太田麻子の女性のためのヨガ講座

Category: YOGA
太田麻子の「女性のためのヨガ」講座 レポート

 先日、開催されました「ヨガのPTへの応用」セミナーで講師をしいていただいた太田麻子先生のレポートです。女性のためのヨガというテーマで講義とデモをしていただきましたが、その興味の高さを改めて思い知ることになりました。女性参加者の真剣なまなざしと、そして男性がある意味避けて通っている女性の身体または女性の心についての理解を尊厳をもって向かい合うことの必要性を突き付けらたかのようでした。おそらく日本全国の女性のセラピストで機会があれば参加してみたい、話を聴いてみたいと思った方は沢山あると思います。太田さんにはそのような社会のニーズがあること、そして太田さんこそがその牽引者になれることを力説し、情報発信をしてもらえるように依頼しました。そのきっかけとして今回のレポートをお願いした次第です。今後の太田麻子さんの活躍に期待しましょう。以下は太田さんのレポートです。 
 尚、太田さんのヨガを受けたいという方はヨガジャヤhttp://www.yogajaya.com/jp/home.htmlにアクセスください。


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 ヨガの道は、とても清らかで、そして長い道のりです。
 ヨガの目的は、幸福や自由になること、すなわち、苦しみからの解放です。ヨガは、幸福や自由へのツール、道具です。
 最初の3年は味見で、10年続けるとそのヨガの恩恵が少し受けられるとわたしの先生は言っていました。
 ヨガは膨大な知識体として現代に伝わっていますが、知識だけでは成り立ちません。ヨガに不可欠なのは経験することです。経験していくと、ヨガの練習自体が実生活において大きく影響することが分かってきます。その各人の経験を記したものが、現代に伝わっているのに過ぎないのです。
 幸福や自由になるためには必然的に、自分にとっての幸福とは何か?自由とは何か?自分を苦しめているものはいったい何なのか?ということについて、見つめることになります。
 見つめる作業で非常に重要なことは、判断をしない、ということです。いいとか、わるいとか、そういった観点でみるのではなく、客観的に観察する、ということです。
 多くの場合、人を苦しめるのは、自分の経験や社会の枠組みのなかででつくられたもの、すなわち概念だったりします。そして、当然ひとそれぞれが積み重ねてきた経験というのはとても個人的なものなので、ひとそれぞれ、できあがっている概念が違ううえに、からだつきと性格が違うように、家族関係が違うように、毎日食べるものが違うように、それなりにみんなが何らかを抱えて、背負って生きているのです。もう少し深く説明すると、「わたし」というものを作り上げるのに、過ごしてきた過去と、社会での役割と、頭のなかでつくりあげられた概念を自分自身で握ってしまっているのです。親としてのわたし、恋人としてのわたし、理学療法士としてのわたし、日本人としてのわたし、というように。それぞれにとって、そのときどきの幸福と自由のありかたは変化していきますから、ひとの道を歩むことはどうやってもできません、共有することはできても。そういう意味では、ヨガの道はとても孤独な道です。だからこそ、他者と自分の経験を共有する、分かち合う仲間というのはことで、とても心強い存在になり得るのです。そして、ヨガを実践している、していないに関わらず、自分の人生経験がとても尊いことがわかると同時に(たとえぐうたら人生だったとしても)、他者の経験もおなじようにとても尊いものということがわかってきます。みんなそれぞれ何かしら抱えているのだな、ということがほんとうの意味でわかってくるのです。これは、ヨガの世界に存在する矛盾のひとつとしても解釈できます。ひとりひとり違う、ということを通して、みんな同じ、ということがわかるわけです。これが、他人にたいする思いやりの原点なのではないかな、と感じています。自分のことがとても大切だから、周りのひとのことも大切なのです。そして過ごしてきた過去や概念を手放すことができたとき、見慣れた風景が、全くちがう風景にみえてくるのです。ヨガの道は、ある意味とても個人的な道です。わたしは、ヨガジャヤインターナショナルティーチャートレーニングを終了していますが、そこでは、複数の講師によって指導がされますが、講師がそれぞれの経験をシェアしてくれたことにより、自分だけのヨガの道というのがあっていいのだと感じ、自分自身のこれからの歩みについて、まだ始まってもいないのに訳もなく肯定された気がしたことが印象に残っています。
 自分のなかの苦しみをよくみるときには、クリアなマインド(頭のなかの考え)で観察していくことが重要です。日常生活に追われていると、みているものは灰色のヴェールにつつまれてしまいやすく、観察が難しくなります。いかに、ヴェールを剥いだ状態で観察するか、ということがとても助けになります。わたしは2008年から毎年、御岳山で約1週間寝泊まりをして、クライウ゛シェリダンという先生とともにヨガの練習をしています。日常から離れた場所で自分だけのための練習をします。そこでは、肉体を使った練習のほかに、先生の哲学について学び、毎日半日から一日半、誰ともしゃべらずに静けさの中で過ごす練習などを行います。
 いま日本の理学療法業界で注目されつつあるハタヨガは、肉体をつかうヨガの練習法です。
 ハタヨガというのはおよそ1000年の歴史があると言われていますが、いくつかあるヨガの種類のなかで、一番新しいものです。ハタヨガのなかにはいくつかの流派があって、アシュタンガウ゛ィンヤサヨガ、アイアンガーヨガ、シウ゛ァナンダヨガ、パワーヨガ、ビクラムヨガなどがあります。ハタヨガの練習には、ポーズをつかうアサナ、呼吸をつかうプラナヤマ、ジェスチャーをつかうムドラ、エネルギーをロックするバンダがあり、これに浄化の練習であるシャットカルマ、そして瞑想が加わる場合があります。
 ハタヨガは、単純に肉体を使う、ということと、肉体を使いながら注意深さを育む、観察する練習をする、ということが可能です。単純に肉体を使う、ということの結果として、生理学的な反応と解剖学的・運動学的なことのみならず、感情面や心理面に対する経験へとひろがっていきます。後者の場合は、おもに集中や意識を使う練習になります。
 ハタヨガのアサナの練習は、脊柱を様々な方向とその組み合わせで動かし、そこに四肢と眼球の動き、そして呼吸が加わります。筋膜はさまざまなパターンで動かされ、関節運動は、協調する運動と相反する運動が組み合わされます。静止状態を保つものと動きをともなうもの、筋力をたくさん使うものと使わないもの、さらには重力と肉体との関係性を変化させることによって、運動の組み合わせは無数となります。アサナの練習は、いくつかのポーズをシークエンスとして組み立てることがほとんどなので(理学療法のプログラムがいくつかの内容によって行われるように)、おそらく生きているうちにすべて実践しうることのない、果てしない数になることがわかります。アサナの練習は、ほとんどの場合において心身ともに安定性と柔軟性をもたらします。そしてマインドの集中を導きます。たとえば、綱渡りをするときや、患者さんの動作を観察するとき、他のことを考えながら行うことができますか? アサナの練習で脊柱をさまざまな方向に動かせば、運動神経と自律神経を刺激することになります。そうすると肉体的にも、精神的にも影響が出てくることはあきらかで、これについては、8月に参加したSpine Dynamics療法の10時間コースで科学的でかつ分かりやすい説明がされていたので(注:ヨガと関連する治療法ではありませんが、わたしが個人的に関係性を見出したまでです)、やっぱりそういう裏付けがあったのか!と、感動しすぎて興奮してしまい、二晩ほど寝付きが悪くなった覚えがあります。わたしは、医学性や科学性をもってハタヨガをあきらかにすることには何故か抵抗感がありますが、ヨガの背景にある医学性や科学性がわかると、ヨガの奥深さを感じます。ある程度練習を継続していくと、自身の肉体的、精神的傾向がよくわかってきます。左右差などは分かりやすいですよね。あとは、あきらめがはやいとか、疑い深いとか。練習中にやってきた気づきというものと、自分の実生活とのつながりがみえてくると、「わたしってそうだったのか!」という新しい気付きがやってくるようになります。自分のことをヨガの練習を超えたところで段階的に理解していくわけです。そして気づくと、人間は自動的に変わっていきます。気づきこそが、思考と行動の変化を起こすのです。少し話がそれますが、自分の痛みを知って、ひとの痛みを知る。心地よさについてもおなじことが言えて、異常筋緊張のある患者さんのポジショニングなどは、自分のからだで心地よさを経験していると、直感的に対応できるようになってきます。どのあたりに触覚刺激が必要なのか、どういった言語での教示がわかりやすいのか、ということにも応用できるようになってきます。患者さんの息づかいと、表情がいいフィードバックになります。
 アサナの練習は、ときに恐怖感を感じるようなものもあります。では、それは動物的な恐怖感なのか、自分の頭のなかでつくりだしているなんちゃって恐怖感なのか、ということです。逆立ちをするとき、「こわくてできない」となったとします。動物的恐怖感なのか、肉体が準備できてなくてそうなっているのか、単なるマインドの仕業か、賢く見極めないとケガをします。肉体とマインドの不一致もケガのもとです。いづれにしても練習をするのかしないのか、賢い選択をする必要があります。この経験が直感を磨く練習になっていき、それと同時に、どのようにして恐怖を乗り越えたのか、ということが自分の経験となっていきます。この経験が、私生活において自信をもたらし、可能性を広げることへとつながっていきます。

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女性のための負担のかからない逆転のポーズの紹介
 プラナヤマの練習は、おもに呼吸と感覚のコントロール、集中の練習です。運動や感情は呼吸に影響しますし、呼吸は運動と感情に影響します。相互に影響しているわけです。呼吸のコントロールを習得することで、常に冷静さを保つことができたり、気持ちの切り替えが非常に行いやすくなりますし、コントロールを習得しないまでも、自分の呼吸状態を観察するだけでも、気づいていきますから、変化しやすくなり、精神的にバランスのとれた状態になりやすくなります。観察しやすいのは、呼吸に使っている部位や、浅い、深い、速い、ゆっくり、息に震えがある、ない、などです。呼吸理学療法の評価と変わりありません。とても単純です。さらに呼吸は、直接的にわたしたちと自然界をつなげていますから、プラナヤマの練習によってより自然体になるのか何なのか理由はよくわかりませんが、様々な感覚的な経験をするようになります。呼吸法の科学的なエビデンスについては、ここでは割愛します。
 毎日のアサナとプラナヤマの練習によって、自分の体調変化を感じやすくなりますし、練習の経験を積んでくると、自分にあったアサナを組み合わせて練習をすることができます。からだがつかれているときに、動きの多い練習をしても、つかれを増大させるだけになり、ハッピーじゃない状態になってしまいます。頭のなかでいろいろと考えすぎるとき、静止状態でいると考えのなかで迷子になってしまいます。お腹がいっぱいのとき、逆立ちのポーズをすれば、当然気分が悪くなります。ぜんぜんハッピーじゃありませんね。

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クッションを使った身体に優しいポーズの紹介。ヨガでもボルスターというアイテムを使います。 

 ここまでで、ハタヨガが単なる肉体的な影響を及ぼすだけではなく、精神的に、知的に、そして自分自身の生活に影響してくること少しみえてきます。ヨガは自分のことを知るツール、自分の幸福や自由を妨げているものが何なのか、自分の苦しみはどこからきているのか、ということを理解するツールなのです。
上記はすべてわたしのハタヨガとジュニャーナヨガの練習で経験してきたことです。だらだらと書いてしまいましたが、3つのつよい印象があります。アサナは筋膜に何らかの影響がありそうなこと、両者のヨガの練習を通じてこころとからだの関係性が深く体験できること、あとはマインド(思考)への作用です。以前はあれこれ考え込んでマインドのなかで迷子になっていましたが、ヨガの練習によって、ずいぶんとからだもこころも気楽になってきました。
 さて、女性は月経や閉経、妊娠と出産によって、ホルモンバランスの変化も社会的な変化があります。月経にまつわるトラブルや、感情の起伏などもあるし、いろいろありますよね。男性もいろいろあると思いますが、女性もいろいろあるんです。ヨガスタジオでお友達と顔を合わせているうちに分かったことなのですが、ハタヨガを練習する女性のなかには、月経にまつわるトラブルと感情の起伏が楽になったという人がたくさんいるのです。どうやら、ハタヨガが多くの女性に機能している部分があるようで。。。
 「女性とヨガ」という内容の講師依頼をいただいたときに、正直なところ「これをみんなと一緒に勉強しよう!」というようなピンとくるものはありませんでした。「女性とヨガか。。。」と、しばらく考えた末、まあ、私が女性だから、私がこの数年間、練習してきたハタヨガとジュニャーナヨガがどう機能したかを紹介してみようというのが浮かびました。医学性や科学性についても、女性の問題にフォーカスして文献検索をし直してみました。こういう経緯があって、今回の「女性とヨガ」の内容は、一般的な女性の医学的・科学的側面とともに、女性とヨガの関係性について、レクチャーさせていただきました。
 広辞苑で「女性」を調べてみると、子を産み得る器官をそなえていると、出ています。
 子を産み得る器官とは解剖学的には、子宮、膣、卵巣などがあって、それらはおへそと骨盤底の下半分あたりに位置しています。左側の腹膜と接しているのですが、これは発生学なことと関わりがあります。女性の生殖器は骨盤帯にありますが、生殖器と骨盤周りの筋膜には骨盤筋膜があり、とくにその内側のものを骨盤内筋膜と呼び、恥骨頚部筋膜、直腸腔筋膜からなっています。教科書的には、梨状筋の骨盤内にある部分は、この骨盤内筋膜の皮膜を受けています。骨盤筋膜の外側のものは、肛門挙筋の内側を被って、腔の外側に続いて恥骨膀胱靭帯となっています。内骨盤隔膜筋膜は内閉鎖筋膜に属していて、エストロゲンが線維成分を増すといわれています。骨盤内の筋肉は、梨状筋と内閉鎖筋、肛門挙筋と尾骨筋があります。うしろのふたつは骨盤臓器を支えています。さらにいうと、肛門挙筋は内閉鎖筋に付着しています。尾骨筋は仙棘靭帯と一体となっていて、分別が難しいそうです。靭帯はこのほかに、仙骨子宮靭帯というのがあって、これが子宮内膜症ではショートニングをおこし、卵管や卵巣、腸管との間で癒着してしまっていると痛みの原因となるので、手術によって癒着をはがしたり、切除することで症状が改善するとのことです。脈管系は、子宮動脈、子宮静脈があり、動脈は腸骨動脈から、静脈は腎動脈と下大静脈へ直接移行しています。神経は仙骨子宮神経、仙骨神経叢、肛門挙筋と尾骨筋は陰部神経叢と直接的な関係があります。月経時痛がつよい場合、腹腔鏡下で仙骨子宮神経を切断する方法もあるそうです。
 女性の社会的役割としては、出産、育児、介護、それと同時に現代では社会に出ての仕事、が挙げられると思います。そしてまた、これらの役割的変化と、女性の身体変化のタイミングが同時期に起こりやすく、心理精神面での問題を引き起こしやすいという文献も散見されました。
 そのほかには、30年近くほぼ毎月月経があること、月経や年齢による周期的な体内環境変化があること、女心と秋の空と言われるような気分の変調、社会的概念である押し付けられたイメージとして、か弱い、愛情深い、感情が豊かなどがありますが、ほんとうにそうでしょうか? このイメージに翻弄されて自分自身を見失っているひともいるのではないでしょうか。あとは男女に限らず、個人の性質というのがあります。古代から、人の性質には個人差があって、対処法がそれぞれ違っていたことを証明するように、ヨガの教典にAyurvedaがあります。日本語にすると「生命の科学」なんですが、自然界にある5つの要素によって、自分自身と置かれている環境の性質を理解し、生まれたときの純粋な状態にバランスさせるように、ライフスタイルについて詳しい解説があります。赤ちゃんはひとりじゃ何もできないほど不完全なのに、完全な状態で生まれてくるわけです。生きていくうちに、わたしたちはどんどん純粋な状態から遠ざかっていくので、純粋な状態にバランスするために、Ayurvedaを使います。
 わたしは出産の経験がないので、出産にまつわることはお話することはできません。ですから、今回は月経に関係する話をすることにしました。
 医学的に月経とは、成熟女性の子宮から周期的に数日間持続して出血する現象のことです。わたしの母の時代はとても恥ずかしいこととして認識されていたらしいですが、自然現象ですよね。語源も、サンスクリット語では「マティ・ハ」で、知ること、測ることという意味合いがあるそうです。ギリシャでは「目ノース」という語源があり、心、魂、情熱、熱狂、狂気というように進化していったそうです。また、語源進化の過程に月との関わりが深く、満ち欠けである二次的性質、二項的性質、二極周期などがあります。月のサイクルと月経がリンクすることはよくありますが、昨年の春〜秋にかけては、満月と月経が同じ時期に来るという体験がありました。ヨガも「つなぐ」という意味がありますが、月と太陽、男性と女性などなど、二極的なものは多く存在します。ちなみに太陽礼拝は12個のポーズで1サイクルです。月経の恩恵は、ときにエネルギッシュになったり、顔が生き生きしたり、リラックした状態になりやすかったり、自己肯定を導いたりするという医学的報告がありました。歴史的には不要なものが体から排出されるので、身体の浄化ととらえる側面もあります。また、恩恵ととるか、苦難ととるかは、個人の価値観に左右されるという報告もありました。個人のもつ概念によって、月経に対する概念や思い込みも変わってくる可能性があるわけです。
 月経に伴う問題は、大きく分けて3つあります。月経困難症と月経前症候群(PMS)、月経前気分不快障害(PMDD)です。月経困難症は内膜症や筋腫や炎症による器質性困難症と、器質的病因が認められなくても、月経に随伴しておこる病的症状がある機能性困難症にわけられます。今回は、機能性困難症とPMSとPMDDについて、解説をしていきます。
 機能性月経困難症の症状は、疼痛(腹部痛、頭痛、腰痛)、吐き気、腹部膨満感が主です。約1800人規模の調査では、7割が疼痛の症状があり、そのうち3割は服薬を要するほどの疼痛があり、年齢が低いほどつよい傾向があったとのことです。また、他覚所見より自覚症状がつよい場合は、性や月経についての心的外傷体験や、性的虐待、レイプ、初経や月経痛を母親に受容されなかったことが語られることが多いという報告があり、しかしそれらは初診であきらかになることはなく、医師とのラポールが形成されたのち、あきらかになることが多いとのことでした。理学療法においても、出会ってすぐの患者さんから深層が語られることはあまりありません。月経時痛の原因物質としては,子宮内で生産されるprostaglandin(PG)なかでもPGF2αが有力とされていて、これが子宮筋の過度な収縮とそれに伴う血管攣縮、子宮筋の虚血などを引き起こすことにより、痛みが生じると考えられられています。解剖学のところで、骨盤周囲の筋膜について解説しましたが、オステオパシーの分野では、筋膜に対するアプローチが第一選択になっているようです。そのほかの原因として、先に書いたような過去の記憶と概念を挙げている文献も散見されました。治療法ですが、薬物療法と非薬物療法。手術療法や心身症としての治療として心理療法(ストレス認識、発散、対処法の理解、ライフスタイルの見直しと修正を含む)のほか、日常生活の留意点として、過労や睡眠不足、偏食、身体の冷えを避けるというのが文献的に紹介されていました。Ayurvedaには、とにかく月経中はリラックスして休息をとり、カフェインや刺激物は摂らないようにと解説されています。また、月経期間以外では適度な運動を勧めていて、どの体質のひとにもヨガアサナがいいとされています。また、医学的文献において、布ナプキンの使用が、月経観や自尊感情、性の受容を改善するとの報告もありました。わたしたちの祖母や曾祖母の時代には、脱脂綿の使用が主で、さらには経血のコントロールができていたというのを聞いたことがあります。実際にハタヨガを練習している女性も、月経血のコントロールができているひとが多いです。アサナの練習のとき、尾骨の動きをコントロールするなどで、骨盤底を引き締める機会が多いのは確かですし、プラナヤマにおいても、骨盤底を引き締めて行うものが多いです。詳しくは知りませんが、経血コントロールヨガというのも存在しているようです。わたし自身は、数年前から基本的に月経中はアサナの練習を控えています。状況によっては、とても軽いものや普段の練習を工夫して行っています。
 つぎにPMSについてです。診断基準はまだ日本には存在しておらず、米国の診断基準を用いることが多いそうです。症状は情緒的症状として、抑うつ、いらだち、眠気、不安、混乱、社会からの引きこもりがあり、身体的症状として、乳房圧痛、腹部膨満感、頭痛、四肢のむくみがあります。診断基準は、①過去3回の月経周囲期において、月経前の5日間に上記の身体症状・精神症状のうち少なくとも1つ当てはまる。②月経開始4日以内に軽快、3日以内に再発しないもの。③薬物、ホルモン剤、薬物、アルコールの使用によって起こるものではない。④症状は前方視的な記録によって再現されている。⑤社会的、経済的能力のはっきりした障害がある。とくに、日記のように、そのときどきで記録されているものというのが、診断において大きな役割をするとのことです。PMSの症状によって、仕事ができない女性も存在しているのが現実に起こっているのです。原因はまだあきらかになっていませんが、エストロゲンの周期的変化にともなうセロトニン説が有力となっており、エストロゲンは排卵前後に一番多く、更年期、産前後、月経前に急激に減少することで、セロトニン受容体が減って抑うつや易疲労を引きおこすということらしいのです。エストロゲンは意識の女性化を起こすと言われており、中枢神経に働きかけることが分かっています。それによって、セロトニン変化、GABA受容体の変動、オピオイド活性の上昇と急激な低下、アドレナリン作動性と神経細胞活性の上昇が、症状を引き起こすというしくみです。治療法は、非薬物療法、サプリメントやビタミン投与、対症療法、漢方薬、ホルモン剤、向精神薬などがありますが、日本においてPMSの実態報告はあっても、治療のエビデンスはいまのところありません。また、PMSは月経のある女性の50-80%にあって、症状は多彩で200-300にものぼります。ただし、実際の治療希望と治療が必要と判断されるのは、そのうちの3-7%という報告から20-30%と、ばらつきがみられています。年代による特徴には優位差が出ていて、20代後半は肩こり、乳房の張り、いらいら、30代前半はむくみ、アレルギー、攻撃的、30代後半から40代前半は、頭重、食欲増加、一人で居たいきもち、となっています。ニュージーランドでの1800人を超える女性を対象にしたアンケート調査では、85%がPMSの症状を経験しており、そのうちの50%が手当をしていて、そのうちの半数が医学的な手当を経験しているという結果がでています。興味深いのは、プラセボ効果も高いことです。そのほかに、運動と休息、ビタミンB6の摂取、日記が80%の女性に機能したとのことでした。
 次に、PMDDについてです。PMDDは精神症状に加えて、頭痛などの症状が黄体期の最後の修に必ず現れ、月経開始後2、3日で消失するものをいいます。症状は、激しい抑うつ、不安、情緒不安定、著しい興味の減退、過食です。治療法はPMSに準じていますが、思考や行動パターンを変えていくようなアプローチを行うことが重要とされています。米国においては、非薬物療法についてのエビデンスが出ており、植物の抽出液を使ったもの、認知療法、カルシウムの摂取があきらかな効果があるとされています。症状改善の可能性はあっても、エビデンスに乏しいものには、Primrose oilの使用、ビタミンB6とEの摂取、炭水化物豊富な食べ物と飲み物の摂取、精製された砂糖とアルコールとカフェインと脂肪を減らすことが挙げられています。また、St.John’sWort(おとぎり草)は、気分の変調や抑うつに明らかな効果があるとされています。
 多くの女性が経験している、月経にまつわる諸問題は、その原因から考察すると、ハタヨガによって筋膜に働きかけているようなこと、思考とライフスタイルのみならぬ行動パターンの変化が、症状を和らげているかもしれないこと、自分の状態を理解できることによって、自分自身の体をいたわり休息をとることができるようになることによって、解決できるものもある可能性が感じられます。そのほか、今回は紹介していませんが、ハタヨガと自律神経系や免疫系に関する研究はすでに報告が多くでており、明らかになっているのです。
 ヨガは、幸福になるためのツールです。練習を通して、練習自体が、また気付きが、パターン化された思考(実は思考にはとても習慣・癖があります)と行動を変化させていくのです。これは直接的に人生における変容につながりますし、自信や挑戦、賢い選択していくことで、潜在的な可能性がひろがっていくのです。わたしたち誰もが、それぞれが抱えているものや背負っているものから、もっと自由になる可能性をもっているのです。
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