生活動作と起居動作

第8回長野運動連鎖アプローチ研修会報告!

5/9-10
土日に長野県佐久穂町にあります千曲病院にて恒例の運動連鎖アプローチ研修会が開催されました。千曲病院は町立で、地域密着の病院です。佐久穂町はとてものどかな町です。上越新幹線も通っていて、軽井沢からも車で40分余りと交通の便も悪くありません。

今回のテーマは生活動作からみた姿勢制御アプローチです。
生活動作は日常生活動作とほぼ同義なのですが、最近は生活リハなどの造語も出てきています。ADLが基本的動作能力のイメージがあるのに対して、生活動作はより具体的な生活場面を表している印象があります。つまりリハビリの意味合いが、時代とともに移り変わり、リハビリテーションがより地域や在宅に帰すという考え方にシフトしていったことが背景にあります。よって障害分類がICIDHにおいては、日常生活動作は基本的動作能力の範疇を超えることはありませんでしたが、実際の生活場面を想定した理念に変わる過程において、生活動作という新たな定義が生まれてきたのです。
そこで従来の機能障害や基本的動作能力に対するリハビリと対比するように、生活動リハビリなる分野が誕生してきたのです。

では機能障害とアクティビティー、生活動作との定義の違いは何なのでしょうか?どのような障害であっても、先ず疾病があり機能障害がベースになります。もちろん診断名のつかないような機能障害もあります。本来はそこから能力障害や社会的不利という直列なつながりがありました。しかしながらICFに国際障害者分類が定義されるなかで、脳や関節の部位に対するアプローチから、生活場面をそのままリハビリとする潮流になってきました。この流れは脳の可塑性を某標とするファシリテーションテクニックや、関節運動学的なアプローチにおける徒手療法などの、治療というイメージからややもすると医学的な専門知識よりも生活場面でのコーディネーター的な役割へのシフトが求められてくる流れになりました。つまりは病院や診察室での診療という医学的な治療から、ケアマネのようなマネージャーとしての配置転換です。これほとまでに医療従事者で大きくパラダイム転換が求められている職種はないかもしれません。昨今では中枢神経疾患においてはニューロリハビリという新たな言葉が台頭してきているように、時代とともに刷新されてくるものなのです。運動器においてはシンドロームとして、廃用症候群から生活不活発病へ、運動器疾患からロコモティブシンドロームへの包括的な考え方にシフトしています。これはインペアメントではなくデイズアビリティの範疇になってきます。つまりは診断名の由来が、機能障害から能力障害へと移っているのです。 生活動作にて文献検索すると、実はほとんど何も出てきません。つまりはこの生活動作や、生活リハという言葉は、時代の世相を反映した新たな造語なのです。 生活動作とはどのような定義が望ましいのか? 生活動作は、ボトムアップの考え方では、機能障害をベースとして、アクティビティと基本的動作能力の上に積みあがってくる階層性の頂点になります。つまりは、単に道具を持つなどの行為はアクティビティとなり、生活の中の道具を持つとなると、それは何のためにどうしてその道具でなければいけないのか? つまりはヤカンは持つためにあるのではなく、お湯を注ぐためにあるわけで、そのお湯も料理のためか?お茶のためか?はたまたカップヌードルか?どれぐらいをどの位置まで入れるのか?  その行程もさることながら、目的と意志が入ってきます。材料は事前に買い物をして揃えておかなければなりません。人数分を考えて、味付けや調味料もです。生活動作とは、点でのactivityではなくlifeなのです。 今回の長野での研修会は生活動作の想定まではできませんが、基本的動作能力を理学療法士の視点にてどのように捉えるか?考えるか?評価するか?ということに力点をおきました。 ①頸部の回旋と立ち直り反応  頸部の回旋は成長発達においても、すべての動作においての初動にあたります。頸部の回旋にともない左右の足関節の底背屈の動態をみます。すると頸部の回旋にともなって左右の足関節の底背屈に左右差がでてきます。つまり左回旋にて左足関節がtightnessになるとすると、それは常日ごろから向く方向と荷重側が重なっており、その組み合わせで荷重していることを示しています。その時に頸部の分節的な回旋を評価して、頚椎レベルでの回旋変位についても評価しておくといいでしょう。この頚椎の回旋が肩甲骨や膝の回旋を調整することで、特に頚椎にダイレクトにアプローチしなくても変位が改善されることを経験します。つまりは、頚椎の回旋は身体末梢部の回旋変位の最終的な補正を担っていると言えます。視線は常に正面を向いていることを強制されるわけで、身体の変位がどのようであっても、最終的には視線にて修正されるのかもしれません。やはり行為の優先度としては視線や頭頸部の位置であるということでしょう。よって頚椎の回旋変位はあらゆる末梢部との連鎖性が存在し、そのために運動連鎖アプローチとして頚椎の特性を規定できるのです。特に効果的であるのは頚椎と肩甲骨、頚椎と膝関節の連鎖が著効を示すことが多いように感じました。 ②寝返り:上半身回旋  両手を胸の前で組んで、左右回旋させると本来は両上肢が保護伸展反応やパラシュート反応がでるものが抑制されます。よって、上肢ではなく直接肩甲骨の動きや脊柱・胸郭の動きがメインとなります。特に肩甲骨の動きは大事であり、この肩甲骨の外転運動において、挙上が先行した動態がみられるとマイナスになります。あくまで外転運動、それも前鋸筋や菱形筋がメインでなければいけません。また上部胸郭および胸椎の後弯があまりにも強調されると、これも上半身の回旋が阻害されます。 ③寝返り:下半身の回旋  骨盤および下肢優先の寝返りになります。寝返りには概ね三つのパターンがあり、上半身・下半身・そして一体型があります。下半身の場合には骨盤および下肢の屈曲がみられますが、この動きには本当に多様な動態がみられます。一般的には膝の屈曲と骨盤の前方回旋によって下半身先導型の寝返りとなるのですが、その時の腰椎が伸展または屈曲傾向に分けられます。つまりは、伸展については上側になった体幹が伸長されることで、膜系のテンションが生じることによってぐるっと回るのです。その時に上肢を挙上しておくとさらに膜系のテンションが伸長されて、このパターンの寝返りをアシストすることができます。このような寝返りは脊損などで有効に作用すると考えられます。脊損の場合には下肢誘導ではありませんが、上肢体幹からの反動および回転モーメントになります。そこでも屈曲パターンというよりも伸展パターンとなります、ただあまりにも背筋が優位だと、塊としての寝返りになりがちで、起き上がり時にマイナスに作用してしまいます。よく頚椎の屈曲ではなくまず伸展がでてから頭部のリフトがおきるような起き上がりの場合には、結果的に頭頸部の床面からの離床はできても上体を起こし切る時には、下半身の反動やテコの応用にて起き上がることになってしまいます。頸部のstabilityが低下するということは、結果的に伸展位にて頭部を固定して、拮抗筋として屈筋が遠心性にクレーンのように支持することになります。これは頸部への負担が増大してリスクが高くなります。  また下肢の屈曲パターンの場合には、側臥位になってから肩甲骨がretractionなのかprotoractionなのかが観察点となります。実は骨盤と肩甲帯は、位相差がなければカウンターとしての姿勢制御反応が出現しにくくなります。ごろっと一体型で回ってしまう場合には臨床においても、うまくその後の起き上がりに結びつきません。位相差というのは伸長性を作って、テコの応用も含めて起き上がり時の効率的なエネルギーを生み出すメカニズムと言えます。  下脚への介入:特に今回面白い現象として、上ではなく下になる下肢への関与です。寝返りは上側の上下肢に注目が行きがちですが、実際には下側の支持安定性が不可欠であり、その時に大腿部のハンドリングもしくは下腿部のハンドリングによってスムーズな寝返りが促されることがあります。これは順方向なのかそれとも逆方法なのかによって動きを加速度をもって遂行するのがいいのか、それともカウンターとして姿勢制御を引き出すことによって遂行するのかということなどの、個人差がでてきます。 ④寝返りからうつ伏せ  この寝返りからうつ伏せも左右差があります。得意側と不得意側ですね。原則的には寝返りからの延長線上になります。側臥位からのうつ伏せのフェイズになりますが、側臥位までに連続した動きとして位置エネルギーをいかに溜め込むかぎ鍵になります。ただし側臥位までに反動などを利用して、身体を塊としての使い方をするようだと、うつ伏せにおいてゴロッと転がってしまいます。そうすると側臥位にて下になった上肢が抜けなくなりがちです。常に位相差をもって、姿勢制御が遂行されることが必要な条件となります。 つづきは寝返りからの起き上がり、そして立ち上がりと四つ這いについてレポートします。
スポンサーサイト

コメント:0

コメントの投稿

トラックバック:0