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臨床に役立つ筋・筋膜・腱の基礎

臨床に役立つ筋・筋膜・腱の基礎

先の記事にて背筋の階層性について記事にした。lyerにおける断面と、さらにその一つ一つの筋肉の構成要素の分布の違いを理解し、運動器としての機能を再建する作業を理学療法においては旨とします。これは運動療法やボディワークそしてマッサージや徒手療法においても同様です。

というのはROM改善や筋膜リリースそしてMPSの改善において、従来であれば保存療法を生業とする理学療法や柔整、鍼灸マッサージが専売特許で合ったものが、生食の注射によるリリースが診察にて診療行為として行われるようになり、画像診断の元に、ダイレクトにエコー下でリリースすることの効果が劇的だからです。いわゆる注射による運動機能の改善ということになります。もちろんそこに原因と結果があり、必ずしも癒着がある滑走障害の部位と愁訴が一致するとは限りませんが、これは理学療法であったとしても果たして評価と治療の乖離がないとは言えないからです。

運動器としての筋肉が機能するためには、腱と筋膜が一体となって働くことが不可欠です。
運動器のmuscles and bones, structurecomponent, element構成要素として腱や筋膜があるのです。

この腱や筋膜は部位によって組織編成が違うようで、一概に筋膜や腱と一括りにできないと言えます。
もちろん具体的に組織の構成別にどのようなアプローチを提供するかと言われると、それは現実的には難しいかもしれません。運動連鎖パルペーションテクニックはあらゆるlyerにアクセスできる方法だからこそ、このように組織の違いによる選別へと踏み出していくことの使命があると考えています。

ここに文献の一説を引用する
「骨と筋肉は、コラーゲンに富む線維組織である腱によって連結されて初めて一体化した運動器として機能することができるようになる。筋組織を包む筋膜も腱と同様に線維性であり、筋肉を区画化し、筋肉間の摩擦や筋肉の過剰な動きを抑制するだけでなく、腱と協調して、筋収縮によって生じた力を骨格に伝達する。」
吉本 由紀 他:筋と骨をつなぐ臓器 腱と筋膜.THE BONE Vol.29 No.3 2015- 秋号

筋膜も最小単位である筋繊維(筋細胞)を包む筋内膜、筋繊維を束ねて筋束を包む筋周膜、そして筋束をさらに束ねて、一般的に筋肉を包む深筋膜と接する筋外膜(筋上膜)に分類される。それぞれの成分はコラーゲンとエラスチンの配分が微妙に違っており、筋内膜と筋周膜は疎性結合組織のようで、腱と筋外膜は密性結合組織から成っているとのことです。

腱の組織
鶴池 政明 他:損傷した腱・靱帯の治癒過程.大阪体育大学紀 −第32巻 (20D1)PP.149157より引用

 上図には腱(左)と靭帯(右)の組織が示されています。コラーゲン繊維は高密度で配置され、その繊維方向は受けるストレスに沿っているとのことですので、作用する力の方向により合った組織配列をしているということになります。逆に言えば適度なストレスによって、治癒過程が促進されるということでもあります。

ここまでの内容をまとめますと、全身に600あまりある骨格筋は、筋腱複合体として機能しているということです。そして筋肉は最小単位である筋繊維は筋細胞とも呼ばれており、顕微鏡と見るほどの繊維となります。一般的な細胞のイメージと違い、髪の毛ほどの太さで長く細い巨大細胞とも言えます。この数十本の筋繊維が集まり筋束が形成され、さらに平行に数百~数千本の筋束が配列して筋腹となり、腱を介して骨に付着している。

腓腹筋とアキレス腱US

川上泰雄:筋活動における筋腱複合体のふるまい.学術の動向.2006年11巻10号p. 28-31.より引用

図1は上記文献からの引用だが、筋の長さを変えない条件下で筋収縮させた時の、超音波画像となります。下腿三頭筋の筋腹は短縮しており羽状角が斜めに大きく成っていることがわかる。ということは全長としては変わらないということにおいて、アキレス腱が数センチも伸びるということを物語っています。容易に伸びなさそうな腱には、相当な弾性があるということなのです。このアキレス腱の弾性を最大限に引き出しながら、歩く・走る・ジャンプするといったパフォーマンスを実現しているのです。
 下肢筋群は、筋腹よりも筋束のほうが短いものが多く羽状筋と呼ばれており、収縮によって羽状角の傾斜が縦から横方向に変化します。一方、体幹や上肢に存在する筋群は、筋束の長さがイコール筋腹の長さになるため、平行筋(紡錘状筋)と呼ばれている。平行筋の場合、筋束はその大部分が筋腹の長軸方向 に対 して平行に配列しているが、羽状筋では短い筋束が斜めに配列する。

歩行時の筋束と腱

図2では歩行時の筋・腱の動態を示しています。特筆すべきは、歩行時のLR:立脚中期にはほとんど筋束の長さは不変であり、アキレス腱が伸張されているということです。もちろん筋束が全く収縮していないということではなく、腱を伸ばすためには筋肉による作用が不可欠です。腱が伸びるためには筋腹がしっかりと収縮しなければならないからです。これは図1のように関節固定であれば、筋束の長さが短くなりますが、歩行時のICからフットフラットになり、そこからLRに移行するため遠心性に下腿三頭筋が伸張されます。つまり下腿三頭筋の全長が、歩行時は変化があります。図2のグラフを見ているとIC時に微妙にグラフが下降しており、これは筋と腱が短くなっていることを示しています。

アキレス腱断裂の機序を推察していくと、人間の腓腹筋の腱組織はワラビーよりも弾性エネ ルギー蓄積効果が高い(BiewenerとRoberts, 2000)との見解もあり、アキレス腱そのものの弾性が低下することで、強大な腓腹筋の収縮力に負けてしまうということが考えられます。ここでいる弾性とはバネのような作用であり、「伸びたら縮む」プライオメトリックなエクササイズやfore foot lockerなどのランニングフォームではアキレス腱の弾性が最大限に活かされます。対して粘性は粘土のようにジワッと持続的に伸ばしていくことで、変化・変形していくことを言います。何れにせよ、筋腱には粘弾性があり、腱においては伸びたら戻る作用である弾性が特徴といえます。

私の臨床経験では、バトミントンの踏み出しの後ろ足で切れた人が何人かおり、やはりエクセントリックな負荷が加わった時と言えます。長さが延伸しながらさらに筋収縮してのアキレス腱の弾性にて次のジャンプやステップにつなげていくことを求められます。足をステップした時に体重がかかったまま単に伸びてしまい、伸びきった後に急激に筋収縮すると、弾性が発揮できずに切れてしまうということになるのかもしれません。つまり粘弾性でいうと、廃用によりアキレス腱によって下腿三頭筋が伸張されてしまうと、アキレス腱そのものが短縮してしまい、尚且つ下腿三頭筋も粘性によりエロンゲーションしてしまいます。このような廃用の下腿では、関節運動による筋の長さの変化に筋束がついていけず、筋収縮が遅延します。そうすると物理的にアキレス腱のみが伸張され、元に戻る作用である弾性作用が効かなくなります。
これがアキレス腱断裂の機序における考察です。
 適度な長さの配分に筋腱複合体を保ち、神経系がすぐに反応するように筋腱ともにアイドリングしておき、オンオフがいきなり来ても、常に漸増的に負荷と筋腱の長さが粘弾性を持って増減することが好ましいと言えます。
そうなると単に下腿三頭筋だけの問題ではなく、全身の運動に対するリアクションを高めていく必要がありますね。

まとめ
筋肉と筋膜と腱の複合体として機能する筋骨は、2010年前後には、筋腱複合体(Muscle Tendon Complex, MTC)として紹介されており、特に下肢における腱の弾性(バネ)について紹介されています。筋肉のストレッチにおいても粘弾性からの考察も散見され、そこに昨今は、筋膜の滑走性が加わり、全身の動きと連動させて考えることができるようになりました。蹴り出し時には筋束の長さはほぼ不変ですが、腱が伸びることでバネ作用が発動して推進力を生み出しています。この下腿三頭筋ーアキレス腱モデルから、SFBLなどの筋連結によるfunctionが別の理論体系として入ってきました。OKCのエクササイズにおいてはコアコントロールなどのanatomyですが、CKCにおいてはMTCモデルなどのbiomechanicsによるpowerへと展開していきます。運動器障害としても機能障害としては筋膜からの展開がダイレクトですが、パフォーマンスとなれば力学的な視点は欠かせません。動きやすさとしての筋膜か、パワーとスピードとしてのMTCか・・その両輪がロコモーションからのスポーツパフォーマンスにおいては不可欠であり、同時並行に観れる視野が必要不可欠であろう。
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