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脱神経筋に対する運動連鎖の視点

脱神経筋に対する機能的病態と運動連鎖からの考察

脱神経筋は末梢神経障害にて見られます。
特に末梢神経障害における脱神経筋も神経根レベルから、さらに末梢神経まで狭窄部位の遠近位においても変わってきます。いずれにせよ明らかなことは、完全に麻痺に陥った神経筋においては、非常に治りが良くないということです。
つまり神経根レベルからの、末梢神経損傷においては神経伝達が低下するため、一回の筋出力よりも持続的な筋発揮に問題が残ります。筋萎縮は神経原性疾患や筋原性疾患などによる病的なものと、ギプス固定や長期臥床後に起こる廃用性のものに分けられる。

この脱神経筋における細胞レベルでのメカニズムについておさらいしておく。
(参考)猪股 高志:理学療法のための筋の基礎知識.埼玉理学療法 11:2-11,2004.
筋萎縮のメカニズム
・筋は筋蛋白の合成と分解のバランスがによって形態が保持されている。
・このメカニズムはインスリン様成長因子(IGF-I)や甲状腺ホル モン(T3)等でコントロールされる。
・不動や脱神経、激しい運動によって筋蛋白の合成が抑制され,分解が亢進することによって筋が萎縮する。

運動神経による筋の形態維持における役割
メカニズムとして3 つ考えられ、
①通常の神経の興奮に伴う筋収縮のメカニズム。
②通常の神経の興奮とは別に神経終末からランダムに Achが放出されており、これによる終板電位は微少であるので筋収 縮には至らないものの、筋の形態維持に作用している可能性もある。
③Neurotrophic factorとよばれる神経からの栄養因子の分泌であり、神経細胞体で合成され軸索流によって神経終末に運ばれ,インパルスと関係なく放出されて筋の形態と性質の維持に関与していると考えられている 。

外傷や激運動による筋萎縮のメカニズム
激しい運動などにより基底膜が変性や崩壊を引き起こされ、細胞外液が筋原線維内に流入し,これらが刺激となって蛋白分解酵素が活性化すると考えられている。

廃用性筋萎縮など筋活動の低下
筋活動量の低下に伴いRNAの量が減少(DNA 量は 変化なし)することによって、蛋白合成能力が低下し、筋蛋白量が減少していくと考えられる。

萎縮筋の筋細胞レベルでの変化
・全般的に筋断面積が減少している上で,Z帯が不鮮明となり部分的に消失することもあ流。
・アクチン・ミオシンの配列の乱れや部分的な断裂も見られる。
・筋形質中の器官である筋小胞体と横細管においては拡大・変性が認められる。

神経筋接合部の変性
神経筋接合部の変性として junctional fold の窪みが浅くなり,不明確になる。この傾向は特に脱神経筋で著明となる。筋形質膜側で Ach をうまく受け取れなくなる。
※筋収縮のメカニズム:中枢神経系からの促通性インパルスが脊髄内の前角細胞におよび興奮が引き起こされ,興奮伝導が神経終末へ至る。その信号を受け神経終末に存在するシナプス小胞から神経伝達物質である Ach を、接合部の筋形質膜に向けて放出する。神経筋接合部の筋形質膜側では junctional fold の膜に存在する Ach 受容体が Ach を受容する

他の筋の形態維持における因子
①筋の伸張位保持による筋萎縮の予防
②電気刺激による筋萎縮予防
③薬物による筋萎縮予防
 などである。
 従って,筋の形態を維持する要素として、は中枢神経系からのインパルスの変化も含めた運動神経の影響のみならず、筋そのものにも代謝やホルモン,遺伝などが誘因となる何らかの要素があることがうかがわれる。

筋萎縮の進行度
 脱神経・腱の切断・関節固定の順で筋萎縮は高度であるが,関節固定に関しては短縮位で固定した場合と伸張位で固定した場合では萎縮の程度は 大きく異なる。短縮位での固定では筋萎縮が著しく,伸張位の固定ではしばらくは萎縮があまり見られないだけでなく,一次的には筋肥大の所見を示すこともある。
 初期には type II-b(速筋線維) 次に type II-a (中間筋)次に type I (遅筋線維)の順 で萎縮が進行しtype Iの萎縮は4週程度までは少なく場合によっては代償性の肥大が見られ type II-a.b の萎縮は著しい
 特に表層の type II(速筋) の萎縮 は著明で深層は萎縮が軽度である。
リハビリ所見から見た脱神経筋の実際

手術後や外傷後に低下する筋肉との違いは、神経支配筋が選択的に低下するということです。
 
 先の生理的なメカニズムの説明の中でも、最も脱神経筋における変化は、神経筋接合部であることがわかります。
 いくら神経終末からAchが放出されていても、筋形質膜にあるAch受容体の形態に変化が起こり、いわゆる放出側ではなく受け取り側に拒否されることになります。この辺りの病理が、脱神経筋の筋持久力、持続的な収縮力の維持の欠如に関係しているものと思われます。受け取るAchが少ないと、頻回なる運動指令に対する作業員が少ない様なものなので、少ない作業員は直ぐに疲労状態に陥ってしまうといったところです。
 
 廃用や固定後の場合には、一帯が低下や硬くなるといった状況ですので、先ず関節運動学な不全が見られます。つまり軟部組織の中でも関節包や靭帯、膜系などあらゆる関連組織に見られます。
 しかしながら神経麻痺の場合には、関節には問題ないわけで、ダイレクトに筋収縮のみの問題となります。
よって関節運動は他の協同筋群によって代償可能であり、軟部組織による関節可動域制限はありません。関節が動くための筋バランスに問題が出るため、違和感や重たいなどの不安定感になります。
つまり目的としての関節運動は遂行できてしまうため、余計に脱神経からの回復筋は使われなくなっていきます。合目的に生活動作は遂行していくため、その過程で使われなければ益々筋収縮の刺激が入らなくなり、廃用も進行していきます。

この神経終末の回復が実際にどれぐらいの期間にて回復し、正常化するのかによりますが、過用による筋の変性にも注意しなければならない。激しい運動を行うと筋膜に異常が生じ,筋の配列に障害が起こりやすくなる。この障害は等尺性収縮よりも伸張性収縮に著明である。これら が繰り返し引き起こされると,筋線維は正常に回復せず,筋力低下を引き起こす可能性がある
 確かに経験上でもオーバーハンドスポーツにおいて、繰り返し使いすぎることで、小さなCuff Muscleは疲労を起こし、回復する間も無く過用になることで筋膜に異常をきたし、結果的に筋萎縮に至る例を見ることがある。

治療方法としては①筋力強化 ②電気刺激 ③ストレッチ ④薬物療法

生理学的な神経筋接合部の変性は考慮した上で、運動連鎖としては選択的に脱神経筋のみを取り出して収縮させることは生活動作の中では、合目的ではない。つまり代償動作にて他の補助筋群を参画させることで、目的動作を達成することになります。また印象的には単一の脱神経筋を促通することができたとしても、自由度と汎用性はまた別個にアプローチする必要があります。つまり組み合わせですね。通常の筋力低下であれば、関節運動に伴って全体的に強化されたり、単関節運動にて促通された筋肉は応用動作においても汎用されるのですが、脱神経筋からの回復筋は連動性・協同運動といった点においても欠如する印象です。まるで脳内の神経線維のネットワークが単一ルートしか残っていないかのようです。
よって神経麻痺に陥った筋肉の回復過程において、リハビリ原則としてはターゲットの麻痺筋を促通しながらも、さらに上下の連鎖部位も同時に働かせることです。
 つまり神経筋接合部の弱化による電気的インパルスの通過障害の回復とともに、ニューラルネットワークの再構築が必要ということです。
 例えば眼球運動と後頭下筋への意識、頸部回旋と肩胛骨連鎖、体幹筋群の働きとともに骨盤のin-out flareなどを同期させることです。つまり筋繊維レベルでの問題だけでなく、動くということにおける身体の適応を考えることで、自ずと理学療法士において何ができるかということが見えてくるのです。筋繊維レベルではFESなどの電気療法と、ビタミン12などの薬物療法を併用し、疲労に考慮しつつエクセントリックな筋収縮形態を避けながら単一の筋肉を取り出しながらアプローチし、運動連鎖にて汎用性を高めていきます。
脱神経筋における理学療法原則
 ⑴疲労を考慮:収縮力をモニタリング
 ⑵筋収縮形態の選択:コンセントリックベース
 ⑶脱神経の促通方法:麻痺筋をactive assistにて抽出し自由度を高めていく
 ⑷運動連鎖による汎用性:組み合わせ
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