タッチングの極意

タッチングの極意

 筋膜の機能障害もじっくりとストレッチのような感覚で伸ばせばいいというわけではありません。筋膜リリースと称してじっくりと伸ばすというイメージがありますが、これは間違いです。結果オーライと出る場合があるので、良しとしているところはありますが、じっくりと触っているときは伸ばすというよりも反応を待つというスタンスが必要です。タッチングにより脳に送った情報により、脳が違和感を判断し自浄作用と作動させます。つまり脳が勝手に治そうとするのを待つのです。すると実に多様な営みが手に感じられます。この待つというスタンスは理学療法には本来ない概念です。操作しようとするその衝動をぐっとこらえることが大切です、何か操作しようとすることに慣れているタッチングから待つタッチングへの移行が大切です。
 つまり筋肉もそうですがspasmという反射性の防御収縮はストレッチでは改善しないのです。Spasmを取り除いた後に短縮している組織を伸ばすと初めてストレッチは効果的なのです。関節運動学的アプローチであるAKAにみられるように、関節の副運動を促すことで容易にspasmが改善し可動性や筋力発揮が促されるのです。しかし、理論は副運動を促すとされていますが、実際は感覚入力による脳の自動修復作用による効果であると考えたほうがいいでしょう。仙腸関節においても歪みを治すという発想ではなく、mobilityを出すということが前提となっているからです。しかし、実際のところはmobilityが出るメカニズムは歪みを戻したからではなく、関節に感覚入力を入れたからです。もちろん関節の機能障害が脱臼に近くなるに従い、AKAのようにちょっと触ったぐらいで治るわけがないのでその手技の適応範囲がおのずとあります。しかしながら、このちょっと関節なり皮膚なりに刺激を入れることで身体の反応に変化がみられるというのは、マジックとしてはとても興味深い現象でありデモンストレーションとしては最適です。しかし、その効果は長くは続きません。

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11月14日、運動連鎖道場in茨城vol.9での一枚。切っ先を使わず、手から感じる表在感覚と、自ら感じる主観と照らし合わせるモードを持つことです。手当という言葉があるように、この時のタッチングは手のひらもしくは指腹を使います。少なくとも指先を使うことはありません。モニタリングするというモードが不可欠なのです。このモードは整体やオステオパシーなどでは当たり前です。私が20年前から関わってきたカイロプラクティックや整体、オステオパシーでは既にモニタリングするというタッチングが基本となっています。人間がレントゲンでもない超音波でもない視覚化しながら施術する職業ではない立場において、感覚が最も大切なモードとなるのです。
もちろんレントゲンの確認は大切です。それはリスク管理として方針を決める一助となるからです。しかしながら、その他とにどうするのか?ということが最も大切なのです。診断しました、投薬と注射で経過関節できる医者とは違い、リハビリではさらに機能的評価を行いアプローチしなければいけません。その時に筋力とROMと動作分析だけでは話にならないのです。そんなモードだけで見れるほど身体機能は甘くないのです。この武器を失うと理学療法士の本来の存在価値はなくなります。
 タッチングというアナログとサイエンスというモードを両輪にもつ新たなセラピスト像の創造が託されているのです。それを鼻からエビデンスオンリーでもしかしながら職人オンリーでもダメなのです。

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patellaのodd facetへの適合を評価することで、P-Fの適合性をみます。浮いてる側と接している部位などがわかることで膝伸展機構の効率、そして痛み原因を調べることができます。整形外科的ですとしてgliding test、tilting testなどがありますが、それは医師ができる領域です。セラピストは医師と情報を共有するためには必要ですが、それ以上の何か情報を得られなければ意味がないのです。



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コメント:3

クリニックPT
タッチや感覚の重要性を日々感じています。レントゲンなどの画像に映らない診断を、自分の手先の感覚で行う。職人的ですが、患者さんの治療を行う上で必ず必要なものだと感じてます。その感覚というものをエビデンスに繋げ、医療の発展へと結びつける方法は非常に難しいように思います。

ありがとうございました

イマニシ
先日、大阪でのインソールセミナー参加させて頂いたものです、実はPTではなく柔道整復師なんですが元気創造センターは資格のくくりがいつもないので参加させて頂いてます。
手技療法から勉強しはじめた自分としては山本先生の考えかなりしっくりきました、先日も東京のPTでもDOでもあるケリーダンブロジオ先生のクラニアルセミナー(ちなみにPTの先生が結構いらしてました、かなり色々な職種がクロスオーバーしてきてますね)うけてきましたがやはり、身体に傾聴する事の重要性をおっしゃってました。タッチひとつで色々な事を捉えるのはなかなか難しいですが、コンセプトは重要ですね。
また機会があればヨロシクお願いします。

Re: タイトルなし

山本尚司
> タッチや感覚の重要性を日々感じています。レントゲンなどの画像に映らない診断を、自分の手先の感覚で行う。職人的ですが、患者さんの治療を行う上で必ず必要なものだと感じてます。その感覚というものをエビデンスに繋げ、医療の発展へと結びつける方法は非常に難しいように思います。

確かにエビデンスは難しいですね。エビデンスという考え方は基本だという人間が考えた基準には合わないものがあって当然ですので、いずれ潮目は変わるでしょう。

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