「ドローイン(Draw‐in)」

「ドローイン(Draw‐in)」

 東大教授、石井直方先生(身体運動科学)が(2009年8月25日~29日 読売新聞)の健康プラスというにて連載した「腹をへこます」というテーマのコラムでドローイン(Draw‐in)という方法を紹介していました。お腹を凹ますには腹横筋が大切であることは別段珍しくはないですが、PTの場合お腹を凹ませるという美容的な目的でなく、stabilityという機能的な観点からの解釈になります。また腹横筋を鍛えることでウエストが細くなるという研究テーマには行きつかないでしょう。お腹を凹ますことが目的のリハビリ対象の患者がいないということが一番の理由ですが、世の中的にはお腹を凹ますことのほうがニーズは高いといえます。また効果的なお腹を凹ます方法を聞かれても、腹横筋を鍛えることで効果がありますよとは自信をもって言えないでしょう。
ドローイン
(2009年8月26日 読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/plus/20090826-OYT8T00316.htmより抜粋)
  このドローインという方法はまさにお腹を凹ませるという単純な方法ですが、データ的にも効果が上がっているとのことです。またエネルギー消費量も通常歩行よりも高いとのことです。
ドローイン2
(2009年8月27日 読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/plus/20090827-OYT8T00337.htmより抜粋)
 石井教授については以前、健康運動指導士の研修会にてスロートレーニングの講義を聴いてとても勉強になったことを記事にしました。自らがボディービルダーとして日本チャンピオンという実績もさることながら、それを科学というフィールドにて落とし込んでくる(ドローイン)のですからちょっと敵わない感じですね。研究者の視点は往々にして現実味が薄い机上のお話になってしまうことが多いのですが、実践と経験も一流で理論も一流となれば鬼に金棒です。間違いなく自らの体験や経験がリアルに研究に生きていることは間違いありません。だから他の身体運動科学の研究者からも一線を画す発想と取組で世の中に出てくるのでしょう。役立つこと、効果的であることに主眼をおいたテーマであるから、他の分野や筋力トレーニングやエクササイズに携わる全ての専門家や実践者から関心をもたれて、垣根を越えてディスカッションや批評が得られるのです。専門家だけしかわからない、ともすれば同業者のみの中でしか優位に立てない、立たせようとしないスタンスに立っている人を見ることがあります。ものすごい専門的には聞こえないけれど、誰もがすぐにイメージできる連想しやすい実践しやすいテーマにて研究をすることこそが理学療法士にとっても大事なスタンスなのかもしれません。
 さてこのドローインの方法を記事に取り上げたのは、たまたまではなく今この習慣に自分で実践していて効果を実感している時にリアルタイムに記事を目にしたからです。
 私自身はジャイロトニックのレッスンを受けてエクササイズをするなかで、まず動けないところは意識に上らないという体験をしました。はたから見ると物理的には動いているのですが、脳内では動いていないのです。「実感がない」4月から本格的にエクササイズが始まったのですが、まさに実感がないまま一月そして二月が過ぎてしまいました。呼吸をエクササイズとともに同期化するのすが、これもどうも下腹部のほうまで入っていっていないということに気づいてきました。これは声の道場にて和の呼吸を指導していただいている時にも、吐ききったあとに自然に空気が入ってくるその感覚がさっぱりわからないのです。
 最近は腹を凹ませながら吐ききってしばらく止めていると、腹がさらにミゾオチの中に吸い込まれるような感覚を得るようになりました。再現性がだんだん高まってくるとその感覚のメカニズムを分析できるようになります。bodyworkの臨床応用にて中村さんが呼吸について、呼気時の胸横筋の働きが胸郭の屈曲運動の柔軟性には必要で、鳩尾の自然な凹みが得られること、そして3次元的に全体的に吸気で肺に息を入れるという実習において、さらに脊柱がelongationされるメカニズムもわかってきました。実質感のある脊柱の屈曲ともいうのでしょうか?いわゆる脊柱の圧迫骨折のメカニズムではない脊柱そのものに負担をかけないbodyworkでいうアップ&オーバーの屈曲運動になります。このメカニズムを応用すると円背で背中が伸ばせないクライアントに対しても脊椎の負担を軽減させられる運動療法、身体の使い方を提供することができるのです。
 さていわゆるドローインにて息を止めておくと、鳩尾が吸い込まれるような動きが得られるメカニズムをですが、吐くことで胸郭の容積が狭くなります。しかし肺の容積も小さくなっているので結局胸郭の中では陰圧になるのです。吸気時に静脈の還流が起こるのも胸腔内圧の陰圧による作用であるならば、呼気時の反応もまた陰圧がなせる技なのです。この吸い込まれる感覚はどうも横隔膜そのものが、胸郭のなかに吸い込まれる動きのようで、結果的に腹直筋の上部繊維も吸い込まれてきて、いわゆる理想的な胸郭そして脊柱全体の屈曲運動へとつながってきます。
 そしてピラティスでいうロールアップ、ロールダウンのパフォーマンスのメカニズムにもつながってきます。

 この呼気時の横隔膜の吸い込まれるような感覚には、さらにもう一つ重要な因子があります。それが骨盤つまり仙骨のコントロールになります。このことについてはまた次回に述べていきたいと思います。総括すると全て自らの身体で体験して感じたこと、そして実際におこった変化から得られた知見であるということです。動けないからこそ、その動けるようになる過程がわかるのです。ある意味、身体が硬いなどのbodyworkにおいてはデメリットな要素はむしろセラピストとしては歓迎すべきことなのかもしれません。このように個々に違うデメリットの克服の知見を寄せ集めることできっと新たな身体運動学が編集できることでしょう。
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