腸腰筋と歩行

腸腰筋と歩行

腸腰筋


腸腰筋は不思議な筋肉です。おそらくその役割とメカニズムはまだ明らかにされていないのでしょう。
リハビリの立場からいうと腸腰筋はなんのためにあるのかわからない筋肉でした。何故ならこの筋を鍛えて膝が高く強く挙がるようになることの意義がよくわからないからです。運動学では確かに働きは股関節の屈曲です。はたしてヒトが動くときにはどのように働いているのか?そこが問題です。
腰痛ではしばらく腸腰筋が悪玉としてまず問題視されます。何故なら腰痛とは過剰に前彎が強くなることによる・・・と代々言われてきたからです。確かに腸腰筋をストレッチすると腰痛が治る人がいます。しかし、本当に腸腰筋の短縮が伸ばされることによって腰痛が軽減したのでしょうか?答えは否です。股関節を伸展させる腸腰筋のストレッチでは外側の筋肉や骨盤帯にも影響を及ぼしています。腸腰筋だけを単独で伸ばすことはできないのです。この腸腰筋のうち大腰筋が着目されてきたのは、偶然からです。まずは日本であった東京世界選手権での優秀なスプリンターの腹部CTに背骨の脇に丸く太い筋肉の断面が映し出されていたのです。いったいこれは何なんだ?それが大腰筋だったのです。また茨城県のある街で大規模な介護予防のモデルとなったところがあるのですが、ADL自立度が高い、つまりお元気な高齢者ほど大腰筋が太かったとのことです。ではどうしたら大腰筋は太くなるのか?股関節を屈曲抵抗運動をする日常はほとんどありません。別段しっかり使わなくてもなんとなりそうな印象さえももちます。しかし、なぜだか太いのです。つまり腸腰筋を解剖学や運動学的な解釈である股関節の屈曲と腰椎の前彎という働きのイメージを変えなければいけません。他に最も大事な作用があるのです。高齢者のADlの応力の高い方は大腰筋が太いということは、生活の中にその要素があるということです。股関節の屈曲に抵抗が加わるような場面は日常ではほとんど無いのです。実は最も大事な作用は抗重力筋としての働きなのです。踏みしめる文化である日本にとって、腸腰筋を促通する術は、和式トイレや農作業、重いものを持つなどの踏みしめる文化に他ならないのです。腰椎を左右からはさんで重心をつらねいている腸腰筋こそが、柱なのです。柱がなければ耐震強度をぐっと落ちます。柱がなければ壁はひずみ、腰部を覆っている筋肉のベルトも軸がないため不安定となります。では現に腸腰筋が原因の腰痛はないのか?確かにストレッチして股関節伸展位にストレッチして腰痛が楽になることは多々あります。卵と鶏になりますが、結論は腰痛になったから腰部を固定するために腸腰筋が留め金の役割として作用する。その二次的なspasmが継続してしまうのです。本来の支持作用としての役割は忘れてしまいます。見たこともない筋ですから、その必要性は実感できないので、仕方ないですけどね。あとは滑らかな腰椎の動きの誘導という大切な役割もあります。
 しばらく腸骨筋はおいてけぼりをくってしまいました。可哀想ですね~では腸腰筋は何故に二つの筋に分かれる必要があったのか?それには意味があります。腸骨に付着しているので腸骨筋、腰椎に付着しているから大腰筋・・・各々に働いていることは明らかですが、その連動性に妙があるのです。大腰筋は腰椎前彎にも働きますが屈曲にも働きます。また腸骨筋は腸骨の前傾に作用しますが、後傾時にも留め金の役割として働きます。その時は股関節と骨盤の留め金になりますので、大腰筋に本来の作用を促すことができなくなります。つまりあとは廃用性への道をたどりいつのまにか細ーい断面しか持たなくなってしまいます。結果的にあ腰椎のガイドをする筋肉が無いので、腰椎の可動性は低下し支持性も弱くなります。結果的には脊柱はフラットになり、あらゆる不定愁訴を引き起こします。
 歩行時には明らかに骨盤前傾の腰椎前彎が不可欠です。その逆はお世辞にも機能的な歩行にはみえません。まずは骨盤の腸骨の前傾作用なくして大腰筋の作用につながらないのです。腸骨筋が呼び水になって腸骨を前傾方向に作用し結果的にあ腰椎は前彎を保ったまま大腰筋は伸長されて、立脚後期からスイングへの入りを促すのです。ヒールコンタクトは踵からですのでその時に骨盤を触診していると腸骨が前方に誘導されうような力を感じなければ、円滑な歩行は妨げられてしまいます。たとえ骨盤後傾位であっても同じです。和風歩行では骨盤は後傾位ですが、しっかりと腸腰筋が作用するべく骨盤の動きが触診できます。腸骨筋から大腰筋へのリレー、そして腸腰金が背骨のサポートとして機能することにより、より安定性と機能性が引き出されるのです。特に正中感覚に腸腰筋の作用がはかりしれなく、というよりほぼ必須条件です。腸腰筋が活性化しているなかではじめてバランスの良い動きができるのです。では鍛えて短縮させればいいのか?と言われる方もいると思いますが、腰腹部のバランスや骨盤のアライメントも含めて条件がそろって初めて抗重力筋としての作用をまっとうすることができるのです。
永遠のテーマとなることでしょう。
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コメント:4

ありがとうございます。

TAICHI
わかりやすい説明ありがとうございます。
腸腰筋のそれぞれの働きがよくわかりました。

ひとつ質問があります。
文献を読んだときに仙腸関節の安定性ということで寛骨が後傾+仙骨がうなずいた状態がロックされ閉鎖位になり安定すると書いてありました。。。
やはり前傾位のほうが安定するのでしょうか?
仙腸関節の安定性はどうとらえたらよろしいでしょうか?

仙腸関節の安定性

山本尚司
仙腸関節のclose pack position 寛骨が後傾+仙骨がうなずいた状態ですが、これは関節がRockした状態であり、重たいものを持ったり踏んばったり、骨性の支持としては有用です。しかしながら歩行や走行などの動的な場面では、骨盤はやや前傾で、そのなかで寛骨も仙骨もニュートラルな状態である必要があります。骨性の支持はあくまでstaticな安定性であり、日常化するとWPIのように弊害がクローズアップされてきます。

大腰筋

吉田 大地
勉強会の中でおっしゃられたものの解答ですね。荷物を持つ、持ち上げるということは、体幹伸展方向ののモーメントが入ってくるので遠心性の収縮が起こっているイメージはできます。ですが、和式トイレなど、その他結果的に踏みしめることに繋がるというのはなぜでしょうか?説明されているとは思いますがすいません。

大腰筋

山本尚司
腰椎の安定性そのものに大腰筋が働いていますので遠心性にも求心性にも働きます。紡錘状の筋である大腰筋は脊柱起立筋と同じく、内圧を高めることで柱としての作用を持ちます。踏んばることそのものが既に大腰筋への刺激となるのです。

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