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情動とインナーマッスル

情動とインナーマッスル

 以前、肩関節のcuffと体幹の筋群との連鎖について記事に書きましたが、運動連鎖道場五期生の畠山さんが小円筋と腸腰筋の連鎖について報告してくれました。確かに棘上筋と多裂筋、内腹斜筋と肩甲下筋、外腹斜筋と棘下筋の連鎖については報告しましたが、小円筋が入っていませんでした。畠山さんの報告では棘上筋と対側の腸腰筋の連鎖の割合が7~8割とのことです。確かに検証してみると同側と対側のパターンがあります。もともと腸腰筋は前鋸筋との連鎖がみられます。また踵への刺激にて腸骨筋が促通され、アーチ部においては大腰筋が促通されます。大腰筋が促通されると横隔膜も刺激されることになります。元来、腸腰筋のきいていな側の体幹はstabilityが低下しており、胸郭の拡張と肩甲骨の挙上がみられます。当然、僧帽筋の上部や肩甲挙筋、大小胸筋が緊張し、胸郭の柔軟性が失われる結果、常に菱形筋はisometricの状態になり前鋸筋の働きにくい環境になります。ベクトル的に前鋸筋は前下方にきいてきますから挙上した肩甲骨では大胸筋が優位になってしまいます。頸部の深層筋もききにくくなり胸鎖乳突筋と後頭下筋が緊張します。肩甲骨は上方回旋ぎみになりますので、そこで腋下にある小円筋が短縮してしまうという連鎖になるものと思われます。しかしこの肩甲骨の対応は胸郭のアライメントと相対的な対応をとることもあり、stabilityの欠如した体幹とは逆側の肩甲骨の挙上を招くことが多々あるため対の連鎖が多くみられるのでしょう。
  回り回って体幹のstabilityの欠如と小円筋が連鎖しているともいえるわけです。また大円筋もどうやら腰方形筋との連鎖がみられます。大円筋と広背筋は錐揉み状にねじりながら腋下に付着していますので、腋下の触察においては両筋に感覚入力が入りやすくなります。肩甲骨の挙上は上腕骨頭の外旋位を引き起こしやすくなり(頸部回旋~上腕骨頭連鎖で評価)、結果腋下の腱は腋下に牽引されることになります。筋膜の流れも個人差はありますが腋下方向に流れていることが多々みられます。骨盤は肩甲骨と相対的なアライメントをとるため(カウンターモーション)、骨盤後傾して広背筋が緊張することにより、骨盤前傾に働く腰方形筋の働きが低下するものと思われます。よって大円筋の緊張を落とすことにより、腰方形筋が働きやすくなる反応が得られます。チェコスロバキアから入ってきているヤンダアプローチの交差性障害のパターンも同じような現象が述べられています。
 このように一つ一つの筋肉をピックアップして考えるのは局所的な思考を高めますので、bodywork的な思考パターンと少しモードが違いますが、理学療法においてはとても大事な抑え所です。よく考えれば、肩周りというのは感情を表す大事な役割を担っています。「肩を落とす」「背中が寂しい・・」「男は背中でものを言う」「肩で風をきって歩く」「肩肘はる」などなど、日本語の表現で感情を反映した言葉として肩甲帯周りの表現は非常に多く見られます。その肩甲骨は体幹との連鎖がみられるのは、骨盤との相対的な連鎖を考えると当然ともいえます。特に肩関節の小さなインナーマッスル群が体幹の大きな構成筋と関係が深いというのは、肩甲骨の可動性と自由度が感情表現をしやすい部位として存在しているということです。また肩関節の身体イメージが顕在化しやすいというか、感覚を中枢にフィードバックしやすい部位であり、無意識のうちに肩周りのアウターの緊張を変化させているのでしょう。結果的にアウターの意識化にともなうインナーの無意識の緊張が起こっており、実は肩のインナーマッスルが特にキーとなって、姿勢の保持や感情の防御への留め金の役割を担っているものと思われます。また体幹のインナーマッスルも意識化することは難しい場所であり、全身のインナーマッスルは感情や外敵からの防御や適応のために連鎖性にパターン化しやすいものと思われます。bodyworkにより単にインナーユニットを活性化させることだけでなく、感情の解放がさらに身体の調和に有効なのは、身体の連鎖をみていくことで改めて再認識させられました。
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コメント:5

認知運動療法士 白いなまけもの
私は運動連鎖についてはまだまだ勉強不足ですので、とても勉強になります。

中枢神経と抹消の筋を含めて一つのシステムとして考えなくてはならないのですね。

人間の奥深さを感じます。

必然的に治療も複雑になるのですね。

今後も幅広く勉強していきたいと思います。

返信

山本尚司
コメントありがとうございます。
認知運動療法は今後さらに大きな可能性を秘めています。
従来のリハビリのコンセプトを取り込んで、総合的な治療展開ができれば、スポーツコンディショニングや一般人の健康にも寄与できます。また臨床で興味ある知見などがございましたら是非お知らせください。

腸腰筋

匿名
『踵への刺激にて腸骨筋が促通され、アーチ部においては大腰筋が促通されます』と記載されていますが、どういった原理なのでしょうか?また、刺激に関してはどのような刺激が有効なのでしょうか?

返信

山本尚司
正常歩行パターンではヒールコンタクトにて長骨筋がミッドスタンスからトゥーオフにかけて大腰筋が働いてきます。このような歩行における筋活動は抗重力にて地面に足がついておくる特有の活動ではなく、supineにて皮膚に感覚入力することでも同じような活動が見られます。皮膚反射というようですが、実際に研究結果もでています。よって歩行をイメージして、足裏に刺激を入れるとそれに伴って歩行時の反応がみられます。足裏と歩行時に関係がある筋を触察しながら刺激の強さや方向および部位を選定していくといいですね。必ず連鎖のある二点を触ることで反応が促通されます。

ありがとうございます

匿名
皮膚反射ですか。
頭が悪くて申し訳ないですが、どのような分野の研究でしょうか?
また、皮膚反射に関する文献や成書等があれば紹介していただけないでしょうか?

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