり前の生活習慣の意義を改めて学術的に再認識することで、意図的に自然に近い生活にコントロールしていく作業をしていく必要があるのです。ではそのより自然の摂理にそった生活とは何か?そして便利になったであろう現代が、敢えて直面しているストレス社会とは何なのか?
人は生活する上で必ずストレス反応が生体内で起きています。ストレス反応の起きない人間はいないわけですが、その中でストレスに対して生体がどのような準備状態にあるかが大切となってきます。原点回帰ともいうべきリトリートが流行っていますが、セロトニン的生活が目指すところは、積極的に社会に対して向き合いトライしていく活動性であろうと考えます。
今回、現代社会におけるライフスタイルを、あらゆる角度から見直し生体内に何が起こっているかを明らかにすることで、日々のセルフマネージメントをしていくための知識というテクニックを身につけ、そして実際に運動療法などの実践方法について述べていきたい。

Ⅱ.ストレスとは何か?
 .ストレスの歴史
キャノンは物理工学の考えである物体に外から力を加えると、それによりお互いに力を及ぼし、歪み(ストレイン)が生じるという考えを生物にも用いました。つまり、生体がストレス刺激に応じて、それぞれ個別に反応をすることにより、生体の内部環境が一定に保たれるということです。この反応の中心は交感神経一副腎髄質系の活性化としています。例えば、恐怖を感じると、ドキドキしたり、目をかっと見開いたり、空腹を感じなくなったりする反応です。これらの反応は闘争や逃走に有利な反応で、緊急反応と呼ばれたりしています。
 これに対して、セリエはストレス刺激の種類に関わらず非特異的に全身性に起こる反応をストレスとしました。そして、このストレス反応の中心は下垂体前葉(ACTH)−副腎皮質ホルモン系(HPA系)とし、この反応が環境変化に対する生体の防衛反応として、短期的には適応するように働いているとしました。これをセリエは「汎適応症候群」とよび、刺激が加わったときに生体が示す反応を「ストレス」とし、この反応を生じさせる刺激を「ストレッサー」と名付けました。
 セリエは、ストレス刺激の種類に関わらず起こる非特異的反応をストレスとしました。ストレス反応としての非特異的反応を定量的に証明することは困難です。しかしながら、ストレスの多さと動脈硬化が生じる指標が比例するなど、ストレスに共通する何らかのメカニズムがあるのではと近年考えられるようになっています。また、日常生活においてストレスという言葉が多用されるのは、この語のもつ情感に訴える強さが端的で便利であると、日本人だけでなく、世界中の人々が感じているからではないかとされています。
  職場での人間関係やテクノストレスなど肉体的ではない精神的なストレスが慢性化したものになると、胃潰瘍、糖尿病、心臓病などが発症するとがわかっています。つまり、これらはストレスが身体に与える影響であり、「胸腺・リンパ腺の委縮による免疫力の低下」「副腎皮質の肥大」「胃潰瘍」をセリエのストレス三兆候としてまとめられています。

.ストレスと自律神経
交感神経が高まると白血球の一つである顆粒球が以上に増えてしまう。顆粒球の特徴は酸化力を持つ活性酸素であり、顆粒球が寿命を迎えて壊れると大量の活性酸素を放出する。活性酸素で血液が酸化すると血液が流れにくくなり、さらなる低体温を招くという悪循環に陥る。では副交感神経が常に優位であればいいかというと、そうとばかりは言えない。何故なら副交感神経が過緊張となると血行は一時的には良くなるものの、それが長く続くと逆に血行は悪くなってしまう。つまり緩慢な生活スタイルそのものも活動性を低下させるだけでなく自律神経そのものの働きも阻害するのである。
 適度な緊張と弛緩の繰り返し、つまり自律神経のバランスがあってこその恒常性なのです。

.ストレスと体温
身体的なストレス反応として、まず免疫力の低下が起きてきます。過剰なストレスにより自律神経のバランスが崩れると、免疫システムの精微なバランスにも影響を与えます。
 現代人は低体温化しているとも言われており、運動不足による筋力低下、エアコンの普及、過剰なストレスで自律神経のバランスが崩れていることが指摘されています。低体温とは平熱が36.0℃以下のことをいいます。いつ測るかによって体温は違いますが、起床時から3~5時間経過しても36.0℃以下であれば低体温と考えてよいようです。
ストレスに晒されると人は交感神経を興奮させ血管が収縮して血行が滞り体温が下がる一因となる。体温は一度上がると免疫力は5~6倍になり、逆に一度下がると30%低下するといわれています。




Ⅳ.精神障害の定義
 ストレスが関与している症候として、心身症があげられる。心身症とは身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害がみとめられる病態をいう。ただし神経症やうつ病など他の精神障害にともなう身体症状は除外する(日本心身医学会 1991年)。心身症は、過敏性大腸炎、胃潰瘍、狭心症、月経不順、高血圧、気管支喘息などの要素を有していることがあるとされている。いわゆる心の問題の関与が大きく精神の緊張やストレスが背景にあり、心因により症状の増悪に影響するとされている。
神経症はといえば、統合失調症や躁鬱病よりも軽症であり、病因が器質的なものによらない精神疾患のことを指している。軽度のパニック障害や強迫神経症がこれにあたり総称して神経症とされていたようですが、現代ではその曖昧さにより徐々に定義として使われなくなくなってきたとのことです。

Ⅴ.何故現代はうつ病が多いのか?
 精神疾患といえば重度であれば統合失調症や躁鬱病、中等度であれば神経症やパニック障害、適応障害などがある。精神疾患の原因の分類として心因性、外因性、内因性に分けられ、うつ病は脳の器質的要因と定義されている内因性に分類されている。しかしながら、うつ病は内因性に分類されてはいるが、明確には原因は心と脳の両面からおこるとされている。躁鬱病は重度の分類に入っていますが、うつ病は生活に支障を来さない軽症なものから、自殺企図などの重症例などが存在する。
 DSM-IVの診断基準は、2つの主要症状が基本となる。それは「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」である。精神症状と共に身体的な症状を生じる。身体的な症状は、診断に先立って訴えられることもある。
(精神症状)
ボーっとすることが多くなり、口数が少なくなる。学校・会社・部活動では、休みがちになったり、不登校になる。脳が萎縮することで集中力がなくなり、運動神経や記憶力が低下し、勉強ができなくなったり、人の話を聞かなくなる。「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどである。「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態である。この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされている。これら主要症状に加えて、「抑うつ気分」と類似した症状として、「自分には何の価値もないと感じる無価値感」、「自殺念慮・希死念慮」、「パニック障害」などがある。
(身体的症状)
頭が割れるような頭痛。不眠症などの睡眠障害。消化器系の疾患で急性胃炎、慢性胃炎、胃潰瘍。摂食障害に伴い、食欲不振と体重の減少あるいは過食による体重増加。全身の様々な部位の痛み(腰痛、頭痛など)訴えとしては「食欲がなく体重も減り、眠れなくて、いらいらしてじっとしていられない」もしくは「変に食欲が出て食べ過ぎになり、いつも眠たく寝てばかりいて、体を動かせない」というものである。
(その他)
自己中心的な行動が増えることで、対人関係が悪化し、さらに病気を悪化させるという悪循環が起きやすい。

 うつ病には実際には躁とうつを繰り返す双極性との鑑別が大切とされている。また、再発のない単極性、繰り返しうつ病を発症する反復性などの分類もあり、その病態を注意して観察する必要がある。いわゆる双極性でないうつ病のみのことを大うつ病性障害としており、これを一般的にうつ病と呼んでいる。
 現代社会において、このうつ病症状と合致する臨床所見が多いものと思われます。つまり、既に社会問題化しているという時点で、社会の構造やライフスタイルそのものが脳に何らかの問題を生じさせていることが推察されるのである。

Ⅵ.ストレスとプレッシャーの克服
 セロトニン道場で最もベースとなる基本原理は「ストレスには勝てない」という考え方です。スポーツ場面においてプレッシャーに強い、プレッシャーに押しつぶされた、などの表現がよく使われます。ただ大舞台で強さを発揮できる選手はいるもので、オリンピックのメダリストなどはその典型です。このプレッシャーに強いという表現からも、ストレスに強い人、弱い人という表現もまかり通ってきます。
プレッシャーとストレスは何が違うのでしょうか。プレッシャーとは精神的重圧と辞書にはあります。また失敗が許されない場面という状況設定がされています。ストレスにもいろいろな種類がありますが、その中でも勝負事がかかった場面においてはプレッシャーが使われるものと思われます。プレッシャーの場合は強い弱いと表現されており、過去の失敗などの経験が生きることなど紹介されています。つまり気持の持ちようなどで克服するといった感じです。スポーツ選手などの談話や紹介されるドキュメントでは往々にして、ストレスは心の問題として紹介されるため、ストレスの対処方法もカウンセリングなどの心の持ちようを強調されます。そしてストレスに強い人とは心の強い人、強心臓の持ち主といったイメージが強化されています。
 プレッシャーは強靭な精神力にて克服できるという風潮そのものが、ストレス社会と割れる現代において我々を苦しめている可能性があるわけです。強靭な精神力の実態がわからないで、なんとなく言葉として使っているからです。重度なストレスによってうつ病などに罹患している人たちに対して、いわゆる一般健康者は「気持の問題だ」と片付けてしまう風潮があります。自身の問題として捉えられない、他人の気持ちはわからない、その境遇になってみないとわからない、というのはある意味仕方がないことでもあり、健常者の発想そのものが具体的な心理的なストレスの対処方法や解明を遅らせていたのかもしれません。

Ⅶ..「身体的ストレス」と「精神的ストレス」の刺激と反応
ストレスには「身体的ストレス」と「精神的ストレス」の二種類があります。また、このストレスは原因となる刺激と結果としておこる反応に分けられます。ホメオスタシスを直接乱す刺激は身体的なストレス刺激であり、プレッシャーなどの生体がホメオスタシスを乱すと判断した刺激は精神的ストレス刺激に入ります。このあたりの分類分けは明確ではないようですが、ここでは刺激と反応を分けて話を進めていきます。
身体的ストレス刺激は暑さや寒さ、疼痛などの感覚器が直接感じる刺激になります。精神的ストレス刺激は、悲しみや辛さなどの境遇に関するものになります。身体的ストレスに対する反応については、自律神経失調などのメカニズムが明らかにされています。身体的なストレス刺激は、環境を変えることで容易に改善が可能ですが、精神的なストレス刺激においては取り除くことは困難です。もちろん精神的なストレス環境を変えればいいのですが、社会生活そのものがストレスとなっている現代において全てを放り出して南国に行くというような発想は夢物語でしかありません。実際に、そのような環境の変化ができたとしても、新たなストレスを生む可能性があります。沖縄やオーストラリアに移住しても、一年あまりで帰ってきてしまうといったことからも必ずしも癒しスポットと呼ばれる環境への移住がストレスの改善にはつながらないのです。
病気や怪我で肉体的なダメージにより、ストレスを抱えている人たちがいることは事実ですが、現代はどちらかというと肉体的なストレスよりも、精神的なストレスが社会問題となっています。もちろん、身体的および精神的なストレス反応は双方向性であり、どのようなストレス刺激によっても心身の反応の出方は個人差があると思いますが、心だけ身体だけという反応の出方はしないでしょう。
鬱病やパニック症候群、自殺の問題などはその典型であり、もはや気持の問題とか考え方の問題などというような自己責任的な考え方では対処できない社会問題となっています。

Ⅷ.現代社会と脳ストレス
.ドーパミン的価値観とセロトニン的価値観
 ドーパミン的価値観とは右肩上がりの高度成長期に代表される、頑張った分だけ結果と報酬が得られるというシステムのなかで生まれる考え方といえます。始まりは、明治維新に遡りますが、西洋文明、西洋思想が日本に入ってくることで、個人主義、能力主義がより鮮明に色濃く反映された社会となりました。努力したことがそのまま結果となって報酬につながらないという意味においては、戦後も同じような状況といえます。アメリカンドリームはまさにドーパミン的価値観に基づいており、成功の証としてお金が全面にでています。このドーパミン神経は、快楽や報酬があると働く特徴がある。よって努力と成功がセットであることが条件となっている。
 しかしながら、高度成長期が終わり成熟した世の中となった現在、このドーパミン的価値観が通用しなくなってきています。勉強をしていい大学を出ていい会社に入れば将来が保障される時代は終わり、将来に対する明確な目標が見出しにくくなったのです。誰もが、豊かになり中流意識が根付いて、余暇と娯楽を楽しみ世の中になって本当の意味でのハングリーが失われていることも背景にあります。豊かさとはお金や見た目の派手やかさではないことに気づいてきた時代ともいえます。有名人がボランティアをやることで、本当の意味においての喜びと充実感を味わっています。もちろんある程度の生活の豊かさは前提ですが、人のためになることを損得勘定抜きでやるということが自らの心の満足感になるのです。損か得かという時代から、共感することの喜びこそが人として元来持っている価値観なのです。前頭前野は意欲や集中力そして共感を司っており、セロトニン神経の活性化と深く関わっているのです。
 日本は江戸時代に侍魂や武士道など独特の言いまわしで、日本人としての価値観を表してきました。これは人の為、他人のためという考え方が根底にあり、そのことが人間を幸せにすることを知っているのです。日本人の根底には、この日本人的価値観が根付いており、そのことが欧米式の成果主義、合理主義が日本社会に最終的には適さない理由なのです。幕末の志士が日本人に共感をもって受け止められているのは、その本来持っている日本人が日本人である所以となっている価値観、DNAのレベルで響いてくるからでしょう。国際大会においてキャッチコピーが侍ブルー、侍スピリッツ、撫子ジャパンなどが無意識のうちに標榜されるのは、日本人としてのルーツがそうさせるのだといえます。この自分を捨ててチームや仲間のためにという考え方こそが、セロトニン的価値観であり日本人には最も必要なそして現代に求められている価値観なのです。
 .生活習慣病と脳ストレス
 現代は、昼夜逆転の生活や、24時間営業の店など便利になった反面、心身ともに休まる暇がなくなっています。つまり、ゆっくりと休まる暇がなく膨大な情報を処理しながら、次から次へと刺激を求めていく生活になっています。ロハスやリトリート、癒しが流行って、原点回帰を求めるのは生体がバランスをとるための自然な営みであると思われます。また、核家族化してパソコンや携帯電話の普及などで、ますます人と人とのコミュニケーション能力が損なわれる状況となっています。周りの環境もコンクリートで固められ、田舎であっても野山で遊ぶという姿は消えつつあります。むしろ都会のほうがスポーツをする環境などが整えられ、運動をしているぐらいです。いずれにせよ、運動不足による運動神経の低下は深刻な問題であり、その運動不足が心身の廃用を招き、身体のみならず情動のコントロールを障害する結果となっています。
疲労の蓄積も免疫力を低下させる要因となり、徹夜などの睡眠不足が繰り返されると好中球の可動レベルが低下してしまうという説もあります。また運動不足もストレスを増大させる要因として挙げられます。動かないということは筋肉の収縮弛緩の機会が減少することであり、リンパ管の働きが低下することで循環が停滞してしまいます。リンパ管にはリンパ球やマクロファージ、樹状細胞が内在しており流れが滞ると外からのウイルスなどが侵入してきたときに速やかに対処できなくなります。また鼻呼吸の習慣化も免疫力低下を予防する効果があります。鼻腔には線毛と粘膜に覆われたフィルターがあり、多くの細菌やウイルスがこのフィルターにて排除されます。このように、ストレスとは心理的要因のみならず身体的な背景も関係しており、同じ環境の同じストレス場面に遭遇しても身体の抵抗性に差がでることが考えられます。

Ⅸ.ストレス反応に対する対処・治療方法
精神的ストレス反応については、長らく「気持や心の問題」として捉えられていたため、具体的な対処方法が明確にならなりませんでした。もちろん何もせずに手をこまねいていたわけではなく、薬物療法やカウンセリングなどの治療方法にて対処してきたという歴史があります。既存の方法も昔と比べ格段に進歩しており、病態に応じた治療方法が確立されつつあるものと思われます。ただし、この社会現象と化した現状に追いついていないのも事実であり、根本的に原因や対処方法を見直していく必要に迫られています。受動的な方法からより能動的な方法は無いものか?その能動的な治療方法の先駆的な理論と実践方法が、セロトニン神経の活性化であるといえます。
まず精神的ストレスを考えるときに大切なことは、精神的ストレスの反応とは何なのかをはっきりさせることです。精神的ストレスの反応の正体は「脳が神経伝達物質を通じて感じるストレス」しており、総称して「脳ストレス」と定義しています。脳にとって神経伝達物質の阻害が起こることにより正常に機能しなくなるということです。脳がストレスを感じるということは、必ずストレスを伝達する物質があり、それを抑制する機能もあるということを前提として展開していきます。
繰り返しますが、うつ病は気持の問題ではなくて、脳のそれも神経伝達物質の問題であるということです。本来、うつ病は内因性精神障害に分類されており、脳の器質的な問題とされてきましが、その具体的な神経伝達物質および脳の局在が有田先生により解明されたということです。
そして、治療の方針として「ストレスに対抗するのではなく、ストレスを受け流す体質をつくる」機能により脳ストレスをコントロールするのです。

Ⅹ.気持や心が強くなるメカニズム
今まではストレスに勝つという発想で、気持で克服するという何の根拠もない漠然としたものでした。ストレスは無くすことはできないということを前提にすることで、スタンスは変わってきます。ストレスが身体に入ってくることは避けようのない事実であり、過度のストレスに対して、身体は必ず反応するわけです。あのイチローでさえも胃潰瘍になったぐらいですから、身体は確実にストレスに反応するのです。
強靭な精神というと滝に打たれてなどの精神修行が思い浮かびますが、これだけやったのだからというだけでは自信にならないことを私自身の経験からも感じます。大切なのは何を積み重ねたかということであり、問題を克服するために論点を明確化し、実証性のある具体的な対処方法を積み上げていくということなのです。滝を打たれることが大切なのではなくて、滝を打たれることで何が得られるかが大切なのです。実感としては精神的なものであったとしても、その中身は身体の中で何かが変化しているという実証性が不可欠なのです。このメカニズムのキーワードがセロトニン神経の活性なのです。

ⅩⅠ.セロトニン神経の活性化の方法。
.セロトニン神経の活性化の方法としては以下の3つの柱があります。
① リズム運動:リズム運動は意識的な呼吸法やウィーキング、スクワット、咀嚼、自転車、などがあげられます。
② 日光浴:日光浴は朝日を浴びるなど、太陽の出入りに合わせた規則正しい生活がベースとなります。
③ グルーミング:グルーミングとは動物でいえば毛づくろいのことであり、人間であればスキンシップがこれにあたります。広義にとらえると、人とのコミュニケーション、家族の団らんや、地域社会のコニュニティーなどにつながってきます。

.セロトニン神経の活性化の効果
① 意識の覚醒
② 情動の安定
③ 疼痛抑制
④ 姿勢筋・抗重力筋・運動ニューロンの促通効果
⑤ 自律神経調節

.脳内での変化
① 血中セロトニン値:セロトニン神経が活性化すると、脳内および血中のセロトニンが増えます。

② セロトニンは就寝時には分泌されないという特徴があります。つまり目覚めているときにセロトニン神経は活性化しているのです。これは運動時、安静時に関わらず常に活性化しています。就寝時においてはレム睡眠では全く活動がみられず、ノンレム睡眠時に僅かに見られる程度です。

③ 脳波:呼吸法においては5分後にはα波がみられ、15分でプラトーになるデータが示されている。このα波は睡眠時やリラックス時のα波とは種を異にし、あくまで呼吸法にて出てくるα波である。つまり座禅などで出てくるα波は眠くなったり活動性が下がるわけではなく、むしろ活動性が上がり元気になる。

④ セロトニン神経の変化:セロトニン神経活性のトレーニングを継続することで神経そのものの変化がみられる。セロトニン神経にはオートレセプターによるネガティブフィードバック機構を有しているが、トレーニングを継続することで、そのオートレセプターが減少してくる。

.活性化させるためのポイントとコツ。
セロトニン神経の活性化のポイントとしては以下が挙げられます。
① 複雑なリズムでなく単純なリズム運動が効果的

② 呼吸法で代表的な方法は座禅があるが、基本は入息出息に集中することである。つまり漫然と呼吸をしても効果はなく、集中することが不可欠なのです。特に効果的なのは腹式呼吸であり、呼気時に腹筋を締めるように意識すると良い。

③ リズム運動時に例えばお経を唱えるなど、運動時に声を出すことで集中力を高めることができます。お経などを唱えるという行為は、物語のようにストーリーがあり感情移入するわけでもなく、ただ機械的に声を出し続けていることになる。できるだけ考えないで唱えることで、より集中力が増す。

④ ウォーキング:音楽を聴きながらウォーキングやジョギングをしている光景をよく目にするが、音楽は歌詞などの意味が含まれるものよりも、リズム性のある音のほうが効果的である。また身体をモニタリングしたり、何かしら集中できる状況を作り出すことが大切である。

⑤ ヨガ:ヨガなどのボディーワークは呼吸と運動との連動性が強調されるエクササイズである。ポーズと呼吸を協調させることでセロトニン神経が活性化される。

⑥ セロトニン神経の活性化は血中濃度を測定することで判断できる。研究結果によると各種リズム運動5分後にはセロトニンが分泌され15分にてプラトーになる。つまり最低5分以上のリズム運動を続けることが必要である。

⑦ セロトニン神経の活性化の継続時間は一度であれば30分~二時間で効果が消失してします。目安として毎日30分、三か月継続することでセロトニン神経そのものが変化しいわゆるセロトニン神経を強化することができる。
ⅩⅠ.自らの体験
ヨガなどのエクササイズを呼吸にともない実践していくと、気持ちも体も落ち着いてきます。トレーニングが進んでくると普段の生活の中でも呼吸と動作が渾然一体化してきて、いわゆる心身ともにコリが無くなってきます。
丹田呼吸を実践することで、まずは身体のバランスが整うことでコリが解消し、それにともない情動面においてもプラス効果が感じられます。
 アロマテラピーなどの香りの効果もリフレッシュ・集中力・やる気の増進などを実感しており、セロトニン神経の関与がうかがえます。
 全ての講座において、呼吸、グルーミング、リズム性がキーワードとなっており、手段は違えども根本的な原理は共通項が見出せます。特に呼吸の効果は絶大であり、いかに横隔膜呼吸が大切であるかがわかります。意識的な腹筋を使って呼気をベースとした呼吸、ただ其れだけなのです。この簡単な方法にすばらしい脳ストレスを消すコンセプトが入っているとは誰も気づかないでいます。
 また、この忙しい現代生活のなかで、私の場合は問題に対してどのような思考をもつか?というカウンセリング的な気持の持ちようも効果的でした。
慢性的な不安感を抱えている場合は、プレッシャーへの対処の仕方がわからなくなっているのかもしれません。漠然とした不安感や課題に対して積極的になれない自分が見え隠れします。追い込まれないとできないというジレンマがストレスになります。
 その場合は、自分が抱えているプレッシャーを明確にすると楽になります。何に対して不安なのか?をしっかりと対峙して見つめなおすことで、見えてくるものがあります。意外にも、その原因を見つめていない自分に気がつきます。真正面から対峙するというスタンスも時には必要かもしれません。
 ・自分がその仕事に対して、何故強いプレッシャーを抱えるのか。
 ・どこからこの不安感がでてきているのか。
 ・自分はどこでこの不安感を身につけたのか。
 責任感の強さがプレッシャーに変わっている場合があります。どうやら自分の場合は完璧にできない、すぐにそのゴールが見えてこないという課題に対しては逃避する思考パターンがあるようです。
 ・そういう場合は、自分が何故強い責任感を身につけたのかを考えてみます。
原理原則から知りたいという欲求があるのと、自分で納得しなければ記憶しようとしない思考パターンが根本原因だと思われます。それは、原理原則を知りうる喜びが先に待っていると思うことで前向きになれそうです。

ⅩⅡ.まとめ
セロトニン欠乏脳の温床ともいえる社会のなかで、いかにセロトニン的生活を啓蒙していく必要性が高まっています。このセロトニンが欠乏してしまう要因の一つにストレスがあります。現代は便利にどんどんなってくることで、より快適な生活ができるはずだとそう信じて高度成長をがむしゃらに働いてきたはずなのに、ストレスは一向に減らないという矛盾した現象がみられます。
現代の心の問題は、生活習慣病としての側面が多分にあり、規則正しい生活と運動そのものが改善されなければ根本的な解決に至らないのです。その大切な柱である運動指導は、身体運動の専門家であるインストラクターやリハビリ従事者などが適任なのです。
また実際に心の問題やストレスを感じている人たちにとっても、可逆的な初期の段階で予防し対処しておくことが大切です。ちょっとした生活の中で実践できることでセロトニン神経を活性化できる方法はたくさんあります。大切なことは、その効果のある行為を意識するかどうかなのです。セロトニン的生活を身につけ、物質的な豊かさではない真の幸せはココロのあり様にかかってきます。そのココロの背景には脳があり、セロトニン神経が鍵を握っているのです。

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