「痛みは脳が感じている」

と痛み

 痛みは脳が感じている!このことは随分前からリハビリのなかでは知られてきたことであり、実際に幻肢痛などをみてもその通りである。そのことが専門家だけではなく、いまは一般大衆のなかでも当たり前の認識になりつつある時代となってきた。これは本当にすごいことです。この「痛みと脳」がキーワードとなって大衆の常識となったときには、また治療や理学療法においても大いなるパラダイムシフトが求められてくるであろう。

脳は痛みが感じている!実はこの事実は専門家であったとしても、実感としてわかっているわけではなく、実感できているセラピストは少ないであろう。それは理論的に、学術的にというだけでなく、離床的に痛みの表象に、病理と乖離した現象があるということの実感が伴っている必要があるからである。以下に既存の痛みの機序を列挙し、既存の対処方法と解釈を概説しながら、今のままでも十分に臨床効果が得られているという側面があるということが、
、実は治療家自らの脳の認識を改めて見直す必要があるという問題提起にしていきたい。

⑴メカニカルストレス
 構造的な傾き、捻れ、曲がり、などのメカニカルなストレスによって生じる機能障害。構造的な観点で視覚的にも、圧迫されている、狭小化しているというレントゲンにて確認できることもあって、整形外科分野における痛みにおいては主流となっている概念です。運動器疾患をみるうえにおいても、このメカニカルストレスが起因となっている背景となっていることは少なくなく、実際に感じる痛みの度合いは人それぞれであったとしても、機会的な刺激を削除することが第一要因となる。このような明らかなメカニカルストレスがある場合においては、注射や投薬の効果が得られにくいこともある。特に退行性変性を経ている場合においては、筋肉をほぐしたとしてもその機会的ストレスをリリースすることに直結しないことも多い。いわゆる痛み止めと言われる治療において著効を示す場合においては、神経を通じて周りの筋群がリリースされ、その結果メカニカルストレスが解放されることの機序が働けば改善をみることになる。テーピングやアライメントという考え方に立脚した治療コンセプトは、構造的なバイオメカニクスが理論背景にある。力学的な考え方もこの類に入る。この分野への信頼というか信望者は多く、メカニカルに論理的に展開できる特徴がある。つまり方程式に則って身体を扱えるため、頭で考えたことが当てはまる科学者として研究者としての視点にたてる。ある意味、個別性に不定愁訴としての対応を省くことができるため、ロジックとしては賞賛されがちである。

⑵トリガーポイントも脳の時代へ・・・
 このトリガーポイントも俄かに世間に爆発的に浸透しつつある概念である。トリガーポイントそのもの昔から存在しており、鍼灸そのものがトリガーポイントの生理学的な視点にてアプローチするグループが存在する。先だっての肩の痛みはゴーストだというような話で「あさいち」にて放送されていました。つまり本当は肩の痛みでないのに、トリガーポイントそのものの痛みが脳に常に情報を送ることによって、脳が誤報として肩の痛みだと解釈してしまうというものである。本来は放散痛としての抹消の痺れは実は脳神経ではなく、トリガーポイントが原因だったというロジックだったのが、最近では元来肩こりがあり、肩そのものに痛みを感じていたものが、別部位のトリガーポイントからの情報も脳に双方向から送られていくと、トリガーポイントの痛みを肩の痛みだと感じてしまうという解説でした。これはトリガーポイントの放散痛としての領域に肩があるということではなく、トリガーポイントそのものの放散痛は別にあるはずなのに、脳は肩の痛みと認識することになるのです。テレビでは被験者の上腕三頭筋のトリガーポイントを押すと逆側の肩の痛みを訴えていました。多少オーバーな表現にも見えましたが、あながち事実であってもおかしくないであろうと思われます。いずれにせよ、痛みの原因が極端な話し、トリガーポイントにてすべて解決するかのような触れ込みが見られる中で、そのトリガーポイントが何故起きたのかという機序に触れなければ理学療法としては片手落ちでしょう。
 トリガーポイントの必発部位としては顔面と臀部そして肩になります。放散痛がでやすいところであり、実際にかなり楽になります。しかしながら、この楽になるということの機序を理学療法のベースとしてしまうと、少し専門性としてに方向性がずれてしまいます。動くことの効果がさらに解明されつつあり、その価値と認識が大衆において高まっている中において、その手技を手段として使うのもはいいとしても、目的となってしまっては本末転倒です。また脳卒中や痛いの閾値の低い人に同じようなトリガーポイントに対するアプローチが一般整形外科の患者のように著効をしますかというと、その限りではありません。そもそもの筋緊張の機序が違うわけで、一元化した方法にてすべてを見ようとする視点は今後は戒めなければいけません。

⑶筋緊張と違和感
 さて次に臨床にてよく遭遇する場面を紹介します。幻肢痛などにおいては本当に脳が痛みを司っているのだなと実感しますが、しかしながらアンプタなどの患者における明らかな病態が一般的にも現象として見られるのかどうかというのが疑問となってきます。つまり幻肢痛と普段の腰痛や肩こりと同等に考えられるとは思えないという印象が拭えないからです。運動器と脳血管において、元来全く別物として捉えていたリハビリ業界において、この脳が痛みを司っているという昨今の流れにおそらく旧来の考え方をしている刷りこまれてるセラピストはなかなか馴染まないことでしょう。
⒈筋緊張の分類
 ①安静時の筋緊張:いわゆる硬いという触感によってわかるものです。筋硬度計によってわかる明らかに硬度としての固さになります。肩こりもまさにこの硬さです。この硬さゆえにすべて解すという解釈がなりたちます。硬いものは伸ばして解す!このロジックがすべて通用していればよかったのですが、それが当てはまらないところに臨床の難しさがあります。結果的に筋硬度計によっての臨床展開が進まず、エコーによる臨床が進んでいるのは病態の診断と評価に基づいた治療とアプローチが流れとしてできるからです。そうすると、そのエコーにでてきたその白っぽい画像所見は、エコーによる像による確認と改めて触ることによって再確認というダブルスクリーニングが可能となります。おそらく逆にエコーでの確認がなければ、そこまでその部位への硬さを探索しようとする必然性が高まらなかったかも知れません。そしてその硬さが硬結ということではなく、癒着のような滑走性の欠如として評価できます。治療としては注射によってその隙間が開いて滑走性が改善する様が放送されていました。自覚的にも明らかに動かなかった深層の膜が、動いているのですから間違いなく良くなることでしょう。

 これほどまでにクリアーに所見と治療と現象が一致するとグーの根も出ません。何かしら神がったかオブラートに包んだゴッドハンドとしての価値と意味づけに走る思考は、これはすでに日々進化する医学からさらに遅れて行くことになるでしょう。そしてその治療技術を誇示すればするほど、しようとする思考と考え方は俺が世の中を業界を変えてやるという誇大妄想になり、そして医学として進化の波に取り残されしぼんでいきます。また最初は崇高な理念にて誰もが取り組むのですが、やがてこの技術とこれまでの努力が報われてしかるべきだと考えるようになります。つまり評価と報酬です。自分が基準となり、自分の考え方に自分にやり方にやりたいようにやらしてくれるところが、自分にとっての基準となってしまいます。つまり迎合したり方針に従うではなく、対等の立場として成り立とうと考えるようになるのです。これは病院において、いつも医師の診察が隣り合わせの環境にあって、自分の治療によって治っているという自負が生まれてしまうのです。ともすれば自分のほうが価値がある、世間に必要とされていると・・・それはすでにスクリーニングされて、偶然目の前にきただけであって、自分の力で呼んだわけではないのです。また自分の治療によって治らなかったり、悪くなった人においては自然にこなくなるので、認識として残らないのです。つまり成功体験のみが脳裏にのこって、まさに都合の良い脳が形成されるのです。


  ②動き中の筋緊張:動きのなかの筋緊張とは伸び縮みだと解釈していただければと思います。マッスルボーンということで運動連鎖アプローチ協会においても常々関節運動に伴って必ず筋緊張が変化し、その全長において関節角度と比例していなければいけない。関節は動いているにもかかわらず、筋肉の伸張性や収縮性が伴わなければ、これは関節機能障害を引き起こし、そして何よりも違和感を生じるのです。この違和感を時として痛みと認識するのです、何故ならば違和感の最上級は痛みであることが多いからです。人によっては気分が悪いなどの不快感であったりもします。違和感が生理的にも筋緊張などの機序によって、生体に影響を与えるからです。つまり関節運動と筋肉の伸張性は身体表象とダイレクトに結びついており、それゆえに痛いの解釈には必ずこの関節運動と筋緊張の筋肉の滑走に留意しなければいけないのです。
 痛みへの解釈と考え方は総合的にチームとして取り組まなければいけない課題となっています。いまは一つの一人の専門性だけで何かを解決できる時代ではありません。ともすれば自分一人が特別かのように錯覚するその思考からの脱却こそが、痛みのある患者に対する最大の恩恵なのです。つまりチームとして理学療法士が何を担わなければいけないか?という原理原則が伴っていなければいけません。そこを忘れて新しい考え方という知見を披露するのは結構ですが、あたかもそれを知らなければいけないかのような論法はいけません。それこそ何か一つ珍しいおもちゃを手にいれたからと言って、ひけらかして誇示している子供のようです。つまり、理学療法士が理学療法士である所以として、関節運動に伴う筋緊張の変化をみることが身体表象を主観的な記述ではなく、ダイレクトに運動器からの派生として身体表象を類推するためのツールとなるのです。これこそがチームとして痛みのメンバーとして加わった時に、理学療法士として貢献できる貴重な専門性となるのです。

⑷心理と痛み
 心理という点では、教育的なアプローチということが欠かせないキーワードとなります。いわゆる恐怖感・不安感などの漠然とした気持ちになります。つまり知らないゆえに無駄に怖がってしまう、かばって動かなくなってしまうということです。このあたりは正しい知識と方法をしっかりと教育する必要が有ります。理学療法士の真骨頂かもしれません。しかしながら、これは個別ではなく学習の場としての設定が必要です、施術をうけながら説明を聞いて理解して学ぶということは、患者さんにとって至難の技となります。つまりは、学校で勉強するような学ぶモードの時に、レクチャーしなければいけないのです。方法論の問題であり、治療場面にて全てを網羅しようとすることが難しいのです。よって知っているやっていることばかりなのですが、そのツールをいかに有効に伝えていくか?伝わるためにはどうするか?ということが大切なのです。NHKスペシャルにおいては、腰痛について動かすと怖いということの意識を実は正しく理解して、そして動かしていいだということを伝えることに力点をおいていました。つまり腰痛とは反らしてはいけないのではないか?という一種の概念です。できないのではないか?できないとあきらめている・・そんな腰痛がある、活動制限・・・それが腰痛であるからなのか?本当にそうなのか?そのことを問いかけてみる必要があるようです。よって単に腰痛のための対処方法ではなく、できることを増やしていくことによる自信によって、腰痛の捉え方がその人のなかで変わってくるということなのです。そうすると特別にインナーマッスルについての観点ではなく、実際に改善していくケースが多々あることがわかります。専門家ならではということで筋肉の使い方は当然ですが、世間が進んでいくなかでその自分のツールというなかにおいて活動と参加という視点は医療従事者としてはむしろ扱いやすいルートであるはずです。特にICFの概念を最も使いこなせる職業としてリハビリ専門職は最適であり、そのモードにいち早く変わることが不可欠なのです。

⑸認知行動療法
 うつ病などの心理的な視点になると、受け取り方や行動を変えることで、気持ちが変わってくる・・というロジックになります。受け取り方や気持ちを変えることで、行動が変わってくるという見方もできます。認知行動療法やCognitive Functional theraoyがオーストラリアにおいても盛んなようで、NHKスペシャルでもシドニー大学かで実際に腰痛の患者さんにおいて、いわゆる整形外科的な視点にて改善しなかった群において、認知行動療法が著効を示している取り組みが紹介されていました。つまりは運動器としての見方、筋力、スタビリティー、トリガーポイントや筋膜などの視点にて改善が芳しくない事例は必ずあるわけで、そのような視座を持つことで自分の提供していることが一つの成功事例を、過度に誇張することの危険性を低下させてくれます。
 応用行動分析学という分野も日本では紹介されており、理学療法においても散見されます、また健康運動指導士の研修にいても特にDMの患者さんにおいてどのように取り組むことの報酬を価値を見出すかということの学術的な講座が盛んです。結局は現場にて一人一人が取り組むことの価値を高めなければ、何もなし得ないということの視座となります。
私もまだ認知行動療法、応用行動分析学などの違いをはっきりと認識しているわけではありませんが、何かしら考え方や行動様式や習慣を変えること、その物事の視点を少し角度を変えることで考え方が変わること・・・つまりは人の認識という脳の営みのメカニズムに対して、いかに効果的な変化をもたらすことができるかが行動へとつながるということなのです。気の持ちようとか病は気からという言い伝えが、まさに医学とならんとしている時代なのです。なんでも科学やサイエンスというから、人間へと主体が移り変わっているということなのでしょう。


以上の概要について、特に運動連鎖の視座から私、山本がレクチャーする予定です。
乞うご期待!!


[痛みの運動連鎖セミナー1]
痛みを理解し効果的な治療に結びつけるために


            「筋骨格系疼痛」

    〜生理学・神経生理学・運動連鎖から痛みを解き明かす〜

筋骨格系疼痛とは
筋と骨格に関する疼痛,とういことになります.
すなわち症状や診断名を指しているのではなく
筋と骨格由来の疼痛としてとらえます.
ここで注意が必要なことは,筋と骨格由来の疼痛とは言え
神経系を無視している訳ではありません.
神経系を介して脳で疼痛を認知していること
感覚神経が疼痛を知覚していることは間違いありません.(塩沢伸一郎より)

日時:平成27年8月30日(日) 10:00〜16:30
会場: 【貸会議室 内海】4F教室 JR水道橋駅西口 徒歩5分(東京ドーム最寄駅)
〒101-0061東京都千代田区三崎町3-6-15
http://www.kaigishitsu.co.jp/company/access.html

タイムスケジュール 
10:00〜11:00 「筋痛のメカニズム〜講義〜」
  水村和枝   (中部大学生命健康科学部 理学療法学科 教授)
11:00〜12:00 「筋骨格系疼痛が運動へ与える影響〜講義〜」 
  塩澤伸一郎  (日本リハビリテーション振興会・専門学校社会医学技術学院 教員) 
 13:00〜14:20 「慢性疼痛に対するニューロリハビリテーション〜講義〜」
    信迫悟志   (畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 特任助教)
14:30〜15:50  「疼痛に対する運動連鎖アプローチの基本」
    山本尚司   (一般社団法人フィジオ運動連鎖アプローチ協会代表)

16:00〜ディスカッション 16:30 閉会 

参加費(税込):10,000円  学生3,000円
【申し込み先】 PKAA事務局 担当 薮下 享江(やぶした ゆきえ)
        undourensaapproach@gmail.com
       氏名(ふりがな)・経験年数・職業・所属・を明記。
 件名に『痛みの運動連鎖セミナーⅠ』としてください。
・携帯やフリーアドレスの場合、メールがブロックされる場合や迷惑メールになってしまう場合があります。必ずセキュリティーを確認した上でお申込みください。
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