腸腰筋の作用

大腰筋は伸筋か?屈筋か?

大腰筋


大腰筋はご存知の通り股関節の屈筋になります。筋肉は起始と停止部が近付くことで収縮するからです。つまり収縮も、コンセントリックとエクセントリックがあるわけで、いわゆる股関節屈曲はコンセントリックです。収縮することが主動とするならば、コンセントリックもエクセントリックもアイソメトリックも全て作用であり、ダニエルの徒手筋力検査では求心性にて編集されています。
解剖学から考えると筋肉の作用を求心性に編集するしかないと言えます。つまり本当にどの場面にてどのように作用しているかを、筋電図にてホルター心電図のように記録し続けることはできないからです。また腸腰筋そのものを表面筋電図にて測定することも不可能であることと、超音波においても動的な状態をモニターすることは難しいでしょう。

筋肉の主動作が何もコンセントリックとは決まっておらず、エクセントリックが主動である場合もあるはずです。つまりコンセントリックの主動作筋が何か?という解釈が多いわけで、本来の働きが何かということが明らかになっているわけではないということです。

その代表格が大腰筋であると言えます。

大腰筋は長らく腰椎前弯を増長させる諸悪の根源とされてきて、この筋肉が短縮すると腰痛になるとされてきました。
よってウイリアムズ体操においては、股関節の前面を伸張させるためのストレッチと、腰椎前弯を減少させるためのペルビックティルトなどがメニューとして挙げられています。ところがマッケンジーのように伸展させることで腰痛が改善するよという真逆の理論が出てくると、最早真理はどこにあるのかわからなくなってしまいます。

これは栄養学などでもそうですが、このサプリメントや食べ物はある観点からは良いですよと言われていても、別の観点からは身体にマイナスに作用しますよと言われてしまうと最早何を食べていいのやらわからなくなってしまいます。

つまり、ある視点から見てみると是でも、別の観点からは非であることが往々にしてあるのです。

例えば腹横筋をバーストさせるためには、思いっきり腹をへっ込めて細くすることで収縮力は高まります。肩甲骨を引き上げてさらに仰け反れば、さらに促通できるでしょう。しかしながらそれは腹横筋ありきの考え方であり、その合目的な姿勢そのものが日常生活動作に適しているわけではありません。


これはスポーツ動作にも言えているわけで、あるスポーツ動作には合目的であっても、日常生活においてはニュートラルに戻ってくれなくては意味がありません。つまり短期的に見るとスポーツパフォーマンスとしてテコとしての使い方が合目的であっても、それは長く使っていると磨耗してしまいますよとなります。この辺りが大リーグにおいて、中6日を提唱する論議となっていることにも表れています。これは使い方というより、靭帯の修復のための期間という観点ですので、バフォーマンスとしての合目性とは少し違いますけどね。

むしろ投手の台所事情から中4日にしないと足りなくなってしまうということもあるでしょう。つまり選手や靭帯などの視点からよりも、100球に抑えるから中4日にて投げてくれよと、オーナーやMLBの事情も大いに関係しているものと思われます。

つまり腰痛患者に股関節伸展にて鼠蹊部を伸ばすと、腰痛が楽になったとするならば、伸展にて伸ばされた筋肉は腸腰筋だろうとなるわけです。すると腰椎の原因は腸腰筋の短縮だろうと理論展開するわけです。一見このロジカルは的を得ているように思えるわけですが、実は鼠蹊部辺りを伸ばしているということにより、別段、腸腰筋だけが伸張されているわけではないということなのです。

大腰筋の下部、特にL5からでる繊維については屈筋、そしてL4以上の腰椎からでる大腰筋は伸筋として働くと解説している書籍もあります。この理由はいわゆる生理的な骨盤と腰椎のアライメントであるという条件下にて起始部から停止部である小転子に向かってベクトルを引いていくと、そのラインがL5では前方にL4以上では背側に走行しているということが理論となっています。つまり、この骨盤と腰椎のアライメントにて各々の分節レベルの大腰筋にて引っ張ると脊椎が屈曲するか伸展するかということの理論です。よって椎体の前方に走っていれば屈筋、椎体の後方を走っていれば伸展に働くということなのです。つまり椎体に対して腹側・背側のどちらに走行しているかによって、その作用が規定されるということです。しかし実際にそのように理論通りに行くのか?
添付いた画像をみても分かる通り、L4は屈筋なのか伸筋なのかわからない位置にあります。つまりは誰かがそのように見えて決めてしまったというだけで本当の真意はわからないと言えます。

現に、一昨年のカイロプラクティック徒手医学会においては、大腰筋の起始部は椎間板からでている解剖学の知見が発表されており、そもそも起始がどこからなのか?そして腰椎のアライメントにおいて個人差があるということにおいても、ベクトルは変わってきます。そのことを総合的に考えると、本当にL5は屈筋なのか伸筋なのかはわかりません。ただ確率としてL5は大腰筋の繊維から考えるとどちらかというと屈曲に作用し、L4はどちらとも言えず、L3以上は伸筋と言えなくもないとなります。つまりは、腰椎もアライメントも常に動いているわけで、そのたびにベクトルは変化して作用は移ろいゆくということになります。

ではこの大腰筋が股関節の伸筋と呼ばれる所以を、もう少し煮詰めていかなければいけません。
それは腰椎前弯を増強させるための筋肉ではないということです。確かに大腰筋がspasmを起こすと、腰痛を引き起こします。結果的に大腰筋が緩むと、腰痛は楽になります。その時に背筋を伸ばすようにストレッチしても楽になります。それは背筋を伸ばすことで増強した前弯の改善が促されるから・・という理論も成り立ちます。または前弯の増強に加担している筋肉の一つが背筋であるということもあるでしょう。では腰椎の過前弯が改善するとなぜに腰痛が治るのか?という素朴な疑問も生じてきます。

腰椎を屈曲して丸めて楽になるタイプの腰痛は、PVMの膨隆、無分離辷りの前兆となる腰椎の前方への不安定性などでしょうか。いずれにせよPVMの膨隆およびstiffnessはフラットスパインの改善にもつながってくるため、むしろこれは前弯を改善するというよりも生理的な前弯に戻すということになります。また不安定性腰椎へのアプローチとしては、仰向けにて丸める肢位がマルアライメントの是正につながります。また丸めてコロンコロンと転がると、これは深層の背筋群の促通になり、結果的に生理的前弯の獲得につながります。
 分節的なコントロールができる深層の筋群の作用によりアライメントは是正され、動きも円滑になるということです。つまりはstaticな状態での改善よりもdynamicにていかにコントロールできるかが、結果的に腰痛も含めた改善につながるのです。

では両膝を曲げて抱え込むストレッチと似ていますが、いわゆるpelvic tiltが適応となる状態とはなにか?
これは背筋に対する作用もなくはないですが、丸めるほどの刺激とはならないでしょう。これは腹筋のほうにフォーカスをしたエクササイズと言えます。つまりは腹部をドローインすることの効果になりますから、腹横筋となります。またそこに腰椎の伸張性を意識したならば大腰筋ということになります。そこに腸骨のin-flareを意識したならば、腸骨筋ということになります。

大腰筋の作用の難しさはその多様性と言えます。
いかに考えられる作用と列記します。

腸腰筋の作用
①股関節屈曲:求心性
②股関節伸展:遠心性
③腰椎屈曲:後弯 働いてる?求心性もしくは短縮位
④腰椎伸展:前弯 遠心性・特に伸張性
⑤股関節外旋:求心性
⑥股関節内旋:腰椎の伸張性
⑦腸骨inflare;主に腸骨筋の求心性
⑧腸骨outflare:主に腸骨筋の遠心性
✴こうなると内外転も内外旋が連動するので間違いなく腸腰筋が入っていますね。
座位におけるあらゆる四肢の動き、立位における四肢の動き、姿勢保持には全てにおいて作用していると言えます。

 前弯が強いと見るからに痛そう・・」という先入観もあるでしょう、実際に沿っていると折れそう・・と・・
しかし屈曲が外力によって過剰になされると、脊椎の圧迫骨折を招きます。伸展にて出てくる症状は神経根症状であり、椎間孔の狭小化ということです。つまり椎間関節がぶつかって痛みがでるということよりも、神経症状によって、そして分節的に一箇所への負担が集中したときということなのです。その時に腰を屈曲させて背筋を緩めると楽になりますが、これこそPVMの深層の筋肉を伸張することでかえって促通された可能性があります。

その時に大腰筋はどうなっているか?背骨は屈曲しているので大腰筋は縮んでいます。収縮しているとも言えます。この単に縮んでいるのか、働いているのか?は各々の意識の仕方によって変わってきます。つまり、一つの動きやエクササイズが、一応目的としては何か一つあるわけですが、実際には複数の要因が、重なり合っているのです。この複数の要因こそが重要であり、形だけを真似をしてもダメなのです。
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