胸鎖乳突筋

胸鎖乳突筋の役割とは?



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 運動連鎖道場in浦佐(南魚沼)も残すところあと一回となりました。

テーマは頚部と肩甲帯です。運動連鎖アプローチ®では、上部平衡系として頭頸部と肩甲帯を考えています。つまり、肩関節としての肩甲帯という視点だけではなく、姿勢制御としての肩甲帯です。何故にこのような考え方に至ったかというと、ロコモティブシンドロームや廃用症候群などのシンドロームに対しては、疾患に対するリハビリではなく、身体機能全てを網羅する原理原則が不可欠なのです。つまり身体機能の根幹とは何か?と考えたときに抗重力下での姿勢制御というのは、絶対不可欠なものなのです。あらゆる治療法やトレーニング方法がある中で、抗重力下での姿勢制御が必要ないという人は誰もいないでしょう。

ということは、身体全てのパーツは姿勢制御における何らかの作用を有しているわけであり、その観点から統合するための理論体系が必要となります。

抗重力といえば下肢体幹をイメージすることも多いと思いますが、身体は全ては運動連鎖です。運動学的なつながりだけでなく、力学的なそして物理的な力の下に統制されているのです。つまりはキネマティックとキネティック!この両面からの視点にたったときに、全体と部分の統合が完成するのです。

肩甲帯もそういった意味において、姿勢制御のなかでどのような役割を果たしているかを明らかにした上でアプローチすることで、全体の統合を図ることができるのです。

⒈胸鎖乳突筋は主たる働き
 胸鎖乳突筋の作用は一側性に働く場合は、頸部の回旋を伴う屈曲であり、両側に働く場合は頭部の前方への水平移動における固定となります。head forward においては乳様突起の停止部が過緊張している場合と、逆に弛緩しているかのように筋緊張が低下している場合があります。同じく顎があがっているような姿勢なのですが、緊張して硬くなっている場合は固定に働いており、緩んでいる場合は逆に背部の筋や靭帯などにもたれかかっているようなストラテジーといえます。どちらも頭頸部が前方位にあってもどうしてこのような差がみられるのでしょうか?

 つまり全体的に円背で膝も緩んで脱力している姿勢の結果、頭頸部が適応しているならば胸鎖乳突筋は緊張する必要がなくなる。しかしながら頭頸部の前方位において、末梢の身体部位が屈曲ではなく伸展要素が入っているならば、頭頸部の前方位は拮抗していることになり抵抗運動となる。その時に本来は頭頸部においては直立であるべきモーメントがかかっているにもかかわらず、前方位に保持するということは前方から抵抗を加えられているようなものです。つまりはそこには筋緊張が必要であり、isometricに保持するための機構が働くということです。また単純に上位頚椎にて過伸展位にて保持しながら頭を保持することにおいても脱力できます。頭頸部のstabilityが確保できないため、外力に対しては非常に危険であり脆弱であるといえます。

簡単に再現しますと、円背にしておいて頭を前方位にします。このまま脱力して立つ、または座っていると胸鎖乳突筋は緩んだままになります。しかしながら、この姿勢から背骨を直立に伸展させると胸鎖乳突筋が緊張します。つまり脊柱が伸展するということは、頭部は胴体の真ん中に乗らなければいけないのです。それが頭頸部のみが前方位にあると抵抗運動になってしまい結果的に筋緊張が高くなるということです。

2. 胸鎖乳突筋の左右差について考えるこの胸鎖乳突筋には左右差があります。つまり右側が過緊張しているとしたら左側は正常か特に問題ない場合があります。弛緩している場合においても多いのは一側性です。一側性ということは頸部の回旋がおきており、その回旋位にあることが背景に考えられます。つまりいつも左側に頭頸部が傾いているなど、その人の姿勢の偏移があるということです。
 つまり頸部の回旋位ということは矢状面においては前後の位相差がでるということです。右回旋であれば左側からみた頭頸部は前方位に、左回旋であれば右側からみた頭頸部が前方位になりやすいということです。もちろんストラテジーによっては回旋側の緊張が高くなることも考えられます。

⒊ 胸鎖乳突筋の停止部・筋腹部・起始部の緊張胸鎖乳突筋の緊張は主に乳様突起部で多くみられます。それも後部線維で顕著であり、場合によって深層の線維が硬くなって収縮力が落ちている場合もあります。私の胸鎖乳突筋は起始部において硬くなっていますね(笑)。この起始部の緊張が高くなっているパターンは、実はクライアントや患者さんにおいてはみたことがありません。ということは私のパターンは特殊?私の場合は下顎角が胸鎖乳突筋に当たって痛みが生じていたこともあり、いつのまにか停止部は脱力することになっているためと思われます。その結果緊張の配分を起始部にもってきたのでしょう。結果、姿勢は頭頸部の前方位を伴うsway backとなっています。最近はボディーワークを実践することで、かなり姿勢は改善しているように思いますが、まだその名残は残っているようですね。ぐっと噛み込んで頑張る人は停止部が緊張しそうです。いずれにせよ、その緊張の分布は人によって様々であり、その動体について評価し原因を特定しながら変化をみながら推し進めていく必要があります。

⒋ 両側に弛緩しているパターン
 胸鎖乳突筋が弛緩している場合も、両側というのは珍しいパターンです。しかしながら下顎が前方位にある場合には、支持は後頸部になり頸部前方部分のはたらきは低下することがあります。このような場合には僧帽筋や板状筋にて支持しており、必然的に深層のインナーである後頭下筋の機能は低下します。よって顎の開閉や眼球運動において頸部の動的な動きが伴うことになり、結果頸部や肩の凝りが生じてしまいます。そして頸部全体のstabilityの欠如を招くことにもなり、不安定な頸部となってしまいます。

5.頸部回旋と頸部伸展筋群との関係
 胸鎖乳突筋は頸部回旋と屈曲においては働きますが、その結果頚椎のアライメントは崩れてしまいます。崩れるという表現はわかりにくいですが、つまりは頚椎とは前弯を有しているわけであり、その前弯のアライメントが崩れるということです。屈曲運動においては椎間関節の関節面が離開することになるからです。離開すると当然支持性と固定性は低下します。その結果、筋肉によって支持するとになりますが頸部は胴体ほど太くはありません。ラグビー選手は太いですけどね。つまりは回旋運動というのは側屈を伴うことにより、ボキットと折れるような力が作用することがあるのです。またスマホ症候群のように常に下を向くような姿勢が多くなると、頸部伸展筋群は低負荷でありながら長時間のじわじわとした負担が強いられることになり、結果的に頚椎背部の深層筋群が慢性疲労に陥り、そしてアウターの筋群が主たる支持となることによりますますインナーは硬くこったまま固まっていきます。収縮弛緩が適切に行われないことによって、廃用機序が働いてくるのです。いずれにせよ頚椎の回旋は難しいです。前弯というアライメントを崩さないで、できるだけ保持することが背骨全体、しいては多裂筋全長にわたっての機能低下につながってくるのです。多裂筋が効かなければ、腹部のstabilityにも影響がでます。つまりは脊椎の安定性があっての腹横筋だからです。腰椎もですが頚椎の前弯の正しいalignmentを保つことは難しいです。当然、胸椎の後弯もしかりです。どこがメインであるかというのは難しいですが、どこのパーツが崩れても全てに影響がでることは明らかです。
 では頚椎の前弯を保持しての回旋をどうするか?つまりは、回旋と対側の頸部伸筋群を効かせることがポイントになります。この時に伸筋群のstability作用が効かなければ、頚椎の配列は容易に崩れてしまいます。つまりは一分節において変位が大きくなるのです。一分節において変位が大きくなると、頚椎の回旋の度に不安定性を助長することになり、その結果その過剰な動きを抑制するために頸部伸筋群の負担が大きくなり、結果的にしこりのような塊となって現れることがあります。まだ筋肉のコリの塊にて制御している場合はいいのですが、そこに完全に軟部組織の防御ネットが効いていない場合があります。こうなると完全にmotor segmentのinstabiltyを増長してしまいます。回旋に伴う一分節の過屈曲や側屈は姿勢制御における重心移動においても影響がでてきます。つまりはsitabilityの悪い頚椎側においては重心移動が大きくでてしまい、前額面における制御全体の低下をもたらすのです。頸部は胴体に比べて直径が細いが故に、そのlatearalityによる偏移の影響が末梢にいくに従い大きく出てくるのです。

⒍ 生活場面での頚椎と頸部筋群の制御テクニッック以上が基礎的な背景となりますが、実際の生活場面にて頚椎の機能障害が助長されるわけです。あらゆる場面にてその動態がみられますが以下の3項目において、その影響がみられます。その対処方法とメカニズムについては項を改めて解説していきたいと思います。
1 腹筋運動と胸鎖乳突筋

2 車の運転と頸部筋群

3 片手に荷物を持つことによる弊害と対策

 
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