頚部と肩甲骨

 頚部はリハビリにおいても実はあまりスポットが当たらない身体部位になります。なぜなら生活動作を中心とする現行のリハビリ事情において、頚部に特化した診断名をもとにオーダーが出ることがほとんどないからです。例え手術をしたとしても、そこには体力や全身のフィットネスをメインとしたプログラムが優先され、退院となります。つまり手術は固定などによる手法が選択されると、直接ダイナミックに動かしたり、徒手療法によって施術することはほとんどないからです。

また外来にて頚部の疾患名にてオーダーが出た場合においても、牽引や物療が中心となり理学療法士が関わらないことの方が多いと思われます。つまり徒手療法の世界では頚部に対する施術はカリキュラムの中に必ず入っては来るものの、現実には取り組む人、観る機会が少なく、なかなか全体的な経験値が上がってこないのです。

特にむち打ち損傷の場合は概ね物理療法に特化してしまうことも多く、就労支援としてのフィットネスや体力をつけなければならない若い世代が多い交通外傷において、既存のリハビリ施設はそのニーズに応えられない面もあります。つまりフィットネスのための施設はあったとしても、それはメディカルフィットネスなどの枠組みであり、理学療法との連携および効果的なプログラムの提供は、医療保険や自賠責保険などの絡みもあり、制度的にも必要だから提供するとはいかない面もあります。

高齢者向けの介護予防のマシーンはあっても、そこに一般整形の人が使ってのとなると、それは医療ではなくフィットネスだろう。ということになりかねません。介護予防は制度に定められており、エビデンスもあるため筋力強化という点にてマシーンが選択されます。

またいきなりマシーンにてトレーニングというよりも、交通外傷の場合にはケアが必要な段階ですので、しかしながら体力今日において転倒予防のためのプログラムと同じにはいきません。
つまり、頚部への理学療法にて軽くなったとしても、それでは就労に向けたICF本来のリハビリの目的には足りないのです。一般整形の方であれば、つまり肩こりや首のコリなどの、むしろ産業理学療法のような立場にある対象こそが、頚部の理学療法の一番の適応となりますが、病院には来ません。頚椎症性の神経根性までになれば病院を受診しますが、整形外科の診察にて経過観察のみで終わることも多々あります。別にそれが良くないいいという論議ではなく、一般的に神経症状のある患者において、リハビリは急性症状や炎症などの治った後の役割と位置づけられているため、オーダーとして回ってこないもしくは、出て来たとしても普段はほとんど観ないカテゴリーの患者層であるので、モードが違うので困るというのが現状なのです。

しかしながら頚椎症やTOSなどは、若い世代にも起きる疾患であり、QOLを著しく低下させます。リハビリというイメージよりも治療というカテゴリーに分類されるため、開業している整骨院やカイロプラクティック、整体などに赴くという選択肢になりがちです。つまり整形外科は投薬注射と診断という役割であり、そこに物療を提供するというスタンスになります。海外であればPTがダイレクトアクセスができる社会的な背景がありますので、直接クリニックに行くというケースもあるでしょう。またそこにしっかりとした医師との連携などの信頼関係や制度における担保があるので、スムーズな連携ができるものと思われます。然し乍らちまたの日本の整体などにおいては、制度上は合法ではあるものの、医療ベースとは程遠い存在であり、つまり教育や資格、学術や研究などの医療従事者としてあるべき世界のスタンダードに乗ってこない、独自路線だからです。本当の意味での個人的な関係構築にて成り立つしかないのです。しかしながら、それは特異な例となり文化や制度になりません。つまり日本全体を考えた時に、社会制度における更新につながらないのです。

何れにせよ頚部の機能的な視点は、入院や介護においては生活動作、基本的動作という視点にて見ることが多くなります。寝返りや立ち上がり動作において、頚部の立ち直り反応は大切です。しかしながら、まだ働き盛りの人達においても、首の愁訴はあるわけで、生活できないわけではないものの、それなりに解決したいものです。

スマホ症候群や姿勢障害などは、一般社会において最もホットな話題であって関心ごとです。スマホ巻き肩としてニュースゼロにて桐谷美玲さんがモデルで紹介されていました。

https://twitter.com/ntvnewszero

スマホ📱巻き肩の問題は頚部が優先的に屈曲してしまうということです。脊椎は24個の骨にて形成されており25分節の関節を有しています。満遍なく機能することが偏ったメカニカルストレスを軽減する手段となりますが、座位での頚部屈曲は、往々として過度な屈曲となるわけです。座っているとには背もたれにもたれかかるので、腰椎や胸椎も屈曲位になりがちです。骨盤も後傾しますよね。問題は全体的に屈曲するのは仕方がないことですが、それがスマホ操作においては、割合として頚椎に過度な屈曲が強要されることです。さらに肩甲骨が挙上位となりやすく、猫背を助長し頭頸部が前方位になることもあります。

この頭頸部前方位に大きく関わっている筋肉が、胸鎖乳突筋になります。この筋肉は不思議な作用を有しており、本来は脊柱や姿勢に関わる肩周り、頚椎に着目して修正しようとします。例えば壁に両手肘を広げて胸を開くなどのエクササイズなストレッチです。しかしながら身体の解剖学的な位置関係を修正するというアプローチが、必ずしも功をそうする訳ではなく、その姿勢イメージを作り上げているのは筋肉なのです。

そして特に影響が強く出ているのが普段はあまり意識しない胸鎖乳突筋なのです。

この筋肉は乳様突起から鎖骨に付着しており、横から見ると頚椎を横切っているように走行しています。

この筋肉は頭部と鎖骨の位置関係を規定しており、いわゆる2関節筋なのです。2関節筋といってもひじょうに不安定な状況に置かれており、そもそも鎖骨は胸郭と隣接していることにより、その動態に大きく影響を受け、乳様突起においても頭部の屈伸や前方位によりベクトルが変化します。そして下顎の後退などによっても筋緊張が変容します。つまり姿勢を良くするという過程において、顎を引くという動作そのものが多様な隣接間の連鎖生を網羅しきれないのです。つまり胸郭や頭頸部など姿勢のあらゆる側面を含めて位置関係を修正しなければ、胸鎖乳突筋の筋緊張の正常化は果たせないのです。それも関節の変位という副運動レベルのモビリティへと深化させる必要があります。しかしながら、筋緊張の調整においては、その単独の筋肉の調整ができれば身体イメージそのものの変容とともに、身体全体の運動連鎖が修正される方向で変化してくるのです。

この胸鎖乳突筋は過緊張していては、当然アンバランスを生むのですが、反面、低緊張においても頭頸部の位置覚ともいうべきポジショニングが不安定となり、例えば過剰な肩甲骨の挙上や、骨盤輪の閉鎖力の欠如につながります。亀のように首をすぼめる作用が働き、頭痛につながることもあります。

その他、頚部の筋は長期にわたる、慢性的な緊張や廃用を強いられると、横突起の圧痛、椎間関節部の不整合による圧痛、椎弓に張り付いたように硬くなった頚部筋群など、いわゆる軟部組織の変性が激しくなります。これらは運動連鎖やアライメント、さらには関節運動学的なアプローチも有効ではあるものの、今ひとつ決定打にはなり得ません。むしろ筋肉そのものの栄養状態を回復させ、筋肉のリカバリーこそが必要となります。
頭板状筋や頭半棘筋、頸板状筋や頸半棘筋、頸最長筋などはもちろんのこと、一つ一つの筋肉や付着部の緊張を精査する必要があります。リカバリーはいわゆる筋緊張のレベルから、さらに回復の時間が必要となります。緩んで血行が良くなりという過程が一瞬にして起きるわけではなく、さらに筋緊張の快復と運動イメージの再構築に至る過程を踏んで、初めて正常化への道を辿り、使える筋肉になって来ます。

椎前筋の作用も不可欠であり、大腰筋と同じく身体軸の形成に寄与しています。身体軸とは相拮抗する筋肉の作用の釣り合いのもとに、身体表象の中で醸成されます。それは概ね筋緊張のバランスによって成り立っており、そこに骨組みが抗重力下での床半力、もしくは正中重力線との位置関係によって、モーメントを発生させ、時に変形などによって適応します。特に矢状面をまたがる2関節筋よ役割は多大であり、胸鎖乳突筋はその一端を担っているということです。
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