大殿筋の機能的役割

大殿筋の機能的役割

041_20100814010634.jpg
股関節伸展は腸腰筋でおこなう!!

「大殿筋を鍛えても良くなったためしが無い」そんな声がPTからもちらほらと聞こえてきます。ヨガにおいてもピラティスにおいても大殿筋を効かせろという内容のエクササイズはお目にかかりません。抗重力筋である大殿筋が大切であることは誰もが認識しているにもかかわらず、一体この現実の認識の差はどこから生まれているでしょうか?改めて再考してみたいと思います。
 大殿筋のトレーニングといえば高齢者に対してお尻上げつまりブリッジングのエクササイズがあります。この時に大殿筋を収縮させるように促します。しなしながら、このエクササイズで何か効果があったと実感できることは記憶にありません。臀部を移動させる、寝たきりでベッド内の移動、衣服の着脱のために臀部を挙げるという目的であればもちろん意義は大いにあります。
 Bodyworkをしていると、大殿筋が効きすぎると結果的にポーズやアーサナが上手くとれないことがあります。それどころかかえって違う部位に負担がかかり怪我のもとになってしまいます。ポーズをとることで一種のパフォーマンステストになるわけですが、大殿筋が過剰に収縮すると阻害因子になってしまうのです。また柔軟性も損なわれてしまいます。柔軟性はコラーゲン組織の先天的な要因や、関節や筋組織の相違も当然あるとは思いますが、機能的な柔軟性障害もあるようです。どうしても柔軟性に差があるのはbodyworkをしていると仕方がないことであり、どんなに長くbodyworkをしていても硬い人は硬いです。もちろん何をしていない人に比べれば柔らかいですが、あるレベルからは柔軟性が止まってしまうのです。毎日人よりもストレッチをすればいいということになるのでしょうが、ストレッチを繰り返すということだけでなく、普段から日常において硬くなる要因を取り除けるのなら理想的です。常日頃から何に気を付けていれば柔軟性が会得しやすくなるか?このキーワードを大殿筋が握っています。ここからは項目に分けて大殿筋がについて述べていきたいと思います。

《四足動物における大殿筋》
 四足動物における大殿筋はまさに制動にあります。つまり後ろ脚で制動をかけながら方向転換などのかじ取りをしています。そして前足で駆動です。チンパンジーでさえも中殿筋は人間でいうと大殿筋の位置にあり、後ろ足の制動を担っています。車で言うと後輪駆動ということになるでしょうか。人間と違うのは股関節の角度です。ほぼ90度屈曲位であり股関節が伸展位になることはありません。内転筋も人間では60度屈曲位を境にして屈伸に参画して働きます。本来は股関節の内外転というのは動物にはさほど重要でなく、人間になったからこそ中殿筋が前額面の運動方向に働くようになり、拮抗筋として内転筋が担っているということなのです。しかしながら、後天的に適応したためか中殿筋も内転筋も正しいとされる直立から外れてしまうとあっという間に過去の機能に逆戻りしてしまいます。つまり中殿筋の大殿筋化であり内転筋による股関節可動性の制限です。寝たきりの方をみると大抵は股関節屈曲位にかたまってしまいます。内転筋は短縮し股関節の伸展も外転も制限されます。つまり四足動物における大殿筋は、あくまで股関節屈曲位における人間よりも長い筋繊維にて制動しているのです。四足の動物の走り方をみると後ろ足で臀部を跳ね上げているかのようです。前への推進というよりも上に飛び上がっているかのような力が感じられます。そして臀部が高く跳ね上がったベクトルを前足と頸頭部をつかって絶妙に前方への推進力に転換しているかのようです。いずれにせよ股関節が0度まで伸展することはなく、かなり狭い範囲で後ろ足は機能しているといえます。バネのような脊椎とバランサーとして司令塔かのような働きをする頸部、ギャロップといわれる左右の脚の絶妙な位相差を奏でることで、静と動、つまりタメと動きだし、エネルギーの抑揚をつけることで転ばないようにバランスをとる作用もあるものと考えられます。人間においても「足がそろってしまう」などと転ぶ時の原因として取り上げられています。動物においても前足であれ後ろ足であれ揃ってしまうときっと転倒してしまうのでしょう。このギャロップにて絶妙にバランスをコントロールしているものと思われます。
後ろ足の機能は推進というよりも、前方への振り出しによる脊柱のバネのような伸縮を導き、空中動作へと移行していきます。その時に頸部は定位していますが、相対的に体幹からみると伸展位となり前方へのベクトルに転換させます。また後ろ足で蹴りだすphaseで、前足が前方に伸びることで脊柱が伸ばされ、その刹那に前足で後ろに掻きだしと後ろ足のむしろ上方への跳ね上げが同期しています。
長くなりましたが、大殿筋も中殿筋も動物においては屈曲しすぎないように制動しているというのが主な働きでしょう。後ろ足に跳ね上がられて蹴飛ばされるシーンが良く見られますが、前足で支えてはいますが、基本は後ろ足で蹴りあげているのです。人間のように膝の屈伸や足関節の底背屈による重心のコントロールはありませんので、股関節のみに機能が集中するのです。それがサラブレッドにみられるように立派な殿部として表れています。回旋や内外旋が人間に比べて少なく、ほぼ矢状面の運動に特化した下肢はより一つの方法に集中して力を発揮できるようにできているのです。爆発的な後ろ足が生み出す力はロケット砲のようであり、そのモーメントをどうやって前方に推進させるかを前足と脊骨で担っているのです。

《人間における大殿筋の骨盤に対する作用》
 では人間において大殿筋はどのような作用しているのでしょうか?ご存じ大殿筋は股関節の伸展筋であり下肢の筋肉でも最も目立つ大きな力を発揮できる抗重力筋です。では大殿筋を収縮させるとどうなるか?股関節伸展もそうですが、骨盤に対してが実は大切です。何故骨盤に仙腸関節という厄介な分離があるのかというところが味噌です。つまり大殿筋が収縮すると腸骨は後傾、全体的にも骨盤は後傾作用が働くのです。股関節伸展だから骨盤の前傾では?と思う人がいるかと思いますが、骨盤の前傾に働かせるのはとても難しいことがわかります。腰部を伸展させれば確かに骨盤は前傾しますが、大殿筋にて腰部が伸展するわけでもありませんので、これはまた別の機能になります。
《大殿筋収縮と骨盤機能》
仙腸関節のレベルで何が起こっているかが大事であり、仙骨に対して腸骨がPIつまり後傾になってしまうのです。直立位にて大殿筋を収縮させて骨盤を前傾させることは至難の業であることがわかります。というより骨盤前傾では大殿筋が硬く収縮させることはできません。間違いなくおしりの笑窪ができるときは骨盤は後傾であり、なおかつ股関節の可動性が制動されてしまいます。OKCであれば股関節伸展ですが、CKCにおいては骨盤後傾となってしまいます。そして骨盤後傾に伴う姿勢制御として背筋が緊張し硬くなってしまいます。実はOKCにて股関節伸展運動においてもパンパンに殿筋が収縮すると前述のように股関節伸展とは拮抗した骨盤の動きが起こり、結果的に強収縮が起きてしまうのです。お尻をカチコチに硬くできることを自慢しても実は仕方がないのです。というよりもリハビリにおいては無駄な力なので望ましくない収縮なのです。

《生活の中での大殿筋》
実生活の中で、硬くなるほど収縮させる場面はほとんどなく、重たい物を持つとかスクワットに代表されるようにしゃがみこみ動作になります。それも動物と同じく結局は股関節屈曲位ということになり一致します。歩行時は最大収縮のそれこそ10%ぐらいの働きでいいのではと推察されます。股関節は伸展に比べ圧倒的に屈曲の可動が大きく、どうしても前かがみでの支持にて殿筋を使いたくなります。しかしながら動物のように制動をメインに作用させてしまうと、エクセントリックな収縮が繰り返されることでトリガーポイントが生成されてしまいます。いわゆるコリです。動物であればそこに頸部や脊柱の絶妙な動きにて前方への推進に転換されますが、人間は膝や足にて緩衝できていしまいます。
足と膝は屈伸が主な働きですので、いわゆる上下の重心の移動の制御となります。これでは推進になりません。黒人が音楽を聴きながら頭を上下にリズムをとり、身体全体にてリズムをとっている姿がイメージできますが、これこそが動物とおなじ頸頭部と脊柱の作用の二足直立版なのです。股関節を上手く使えない日本人の背景には、苦手な頭頸部と脊柱の動きとロコモーションとの連動性があるのです。
殿筋が立位にて働くと骨盤は後傾し股関節の前方は伸長位となりいわゆる伸展位となりますが、骨盤は後傾位にて股関節と固定化させてしまうことになります。つまりこれ以上、屈曲も伸展もしない、可動性が小さくなってしまうのです。結果的に骨盤後傾といっても恥骨結合が前方に出るタイプの骨盤後傾であり、膝は屈曲しやすくなり股関節の相対的な伸展位は相殺されてしまうことになります。

《理想的な大殿筋の作用とは》
ズバリ歩行時にどのようにするかが全ての始まりです。ヒールコンタクト時に殿筋は収縮します。何度も言っていますが制動としての作用です。ここで動物のように前方への転換が必要になってきます。それが腰椎の働きになってきます。ミッドスタンスから後期にかけて腰椎が伸長、結果的に前彎するように働かせます。この作用は大腰筋が担います。また、骨盤の前傾およびin-flareは腸骨筋が担います。この腸腰筋の作用によってブレーキのかからないスムーズな歩行が獲得できるのです。結果的にヒップアップへとつながってくることでしょう。大殿筋は過剰に収縮させ続けるとかえって硬くそして垂れてしまいます。殿筋は腸腰筋と上手くコラボレーションさせて機能させることが、柔らかくなおかつ締まっていて推進性のある理想的な臀部につながるのです。不思議なことにこの柔らかい、なお且つ形のよい殿筋が会得できていると股関節はフリーになり無駄のない推進へと連鎖していきます。
スポンサーサイト

コメント:0

コメントの投稿

トラックバック:0