中臀筋跛行のメカニズム(運動連鎖道場in福岡内容ー報告ー)

トレンデレンブルグ徴候(Trendelenburg's sign)にはpositiveとnegativeがあり、その機序についてのメカニズムについては明らかになっていません。特に具体的なアプローチにおいては、さらに未知となっています。全体的に臀筋や体幹のトレーニングをしていると網羅される側面があり、何らかの改善は見られるためそのままスルーされることが多くあります。しかしながら改めてトレンデレンブルグ歩行とデュジャンヌ歩行の機序については、あまりにも臨床では当たり前にってしまっているため、疑問をいだくこともなくなっています。

機序は違うはずだけれども、アプローチは別段同じようになってしまっている。ケースバイケースで対応しているので、これだという方針はないというようなところかもしれません。

トレンデレンブルク兆候は見た目通り前額面上の問題となります。先ずひとが抗重力にて動くという前提には、身体軸という仮想のセンターが必要となります。バランスとは何かに対して戻せる能力であり、それは重力に対して修正していることは間違いありません。転ばないで立っていられることは、立ち直り反応や平衡反応の賜物であり、抗重力に負けてしまうと傾きや転倒につながります。高齢者の重度な背骨の変形は、まさに重力線に対する適応の結果であり、いわゆる可変性を持って対応できなくなったことによる固定適応となります。つまり若い時であれば修正能力が効くことで、前後左右の動揺に対して中心軸への回帰が起きます。これが身体部位ではなく物理的な中心軸として表象されて来るのです。

長期にわたる変形や痛み、炎症などで、本来あるべき連鎖が途切れると、運動連鎖かなくなり個別の身体部位にて運動を遂行しようとします。股関節疾患もしかりで、変形性股関節症は経年的変化を前提としており、進行が緩徐であるが故に身体における代償や適応も独自化しやすく、改めて新しい連鎖を受け入れることが難しくなっていることがあります。このようなケースであれば、股関節そのものの機能にこだわり過ぎても、改善はあるところから見込めなくなってしまいます。つまり姿勢制御の前提である、軸への回帰というメカニズムが失われているからです。この軸機能ありきで身体運動は成り立っており、体幹の安定性とは軸の周りの同心円状に取り囲む年輪のようなものなのです。よって水平断にて面積があるということは、多少の年輪の分布に歪みがあろうと、根っこから曲がって伸びていようと、倒れることはありません。ホームランバッターが大体胴回りが太いのも、立て直す身体部位が胴体にて吸収されてしまうからなのです。これがどんなに身体能力が高く、当たれば飛ばすスリムなアスリート体型の選手であっても、体制が崩されると首や肩周りがどうしても位相差が出やすくなるため、修正部位が多岐にわたることになりパワーをボールに集約させる確率が下がるということになります。


歩いていると片側の臀部が痛くなるなどの症状は、立ち直り反応としての修正能力が働いているからといえことも多々あります。明らかにアライメントは左へ傾倒していることで、立ち上がると重心が高くなることで揺り戻しがおきて、骨盤をより左へ振ることでバランスをとるなどが例としてあげられます。

年齢も80から90を超えてくると、明らかに傾倒姿勢で固定しているケースが見られます。これはいつの間にか戻せる筋肉や関節のマージンが少なくなり、本来のアライメントがそのまま現れたものと言えます。

このようにあらゆる現象見ていくと、中臀筋跛行は修正能力の表れとも言えます。つまりトレンデレンブルク兆候は、中臀筋がダイレクトに効きやすいベクトルにあるからこそ、遊脚側の骨盤が下降するのです。反対にネガテイブなトレンデレンブルク兆候の場合は、中臀筋よりもTFLや腓骨筋のテンションによる支持戦略であり、重心の移動が不十分であることがわかります。つまり骨盤のサイドへのSWAYがストップすることにより、体幹が側屈することで補償しているのです。関節運動学的には、足部の回内に伴う骨盤の側方移動、つまり相対的な股関節の内転位という絶妙なタイミングにて連鎖が促される必要があります。

トレンデレンブルク兆候の改善のために必要なことは、股関節周りが学術的にはメインとなるものの、歩行そのものの原理原則を付帯することで、潜在的な能力を引き出し、また足りないものを補完してくれることになります。中臀筋のみならずネガテイブなトレンデレンブルク兆候の場合には、内転筋の働きが不可欠となります。この内転筋は足部の回内運動に連動して作用しますが、股関節の制御のみならずセンタリング作用があります。センタリングとは姿勢制御の軸となるべき機能的な概念であり、必ずしも解剖学的な一致をするものではありません。
この軸は独楽の芯のようなもので、回転する時に不可欠な機能です。回転モーメントが大きくなればなるほど、軸としての強さが求められることになり、安定とは太くそして強烈に戻せる能力とも言い換えられます。つまり歩行とは筋肉による制御もさることながら、モーメントや加速度などの物理的なフォースを生み出す、動力機関なのです。もちろん中臀筋跛行と称されるように、寄与する割合が高い重要部位が損なわれると、他の機関の立て直しが難しくなってしまいます。つまり普段はセンタリング機能をそれほど使っていない歩行者において、股関節のメインパーツが低下すると、バックアップ機能としての代替を持ってこれなくなるのです。
つまりセンタリングとバイラテラルは、お城の天守閣にある大黒柱ともいうべき芯であり、姿勢制御の機能軸なのです。もちろん機能軸を構成するパーツはあるのですが、それ以上に連動性と相互性が不可欠な人類の極みともいうべきファンクションなのです。

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運動連鎖道場in福岡での一場面
重度な膝関節障害などにより長期にわたり固定が余儀なくされてしまい、いわゆる運動連鎖の分断・軸との分断・センタリング機能との連動性の消失、が見られる場合があります。難治性であり膝の可動域はもちろん腫れもひかず、リハビリが進みません。上図のような肢位にてセンタリングを促通すると、留め金が外れたように可動域が回復することがあります。

 センタリングに必要不可欠なパーツとして大腰筋があります。化膿性関節炎など炎症繰り返したり、手術後に長らく腫脹がひかなかったりするとセンタリングの機能が、下肢の運動時に連動しなくなります。つまり四肢の動きの遂行には体幹の安定性はもちろんのことですが、センタリングという機能とのbindバインドが不可欠なのです。これが長期にわたり固定や安静が強いられてしまうと、運動連鎖が分断されてしまうことになり、その分断とは軸との分断なのです。我々は運動連鎖という隣接関節との連動性とともに、センターを軸としたコントロール(修正能力)によってコントロールされているのです。このセンタリングが体幹機能のなかに含まれており、これは英語でいうコアーcoreのほうが意味としては近いと言えます。現代の体幹は安定性という外郭の中空器官として筒のようなイメージになっていますが、実際にはその筒の真ん中には耐震性に優れた、強くてしなやかな大黒柱があるのです。
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