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膜は記憶する

膜は記憶する

身体心理学という書籍がありますが、簡単に要約すると心理的な動態が姿勢に反映しているというものです。ロルフィングでは筋膜のテンションがフレームとなり姿勢を規定しているという観点からアプローチをしていきます。リハビリの学校教育では筋骨格がフレームであるという考え方が自然と身に付くのですが、筋膜が剛性のある支持組織であるという実感はありません。骨格が絶対的な存在感をもって私たちの脳に刷り込まれていますから、筋膜などの弱いと思われる支持組織が構造的な柱となっているとは露にも思いません。解剖学の本でも機能的な観点から膜系の説明がされているものは皆無といっていいでしょう。確かにロルフィングをはじめ、フランクリン、トーマスマイヤーなどでは筋膜系がモデルとなって身体運動をつかさどっている様が説明されています。しかしながら、これは解剖していくなかで明らかになったのではなく、生きている人間の動きを司る、生命機能解剖学?ともいえる分野のヒラメキに近いモデルです。
 以前より運動連鎖からみたパルペーションテクニックにて、皮膚や筋膜の反応をみるにつけ物理的な被覆の役割だけではないことがわかります。皮膚は受容器であるという考え方は徐々に浸透しつつありますが、まさに神経組織ではないかと思われるほど感覚入力に対して多様な反応がみられます。筋膜をリリースするというような局所的な物理的なリリース感ではなく、刺激に対して即時的に反応するのです。例えば同質同圧にて左右同部位を触察するという方法がありますが、一側のみを触察したときよりも両側を触った時のほうが明らかに反応は早いのです。また両側を触った時のほうが左右相対的な流れがわかりやすいものです。その相対的なテンションの差異は、脳にとっても差異を理解しやすく、即時的な歪の是正につながります。それらの一連の反応は、ものの1秒かかりません。これほどまでに、まるで生きたカーテンか絨毯のように、自らの意思とは関係なく独自の恒常性をみせてくれます。
 臨床においても、例えば軽く捻挫したとするとその衝撃は膜に伝わり、その衝撃時の反応が身体に記憶されています。アイシングなどを局所的にしたとしても、違和感が持続する場合などは筋膜系の瞬間的な防御反応が定位してしまっています。コンマ何秒かの不意の外傷に対して、全身を使って反応しており、その衝撃は小さくないということです。経度のトラウマが心身に記憶されるのです。結果的に局所を軽く捩っても、それによって生じた違和感を改善するには全身を調整する必要がでてきます。この膜系のテンションは骨関節のズレによっても生じます。それは骨関節筋肉はお互い切っても切れない関係にあり、補完しあっているといえます。
 いずれにせよ、あらゆる身体への外部刺激に対応し、時には記憶している膜系は予想だにしない動きや外傷に対してはトラウマのように定位してしまうのです。精神的なショックと同様、人は一たび大きなストレスがかかるとなかなか払拭できないことを膜を教えてくれます。
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