歩行・立ち上がり基本動作に必要な運動連鎖

歩行・立ち上がり基本動作に必要な運動連鎖

 超高齢化社会において、理学療法士の果たす役割は身体機能をいかに巧みに活かすかということになります。
治療として痛みを軽減させたり、動きが軽くなるといったテクニカルな徒手的療法が元来続いている文化となります。
徒手療法と運動療法という二元化した流れの根底には、セラピスト側の独自の考えや方法論を身体に適応させるといった趣があります。これは、あくまで治療者側ファーストとしての考え方であり、患者クライアントファーストで考えると、そこには大きなズレがあったことは否めません。
 お医者様といった恩恵に、理学療法士は立場が違うものの、病院にて先生と呼ばれることによって、その恩恵を受けていたことは確かでしょう。病院というと患者にとっては、どちらかというと弱い立場であった側面もあったかもしれません。また、立場が違うだけで全く景色が違って見えることは多々あり、そしてそれが昨今のマイノリティーからの気持ちや思いが、ネット社会という背景においてクローズアップされることとなり、またその多様性において受容することが常とする流れにおいて、ようやく満足度という主観的な指標が導入されつつあります。
 この満足度という指標は、医療においては病気や怪我が治るということ以上の結果はありません。しかし介護や福祉においては、この満足度という指標は生き方そのものであったりします。リハビリにおいても医療ではあるものの、自立を支援していくという視点からみると、治すということとはかなり毛色が違って見えることは確かです。
 つまり立ち上がり動作や歩行を介助するといった観点からすると、これは治療技術というよりも介護技術に近いのではといえます。しかしながら理学療法士が立ち上がり動作や歩行を考えるときには、いかに潜在的な能力を引き出すかということにおいては、その介助方法は機能訓練であり機能回復を促すためのツールとなりえます。
 残存機能ではなく潜在的な能力を引き出すということにおいては、そこに介護と理学療法の違いがあります。
例えば介護度の高い片麻痺の患者さんの場合、一般的には健側への荷重にてトランスファーを行いますが、例えば車いすを斜め45度ぐらいに付けたとしてら荷重側の下肢にて軸回旋をする必要がでてきます。本来、乗り移りは、何回か踏み直しながら方向転換する必要があり、自立もしくは要監視レベルでなければ、介助側においては片足荷重での軸回旋が不可欠となってきます。
 自動ではかなりの高度な身体能力が必要とされるため、立ち上がり動作からのトンラスフファーは文字通りトランスするしかないのです。持ち上げて移すというニュアンスの通りの、タイミングと要領が必要となります。つまりゆっくりと動作介助をしているとリフトしている時間が長くなり、介助者に全体重がのしかかってくることになります。つまり麻痺側のBr−stageが下肢Ⅲレベルのspasticな状態においては、踏み直すための下肢のコントロールが困難であるということです。そうすると前提としては、健側荷重にいて立位保持が困難である場合においては、軸足となる健常側を乗り移る車いすの奥深くに接地させる必要があります。そうすると、当然のごとく軸足が遠くになりますのでますます立ち上がり動作において、リフトが必要となってしまいます。このような場合、本来であれば立ち上がり動作は膝を深く曲げて足を引くことがボディメカニクスの観点からも有効であり、麻痺側への荷重の寄与が必要となってきます。介護職の方々からみると、麻痺側はうごかせないということにおいて、どうしても健常側へ荷重してトランスをしようとすると立ち上がった時点で、車いすとの距離が離れており、勢いトランスをすることになります。
 その人の最大限の力を引き出すということにおいては、患側への荷重をサポートしながら健常側にて踏み直してもらい、方向転換を誘導することが有効となります。患者さんにおいてもしがみついたり、怖い思いをしないで動作遂行できることになります。
 このように具体的な生活動作においては、スポーツ動作に置き換えれば筋力と可動域などを確保したとしても、そのスポーツ動作に直結するわけではないように、合目的に持っている身体能力を再構築して協調させなければいけません。
 また動作遂行において、できるかできないかではなく、ストラテジーとして何を優先的に使うべきかという視点が必要です。
 ⑴立位と座位からの立ち上がり動作におけるストラテジーの違い
  姿勢制御においては立位における制御をみることで、各パーツの寄与をみていきます。代表的な見方としては足と股関節のストラテジーに着目して前後左右の戦略をみていきます。面白のは水平面での回旋であり、いわゆる腰部を回すことで右回りと左回りにおいてやりやすさに差が出てきます。普通に考えれば左右回りが違ったとしても、場面場面では関節の組み合わせは同じストラテジーになるはずです。しかしながら現実には回る方向によって相違があることは、やはり順序性運動パターンによるプログラミングがあるものと考えざるを得ません。
 この座位と立位のストラテジーの違いは、坐骨支持と足底接地ということになります。座面は面積が広く安定します。しかしながら足底は面積が小さく、立位を保持することは高度な平衡機能が不可欠となります。つまり立位における姿勢制御は重心が高くなることも考慮すると、難易度が高く高齢者になればなるほど難しくなってくるわけです。立位において前足部と後足部への荷重における各パーツのストラテジーとなります。支持基底面が狭くわずかな荷重部位の変化が、頭頸部においては大きな変位となります。また立位におけるストラタジーの左右差や前後差があったとしても、立ち上がり動作においては全くその影響や因果関係が見えないこともあります。まずは立ち上がり動作は、重心を前方位に移す予備動作があります。つまりその戦略は上体の前傾ということになりますが、その前傾においては体幹の戦略が幾つか考えられ、
 ①腹圧
 ②背筋
 ③頭頸部or背骨の屈曲

理想としては腹圧をかけて、ある程度体幹を直立位とすることで腹筋背筋をバランス良く使うことでstabilityを活用しての、前傾・前方移動からタイミングよく立ち上がるベクトルに変換することになります。
また健常者におていは、それこそストラテジーの戦略が多岐にわたっているため、まず立ち上がり動作ができないということはありません。しかしながら、簡単で楽に使えるストラテジーを、楽だからという理由にて若くして頻用するのは、結果的に選択肢の貯金をなくすことにつながります。できるだけ楽な戦略は最後にとっておいて、筋肉のバランスによって遂行することが望ましいと言えます。
 まず使いやすいのは上体の重みを利用するという方法です。これは重みを利用してあとは勢いと加速度をもって立ち上がる方法です。これは下肢筋力や平衡機能がある程度備わっていることは必須となります。また背筋であるコンパートメントを硬く固めての前傾です。これもどちらかというと、骨性の支持に準ずる戦略となります。つまり体幹においては副直筋は6パックに分かれており、背筋は筋間中隔の鞘に束ねられています。このような独特の構造により、筋力以上の支持性を高めているのです。これは重たいものを持つなどの作業において、必須のメカニズムであり、素晴らしいパーツであると言えますが、一方で可動性や円滑な動きとは相反するものでもあり、リフトするとう合目的な機能であり、姿勢や身体へのメカニカルストレスという点においては、必ずしも優先的な戦略とは言えません。
 立ち上がるときに足部のどこに荷重をするかといった観点から、苦手な戦略においては立ち上がりは阻害されることになります。しかしながら、立ち上がり動作における足部への荷重において、得意な荷重戦略を用いればいいことであります。しかしながら高齢者においては、座位から立位というのは膝と股関節を伸展させる必要があり、そのための重心移動が前提となります。この重心移動は骨盤の前傾というモーメントが必要であり、いわゆる円背姿勢などにおいては、屈曲の動きが背骨にみられとしても、骨盤は後傾に作用することもあります。そうすると前かがみにはなるものの、立ち上がれないということがおきます。そして上肢による押し上げや、引っ張りなどの代償が必要となってきます。
つまり姿勢制御としての骨盤の前傾ではなく、過度な円背姿勢の場合には、頭が膝にひっつこうかというほどの前傾によって、初めて体重分配の均衡がとれて、そして前方にでんぐり返しをするかのように立ち上がるしかありません。

 「制御とは運動学的に相拮抗するモーメントを発生させることで、身体軸に対して戻す力を発生させ、重心を目的とする方向に移動させることにある」

⑵相拮抗するモーメントを発生させる戦略
 ①肩甲骨
 ②骨盤
 ③腰部
 ④胸部
 ⑤頭頸部
①から⑤においてパーツ間の位相差を生み出し、修正能力としての制御が作用することで推進性へと転換させていきます。加速度と慣性をいかにうまく歩行動作に転換できるかということが、移動動作における鍵となります。また足は車でいえばタイヤに該当し、下肢は動力源エンジンである体幹とのつなぎとなります。上肢肩甲帯は水平面での回転モーメントを発生させ、その逆方向のモーメントに対して相拮抗した力を身体内部に生み出すことの作用を有します。
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