運動連鎖道場第五期生報告

運動連鎖道場第五期生報告
仙腸関節の機能障害

 2月11日水曜日に運動連鎖道場第五期生の第三回セミナーが開催されました。テーマは骨盤~下肢の運動連鎖です。主に仙腸関節をターゲットにして論理展開で下肢の機能連鎖を学んでいきました。思えば私の理学療法としての歩みは仙腸関節とともにあったといっても過言ではありません。
専門は何か?と言われれば本当は仙腸関節なのもかもしれません。
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 写真は仙腸関節のinflare~outflareを評価アプローチしているところです。仙腸関節の歴史はAKAがおそらく理学療法では発端で、仙骨由来の考え方が主流でした。つまり仙骨のneutationとcounter neutationです。うなずき運動と起き上がり運動ともいわれるこの仙骨の運動は、AKAではマジックというか魔法のような効果があるという神秘につつまれたアプローチとして君臨していました。今では多くの見解よりその効果機序などは説明がつきますが、当時は仙腸関節さえ触っていればすべて良くなるというような勢いでした。しかしながら、時代は変わりpassiveでものの10秒ぐらいで楽になりました・・・という連続で臨床が終わるはずもありません。治療院なら別です。ある効果指標をもって変化を出せば終了にできます。しかしながら愁訴を改善しよう、治そうとした場合は別です。変化したという反応と治すという臨床は別次元のものなのです。時代は変わり、仙腸関節を腸骨側から見てみようという流れがでてきます。マリガンコンセプトやJFもそのようです。カイロプラクティックではガンスッテッドテクニックといった昔から腸骨ベースの考え方が当たり前でした。リハビリでは仙腸関節を仙骨からでなく腸骨からみるというだけでも大きな進歩と変化でした。ただ単に内からみると外からみるかだけでの差なのですが、人は別角度からみる方法があるんだというふうに教育されないと、なかなか常識の殻から出てこれないものです。仙腸関節を仙骨からみることですべて解決するかのように思わされていたのですが、冷静に考えてみれば確かに腸骨からみることも理にかなっているのです。たとえば仙骨がneutationしていたとすると、それは仙骨単独で動いたものなのか?という疑問がわきます。もし腸骨が全く動かないで仙骨が単独で動いたならばneutationしたといえるでしょう。しかし腸骨が後傾したとしたら結果的に仙骨からみるとneutationということになります。ようは仙腸関節の変位を相対的な位置関係でみていた可能性があったということです。ではL5と仙骨の関係はどうでしょう?L5と仙骨もある意味相対的な位置関係にて捻じれを生じている可能性があります。そう考えると、仙腸関節を探究していくと結局、仙骨と腸骨、さらに腰椎と股関節、さらに恥骨の変位なども総合して考えなければ機能障害の病態は明らかにならないということなのです。それを仙腸関節に関わるある一点からだけの見方では、当然効果に差があって当たり前なのです。多面的な見方をしなければ仙腸関節つまり骨盤機能を網羅できません。仙腸関節の効果は、心身相関による交感神経の緊張による副運動の末梢の制限の集積部位としての役割があります。副運動の中枢を担う仙腸関節の症状と、骨盤のマルアライメントによる機能障害とは全く種類が違います。極端な例をいうと仙腸関節が脱臼してしまった症状と、仙腸関節のmobility低下による症状とは明らかに相違があるでしょう。仙腸関節の機能障害を考える上で、AKAから入った理学療法は腸骨由来の機能障害の考え方にすぐにシフトできないのです。カイロプラクティックは腸骨と仙骨の変位をパックとして評価してアプローチしますので、最初からセパレートしては考えません。何故なら副運動へのアプローチによる効果判定は、SLRやFFDなどの可動範囲の向上による痛みや痺れの軽減であり、カイロプラクティックの仙腸関節のアプローチ効果判定はAK(アップライトキネシオロジー)に代表される筋力の発揮改善になります。効果指標に違いによってアプローチの視点が全く違ってくるのです。仙腸関節機能障害が副運動へのアプローチから脱却できないのはそのためなのです。よって、腸骨由来の機能障害の考え方がでてきても、副運動機能障害との違いや使い分けを頭で整理できていないのが理学療法の現状です。
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  写真は前額面のstrategyテストをしているところです。仙腸関節へのアプローチの後に姿勢制御がどのように変化するかをみるのが目的です。仙腸関節へのアプローチにより荷重バランスが変化することは私自身が10数年前に行った研究による知見ですが、これは可動性の改善という観点ではなく動きへの影響を目的としたものです。仙腸関節を腸骨からみた機能からみることにより、股関節のstrategyとの関連がクローズアップされます。つまりHip strategyに影響を与えることになり、二関節筋の関与を考察に加えることができます。PI腸骨変位では股関節伸展モーメントが低下し、膝伸展モーメントが増大します。AS腸骨では股関節屈曲モーメントが低下し、膝関節屈曲モーメントが増大します。
  臨床所見ではモーメントの増大した二関節筋はいわゆる伸長反射が誘発されspasmが生じます。低下したモーメント側の筋は短縮するか委縮して筋力低下をきたします。
 荷重バランスの改善を促すためには、基本的にはAS腸骨側にアプローチします。AS腸骨側は非荷重側傾向があり、片足起立でのテストGillet,s(Sacral fixation) testではPSISが挙上してしまいます。AKAなどのアプローチにより即時的に改善がみられ、荷重バランスも左右差が小さくなります。当然、荷重バランスが変わると歩行などの動きの改善がみられます。特に荷重しやすくなるということは、立脚中期の骨盤のswayとなって視覚的に確認できます。いずれにせよ仙腸関節の機能障害は、ある程度隣接部位との関係を考慮しながら三次元的な変位を特定することが動きへの誘導につながるのです。骨盤の前傾後傾という単純な差別化にて機能障害を説明しようとすること自体が既に臨床では無理があるのです。二極化した発想では、生理的な前傾が良くて後傾が悪いという単純な思考過程に陥り、全ての人を生理的前傾が得られなければ良くならないという形に強引にはめ込むことになってしまうのです。ロボットや力学的なモデルではいいかもしれませんが、人は機械ではありません。いかようにも適応できる幅をもっているのが生命というものなのです。

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 写真は道場生の畠山さんが連鎖の発表と実技を披露しているところです。とても細かい洞察力のもとに局所の知見を全体としての連鎖につなげられる思考を持ち合わせています。足の内在筋の促通を目的として長拇趾屈筋と長趾屈筋の緊張を落とし、短腓骨筋を第五中足骨とともに屈曲方向に促すことで足趾のIP関節による把持が可能となります。結果的にQuadや殿筋の促通につながり足~骨盤の支持性が向上します。理論的には足の内在筋の低下している病態は足の外反傾向にあることで長い伸筋や屈筋が過剰に働いてしまうという前提にたっています。
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 被験者は同じく道場生なのですが左足趾の把持能力が低下していたのがアプローチ後は見事にPIP関節の屈曲がみられました。bodyworkなどの全体的な思考と、局所的な機能解剖に基づいたモードのバランスをとっていく必要があるものと改めて感じさせられました。
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