上部平衡系~頸部~

1/29日曜日、福岡医療団研修会が下記のように開催されました。

●テーマ:上部平衡系からの下行性運動連鎖
●内容:上部平衡系からの下行性運動連鎖の評価・治療
●講師:山本尚司先生(フィジオ運動連鎖アプローチ協会 代表)
●会場:たたらリハセンター

運動連鎖とは一般的には上行性運動連鎖であり、下降性運動連鎖とは頭頸部の影響が、下肢に波及していくとを指します。つまり臥位と立位では運動連鎖の動態に違いがあり、抗重力位の違いにより姿勢制御のあり方が変わってくるのです。

上肢肩甲帯は関節運動学的には肩関節の構成帯としての機能に注目されることになりますが、ロコモテイブな観点からはモーメントアームとしての作用を有します。つまり、プロペラのように手を振ることで、身体内に回転モーメントを発生させ、相拮抗する力を身体内に作り出します。歩行時には、物理的な前方への加速度に転換する必要があり、そこにはボディワークでもリハビリでもないトレーニングが必要となるのです。


このモーメントアームの作用が強ければ強いほど、より前方への推進力となり、加速していくのです。よって反動や勢いといった、リハビリでは一見危険だとされる行為が、実生活の中では有効に作用しており、またこの慣性などの外部からの外乱に対して、バランスをとれることこそが安定であり、移動能力の向上と活動の幅を広げてくれることになるのでます。

実技においては水平外転した上肢において、回転モーメントを加えることでその可動性と安定性を評価します。姿勢制御において回転は水平面であり、その時の重心移動と戦略の運動連鎖を見て行きます。この時の自覚的なやりやすさと、実際の関節運動学的な可動範囲とは一致しないことも多く、回りやすさということにおける自覚的な身体感覚とは別物であることが示唆されます。

この回転モーメントのベースである関節可動域と動きの制御機構が整うことで、歩きの効率が高まり、前方への推進力が高まります。

次に頭頸部の前方位という問題に対して、胸鎖乳突筋へのアプローチについてです。

スマホ症候群を代表として、下を向いての作業姿勢が大きく問題となっています。
1日あたりのスマホ使用時間は4時間ということもめずらしくないようで、この間は間違いなく上位頚椎の屈曲姿勢が強要されることになります。また頭頸部の前方位ということも合ぺいすると、上位頚椎の過伸展からの、さらなる頭頸部の並進運動ということも考えられ、胸鎖乳突筋のベクトルは矢状面からの正しいとされる重心線から大きく変位することになり、斜角筋は頚椎の固定のために作用を変えます。
胸鎖乳突筋は乳様突起から鎖骨に付着しており、四肢でいえば2関節筋というか、頚椎を全て跨いだ上でのそれも鎖骨への付着という、特殊な事情を抱えての筋といえます。つまりこの胸鎖乳突筋の長さと安定性のための条件は、多くの要素が含まれており、生理的な筋緊張が保たれているということは頭位から頭蓋、鎖骨など複合的な条件が満たされている必要があるのです。ではその一つ一つを全てケアしなければいけないかと言われると、実はそうでもなく筋肉という軟部組織の担っている枠割は大きく、物理的な効果に止まらない生体の表象があるのです。

つまり能動的な意図した運動における筋緊張のコントロールは、アライメントや運動イメージ、姿勢制御、運動連鎖といった多面的な要素を網羅することになるのです。


セラピスト側のマインドも制御していくことが、より客観的に俯瞰的に機能を見定められる肝になります。

素の自分を見定め見失わないように、深く落とし込みながら、自分に入れ込み過ぎないようにすることが大切です。自らをすりガラスのように透明にして、いかなる情報もフィルターとして判断できるようなレセプターは空けておかなければなりません。どんな人だったら見て欲しいと思えるか?思ってもらえるか?『自分に入れ込まない』ことにより、やるべきことをコンスタントに取り出すことができるのです。そして患者や選手のニーズや価値観や感覚を受容することができるのです。

さてら頸部に戻りますと、その胸鎖乳突筋の緊張をコントロールする術として、先ずは直接的に収縮を加えることです。全長に渡り筋緊張は一定ではなく、頭頸部の前方位は乳様突起部において、過剰に働くことになります。

触診により、全長に渡り収縮が入るようにアプローチしていきます。

健常人の不良姿勢であればこのようなアプローチが功を奏しますが、より痛みが重度で特別なプレパレーションが必要な場合には、鎖骨の調整や側頭骨の調整にて環境を整えていきます。つまり過緊張にて痛みの閾値が低下している場合には運動療法による効果は期待できません。そこで直接に刺激を入れないようにしながら、関節運動学的なアライメントを整えるアプローチに転換させていきます。

ここにさらに頚椎の変位を加味することで、頚椎にも筋肉にも負担のない、効果的な機能再建をすることができるのです。

頚椎は現代はスマホの普及などにより、より頭頸部が垂れることになります。脊椎全体の中で、より頚椎への負担が増大し、生活動作の中で頚椎の屈伸の占める割合が高くなります。

上位頚椎を見ていくと、屈伸の変換椎体が隣接していることも多く、曲げても伸ばしても辛いということにつながります。さらに回旋やスライドしての変位が加わります。整形外科に来るということはは、この一つ一つの構成要素がある臨界点を越えてしまうことになります。

よって一般的な健康体操や運動が適応外になるのです。いわゆる治療が必要であり、体操ではないのです。しかしながら、根本的に姿勢を改善しベースとなる根幹をなす太くしなければ、本当の意味での変化はありません。楽に痛みがなくなったということと、動きやすく活動的になることとは違うのです。

ともすればパフォーマンスという視点と興味が強いため、トレーニング分野と重なります。これが身体の使い方という、身体運動においてはどちらかというとミクロの側面に対して即時的な変化を主体としたこだわりがあります。しかしこれはあくまで身体運動においての感覚刺激レベルであり、学習や定着にはならないのです。自由度と汎用性も課題です。治療のスタンスは与えるです。エクササイズは自らが動く共同になります。そこに意欲と目的意識など、能動的な側面と原則を旨とします。

目線としては分節的な局所ではなく、ブロックとしてのマスの関係性を見ていきます。そして抗重力においての制御の要素も入ってきます。また加速度や慣性などの、リハビリでは反動を使ってはいけないという要素もスポーツでは間違いなく必要不可欠です。
回転モーメントを如何に制御するか?このような新しい視点でのリハビリは必要ですね。

また最後に心理学的なアプローチとして、生活動作における前のめりに対する全身の反応を変化させることができます。これは眼前から押されると後ろに仰け反る、後ずさりするといった自然に出てくる行為を利用します。実は全身の運動連鎖が最も引き出されるのが、この心理的なアプローチ要素の入った施術なのです。
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