痛みのセミナー2報告

年末の差し迫った12月27日日曜日、専門学校社会医療技術学院をお借りしての
疼痛の評価とその臨床的意義
~生理学・脳神経科学・運動連鎖から痛みを解き明かす~PART2
を開催させていただきました。



タイムスケジュールは以下の通りです。
10:30~12:00 『疼痛閾値の診断・評価方法とその意義』
~疼痛閾値の評価手順と運動制御との関係について~
塩澤伸一郎 (日本リハビリテーション振興会・専門学校社会医学技術学院 教員)

13:00~14:30 『CRPSのpitfall -鑑別を要する腱鞘炎由来のStiff hand-』
阿部幸一郎(東京手の外科・スポーツ医学研究所.作業療法士.認定ハンドセラピスト.
HAND maintenance studio(代表))

14:45~16:15 『症例報告』スポーツ障害における痛みの機序と考え方
山本尚司 (一般社団法人フィジオ運動連鎖アプローチ協会代表)

阿部先生は私にとっては慈恵医大時代からの先輩であり25年来の、そして塩沢先生は相模原協同病院時代からこれまた20年来のおつきあいになります。そのそれぞれの突き詰めた臨床および研究ということだけではなく、その生き方と矜持について大変刺激を受けました。それぞれが認めあい、そしてリスペクトしあえる関係性が、20年の時を超えてコラボという形で実現できることに改めて感謝ですね。

内容についてですが午前中は塩沢先生からの講義です。
生理学について突き詰めてきたその結晶の一部を示してただきましたが、このような痛みと生理学そして理学療法における臨床という観点から合計30回は話ができるというほどの蓄積をもっての一コマでした。活動背景が世界であり、世界のあらゆる研究室とつながりをもって探求し、そして作り上げたネットワークはにわかでは到底およぼもつかない領域であり、さすがだと思わされます。全く私とは違う山を登ってそして、やすやすとは届かないところにいるんだなということがわかります。
テーマを三つに分けて講義をいただきました。
①疼痛の評価
②筋骨格系の疼痛と疼痛閾値
③疼痛閾値と運動

疼痛の評価としては、まずはオーソドックスな知識のおさらいです。急性か慢性かといった病歴についての確認ですね。そして疲労という視点、炎症という視点、これらを総合的に考慮しながら現在の軟部組織の状態について推測し、そして臨床における方針をたてていくことになります。痛みについては安静時・運動時・圧痛などの質的な病態についても明らかにしていきます。

疼痛閾値というのは変動するものであり、主観的な表象であったりまします。しかしながら定量的に絶対値としての評価とともに主観的な自覚的強度についてのすり合わせが理想となります。

今回紹介された評価しようとしては、von freyによる疼痛の評価となります。作業療法のなかでは触圧覚の検査として用いられるとのことですが、塩沢先生によるとこの検査において痛みにフォーカスをあてて実施するとのことです。フィラメントを対象部位にあてて疼痛の有無を答えてもらうというものです。

そして最も推奨していたものとしては、PPT:Pressure Pain Thresholdです。圧を加えて痛みの閾値を測定するということですね。単位はPa表示です。なんでもソメディックという海外の会社の製品のようでアルゴメーターという商品名になります。日本ではバイオリサーチセンターという会社が輸入元として取り扱っているようで定価は50万円だそうです。

痛みの伝導路は脊髄から視床への経路になります。Aδ繊維は脊髄後角から入り対側に交差して上行します。疼痛発生は抹消の組織であったりするわけですが、痛みの自覚は間違いなく脳内で表象されているわけで、それが伝導路を経由しているわけです。そこに生理学的な機序が必ず働いているわけで、最終的には自覚的な痛みの訴えとしては脳内の可逆的な変化などによって閾値が変わってくると言えます。

今回、興味深い研究知見の紹介がありましたが、膝OAに患者において膝関節そのものが疼痛閾値が低下しているという現象はなんとなくそうだろうと納得しますが、実際には膝以外の前腕においても疼痛閾値が低下しているということでした。別に前腕に特化したというわけではなく、研究上測定した部位が前腕であったということです。このような波及するような現象をスプレッティング(Spreading)拡散する、といいます。
結論としては筋骨格系疼痛が神経の活性化を変化させ(疼痛閾値を低下)、患部外の広範囲におよぶということです(Skou2013)。術後変形性膝関節症の特性として術後TKA後にも痛みが残存し(10~30%)スプレッティングもしかりです。痛みの原因が取り除かれているにもかかわらず、痛みは残存するということにおいては、軟骨の痛みだけではなく術後の侵襲性における痛みもあるので、このあたりの論理展開が患部から全ての痛みが取り除かれているにもかかわらずという論理展開には少し疑問が残るところではありました。評価はPPTによって実施されているので、関節周囲の軟部組織ということになります。OAの痛みの原因が軟骨だけではなく、ストレスのかかる軟部組織が全ての対象になるはずです。いずれにせよ手術をして即痛みが解決するわけではないということでもあり、軽減することは間違いないということでもあります。またTKAのほうが連続した圧刺激において痛みが増強するということだそうです。これは手術ということにおける何かが影響しているということでしょうか?つまり心理的にナイーブになっているなど、患部においては意識的にも確かに気になりますよね。臨床においてはデーターへの解釈はあらゆる要因を加味して考える必要があります。

このように疼痛閾値を評価することで、手術前後に影響を与えることを考えるが明らかになっています。よって、疼痛閾値が低下している段階で手術をするということは術後の経過に大きく影響を及ぼすことになります。よってレントゲンなどの所見だけではなくこのような疼痛閾値を改善することで、さらに術後成績を向上させることができることが考えられるのです。このなかで評価指標としてPPTは有意な指標である(p<0.001)ことが研究されています(kuni2015)。

患者においても痛覚過敏から、さらに非侵襲性の刺激に対しても痛みを感じるアロディニアに至ることもあります。アロディニアも静的と動的があるようで、静的にはC繊維・Aδ繊維が、また動的にはAβ繊維が関係しています。

難治性の痛みには繊維性筋痛症がありますが、疼痛閾値と筋力発揮には正の相関があることも研究データーとして発表されています。

痛みの生理学的な要因としてNGF(nerve growth factor; 神経成長因子)が考えられるとのことです。脊髄の後核にNGFを投与すると痛みの閾値が低下することが実験結果により明らかにされています。つまりは痛みの要因として脊髄レベルの関与が考えられるということです。

錯覚が疼痛閾値を変えることも多数の報告がされており、このことからも大脳皮質の関係が考えられます。このように痛みの要因は抹消ー脊髄ー脳という多角的な視点にて考えなければいけない。ミラーセラピーなどがある意味その効果を応用しているセラピーであるといえます。

疼痛閾値の改善のための方法は多岐に渡します。徒手療法も物理療法も心理療法もあらゆるモダリティーにてアプローチできます。だから心理社会モデルとして慢性疼痛を考えなければいけないのでしょう。
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