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運動連鎖インソールはどのようにして生まれたのか⑴

リハビリインソールの現在地

2/2-3の2日間
東京の町田にて2019運動連鎖インソール®︎基礎編のセミナーを開催しました。
2019年2月インソール

玉石混合となっているインソール業界において、リハビリ現場にて生まれたインソールの現在地を整理していきたいと思います。
インソールつまり足底板は私が臨床実習に出ていた30年前にさかのぼります。
臨床実習で昭和大学藤が丘病院に70-80日学ばさせていただきました。
当時、その後に大きくリハビリ業界の進歩に貢献されることになる、入谷誠先生や山口光圀先生が在任されており、理学療法士を極めていく空気感が伝わってきます。
単にテクニックや方法論ではなく、確かな医学的な知識をペースとした、まさに王道ともいうべき理学療法がそこにはありました。
例えば整形外科分野では、標準整形外科を読破、脳神経外科分野ではベッドサイドの脳神経を完全マスターといった基礎医学をベースとしての理学療法理論がありました。つまりテクニックありきではなく、基礎医学ありきなのです。
例えば医師の立場からすると、医学的な見地がわかった上で施述しているといったことが示されれば信頼感が全く違ってきます。おもむろに身体の使い方といったことを振りかざしたとしても、それはよくわからない世界であり、観念的であって医学になり得ないロジックとなります。理学療法士の陥りやすいエアポケットは「身体の使い方」というフレーズをまず率先的に使ってしまうということです。医学的見地が先にあり、その上で論理立てて身体の使い方につなげていく思考とロジックが不可欠なのです。結果的に楽になったといったことのみをクローズアップすると、それは比較対象としてあらゆるジャンルのあらゆる方法が比較対象となり、唯一無二であるかどうかは誰もわからない世界となってしまうのです。
 
 理学療法における足底板の歴史
間違いなく入谷誠先生を起源とします。その後にあまりにも職人的で汎用性が難しい、つまり技術習得が難解であり、どのようにしたらその領域に達するかがわからないということもありました。医学会における唯一無二の存在は同職者の中では必要としても、それでは普遍的なサービスを提供できないということもあります。その領域にどのような段階付をして到達するかといった道筋がわかりにくかったのです。もちろん日本的な職人気質といったものに惹かれるからこそ、我々は目指したのですが、一方でプロトタイプの足底板の試作もいくつか考案されました。
 つまり誰でもどこでも簡単にできるもの、例えば上下に突起が動いて形状を採型する型や、インソールもエリマキトカゲのように、パットを中敷の周りに敷き詰めれば中央に足が収まるなど、理学療法業界でもいくつかの発想がでてきました。

しかしながら、「あれはあの人しかできない」というアンチテーゼから生まれた足底板メソッドは、入谷式があっての対極ですので、そのものの本来あるべき利用者様は患者様から見ての特色やメリット、そしてセラピスト自身の追求したいという意欲に対してのオリジナリティーや理念が欠如していたため、一時的な提言に終わりました。ただ誰もが「誰がやっても同じような商品を提供できる」という考え方は市場原理としては当然とも言えます。よって理学療法士の中ではもてはやされなくても、世界市場を考えるとベースはプロトタイプとなります。

元に戻しますと、理学療法における足底板の歴史は、臨床の中から生まれたということです。どのような経緯にて生まれたかということが重要であり、それが簡便な方法だからというコンセプトは病院として導入する分にはいいが、個人としての意欲へと駆り立てることはないということです。いつの時代でもテクニックや羨望の眼差しで慕う人たちと、そうでない人のやっかみともつかない否定との賛否なのです。

では具体的にどのような背景から生まれたか?
私が入谷先生から直接お聞きした限りにおいては、骨折治癒において小児は歪んだいたとしても治癒の過程にて元に戻ってきます。しかしながら成人の場合には逆に歪んだまま治癒してしまいます。物理的に変位したものは何か構造的に補正しなければいけないということで、最初はそれこそ構造に対する楔のような役割としての足底板だったようです。

また私が実習に行った時から、昭和大学藤が丘は股関節疾患が多くRAOという手術方法の患者さんが沢山いました。若くて臼蓋を回してくるという特殊な手術方法であるがゆえか必ずと行っていいほど中臀筋跛行をきたします。その動きはnegativeなtrendelenburgであり、運動療法としての中臀筋エクササイズだけでは改善が難しいように見えました。内転筋を効かせるためにクッションなどを挟みながら歩くと跛行は抑制されるのですが、それでは実用的ではありません。そこで登場するのが内側縦アーチパッドです。内側縦アーチのパッドを入れることで、歩行時の上体の傾きが改善することが観察されます。

つまり歩容を改善させることができる可能性がここで示されたわけです。今では当たり前の歩容の改善のためのインソールですが、当時は歩容の改善というよりもあくまで物理的な踏まず支えといった認識でした。それが股関節疾患という股関節の問題を発端としての現象に対してアプローチするためのツールとして足底板を選択できる可能性が出てきたという画期的な出来事だったのです。


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