運動連鎖アプローチ研究会Part36報告

運動連鎖アプローチ研究会Part37報告

臨床にいかせる顎関節の知識とアプローチ
~マニュピレーションとマウスピースの効果と実際~

講師:西川洋次先生 (西川歯科医院理事長 P.G.I Club会長)

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6月21日日曜日に業界としては初?となる、咬合とマウスピースというテーマにて開催しました。マウスピースは格闘技では顎を守るために昔から装着しており、スポーツの世界でもパフォーマンス向上のためのツールとして用いられています。実際、姿勢制御にかなりの割合で関与しているにも関わらず、普段はほとんど自覚することがないのです。リハビリにおいても、嚥下で口腔機能が着目されますが、いわゆる整形外科的な機能障害や姿勢制御という観点からの必要性は、患者を毎日みていてもほとんど感じません。しかしです、実際に全身咬合学会や、噛み合わせを診ている歯医者をみていると単なる歯や顎の問題だけではなく、肩凝りや腰椎、またあらゆる不貞愁訴(耳鳴り、眼のおくが痛い、眩暈、精神疾患)などなど改善をみる例が珍しくないのです。階段が楽になった、膝や足の痛みまで良くなったという事例まであるようです。もちろんリハビリにて、何の事例でも楽にはなりますが、結局すぐにもとに戻ってしまうという事例においては何かが足りないと考えたほうがいいでしょう。治療とは、その時に変化するということだけでなく、良い状態が定着してこそ治療です。よってアプローチは、痛みをとるなどの、エマージェンシー(プライマリー)初期段階と、次のその原因を見極めアプローチする時期、そしてさらに機能的なcapacityを拡大していく時期などに分かれ、その都度セルフコントロールのための教育的なアプローチを加えていきます。講師の西川先生が力説されたことは、単なる知識や技術ではなく、まずは基本である問診をしっかりして、今どの段階へのアプローチをしているかを認識し、世界の流れや情報を常に吸収し何がエビデンスとして分かっているかを知り、最期は直感的な感性を大事にするというけとです。『症状と兆候は違う』これも本日の最大のトピックスだとおっしゃっていました。クライアントが訴える症状と本当の原因は違う可能性があるということです。特にかみ合わせだとそれが致命的になってしまいます。例えば右の奥歯が痛いということで、もしその歯の神経をとってしまうと、実は顎からきている関連痛である可能性があるのです。顎関節に炎症があると側頭筋や歯に関係する神経に伝播してしまい、あたかも他の部位が問題であるかのように脳は感じてしまうのです。顎の調整をすると途端にその痛みの問題は解決してしまうこともあるのです。顎は神経学的に関連痛を引き起こしやすい部位であり、またトリガーポイントにて症状と兆候に相違がおきやすいのです。四肢や体幹と頭蓋顔面では少し機能障害の特性が違うことを頭に入れておく必要があります。
また「クリックそのものは問題ではない」ということです。何故ならそれは復位性の顎関節機能障害だからです。クリックは関節円盤に関節突起がのっかる時の音です、前下方に引っ張っている外側翼突筋、そして後方に落ちている顎関節が乗り越えるときの音なのです。復位するということは、その大元の原因は何かをつきとめ、噛み合わせに問題があれば歯科にかかるなど然るべき対処が必要になります。

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muscle energyを応用した顎関節のマニピュレーションにて、関節円板を関節頭に乗せてあげたとたん(コリっと矯正音あり)に筋緊張や愁訴があっという間に軽減したデモ。その間約5秒の施術です。

いずれにせよ、歯の当たりが瞬間的に変わるだけで顔面や頸部の緊張や痛みがVASで10から3~4に落ちてしまうほど劇的です。あまりにも汎用している顎は無意識レベルで適応しているのです。今回、被験者としてモデルになった女性PTも右の顎関節が作業側であり動きに制限があり、施術前では側頭筋や頸部筋などかなりの圧痛がありましたが、右の顎関節に対するマニプレーションにて関節円板を復位させると途端に痛みは軽減し自覚的にもこんなに変わるのかと感じるほど楽になりました。この楽が単なる関節機能改善による痛みの軽減という四肢にみられる現象だけではなく、全身に快適感や爽快感が広がるのが特徴です。何故なら顎が変わると歯の当たりも変わり、物理的な頭蓋へのストレスが変わるとあらゆる生命維持に不可欠なホルモン系の働きが変わってくるのです。当然頸部の緊張が変わるということは、平衡系にも関与してきます。四肢体幹よりも中枢神経に近い部位である頭蓋顔面、そして物理的なストレスがかかり変位しやすい噛み合わせや顎はダイレクトにあらゆる不定愁訴のもとである脳内の働きに変化を与え、情動系にも影響を与えるのです。ボディーワークをすると痛みや軽くなるといった身体的な変化だけでなく、情動的にも爽快感が得られることと類似しています。リズム性のある動きである咀嚼、顎の運動が得られることはセロトニン神経とも関係してくることでしょう。症状と兆候の話に戻りますと、作業側はいわゆるクリックがしたり動きの悪い側ですが、反対側は平衡側と呼ばれいわゆる動きが大きい側です。症状は動きの大きい筋肉に負担がかかる側にでることもあり、結果的にいくら症状側にアプローチしても対症療法になってしまいます。理学療法であれば侵襲性がないので、その場ではいくらかは楽になりますが、歯医者の場合はそこでグライディンクの大きい側の歯でも削ろうものなら途端にさらに症状が悪化してしまいます。

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事務局の小関さんとモデルの小谷さんのツーショット。実習中にカメラを向けましたが何故かいい雰囲気です。モデルの小谷さんは顎は右に寄ってやや非対称だったのが、5秒の施術で相当改善され表情も良くなりました。

 外科的な施術は病院にいても明らかなように、本当に良くなるか場合は劇的です。しかしもし見立てが間違ってしまえば逆の結果を招きます。そういう意味において、我々の立場より結果にシビアといえます。極端な話揉んでいれば何かしらの満足感が得られてしまう立場にいることが、結果に対する検証がおざなりになってしまう原因なのです。または細かい動きの変化に満足してしまったり、その細かさこそが専門性であると勘違いしてしまうのです。先程の動きの大きい側の顎ですが、原因が動きの小さい側にあることがあります。最も考えられる原因の一つが早期接触になります。早期接触とはリラックスして軽く噛んだ時(CP:セントリックポジション、歯牙接触位)に当たってしまう歯のことです。歯医者にいって虫歯の治療でインレーを入れたときに当たって違和感があった人は沢山いると思います。その時に『しばらくしたら慣れます』と言われたひとは、まず何らかの噛み合わせ障害を有している可能性があります。慣れたのではなくズラシテ適応したのです。顎は唯一左右にまたがっている関節です。ブランコのようにぶら下がっているのです。この顎は何を指標にセンターを保っているのでしょうか?実は物理的な建造物のような歯の、特に犬歯が大きな影響を及ぼしています。筋肉のようなメカノレセプターが歯にあるわけではありませんが、歯の接触で顎は微妙に調整しています。このあたりの精度は他の身体部位の比ではありません。各関節部位にはある程度特異性はありますが、顎に関してはまた特別な特性があります。

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みなさんで開口路の評価実習。この語にガスバーナーを使いながらのマウスピース作成実習を行いました。マウスピースはISAMI製(一つ1300円ぐらい)のものを用いました。何度もお湯に入れて採形を繰り返しとても大変です

今回は招き午前は機能障害とは何か?、評価とは?患者の精神状態やストレスは?までもまるでリハビリテーションね基礎を改めて教えていただいたような気持ちでした。午後からは実際の評価とマウスピースの作製です。評価で大事なことは開口路をみることです。開口路はCカーブを描く場合と、斜めにそのまま軌跡を描く場合があります。また片側のロックならまだしも、両側ロックになると、タレントの優香のように顎が奥に引き込まれてしまいます。顎の運動は開口経1~2押指は回転運動ですが後は滑り運動にて開口します。よって正常とされる33押指開くためには回転~滑り運動が不可欠です。よってロックがあると当然のように顎が後退し、頸椎はフラットになってしまいます。頸椎のフラットは痛みなどの筋肉の緊張によっても起こりますが、噛み合わせ由来もあるということです。
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懇親会です。ポーズは本日習った犬歯を触察しながら自己矯正エクササイズのポーズでもあります。還暦を迎えても尚、世界中の学会や勉強会に出かけて研鑽を積むその姿勢こそが一番の見習うべき姿勢です。
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