骨盤と仙腸関節~Q&A~

現在開催している浜松の運動連鎖道場に参加している道場生からの質問に対する回答を載せていきます!

Q.呼吸時における仙腸関節の動態において
骨盤前傾時に呼気、後傾時に吸気となる理由は何故でしょうか?


 骨盤の前傾後傾は正中重力線からみた骨盤の矢状面の傾きになります。つまり骨盤の前後傾と仙腸関節の動態を分けて考える必用があります。吸気においては仙骨に対して腸骨がPIになります。いわゆるposterior inferior=腸骨の仙骨に対する後傾になります。この敢て後傾という言葉を使ったことが、骨盤の前後傾と混同しやすいところだと思いますが、吸気においてはPI腸骨になるということであり、PI腸骨という表現が馴染みがないので後傾というふうに導入として使いました。よってPI腸骨は正中重力線からみて前後傾というわけではありせんので、骨盤の前傾位のなかでPI腸骨もあり得るということです。ただし仙骨に対する腸骨のPIは後傾のモーメントになるわけですので、結局は骨盤も後傾であるほうがPI腸骨をアシストしやすくなるのです。つまり骨盤後傾位のほうがPI腸骨になりやすいということであり、やりやすいということです。なので太極拳などは腰が落ちて膝が曲がって骨盤が後傾した肢位にて行われているのです。これは呼吸に伴う特に吸気に伴う骨盤輪の拡張、この時の仙腸関節はPI腸骨となりますが、呼吸に伴う骨盤の拡張を強調するための合目的な姿勢であるということです。人間は二足直立になることで正中重力線からの立ち直り反応が効いているので、その立ち直り反応の呼吸に伴う骨盤の開閉との矛盾が生じやすくなっているのです。この矛盾は拮抗した力が同時に働いているので、どちらか一方に集中したほうが促通しやすいのです。この太極拳の姿勢は、本来であれば正常な姿勢である骨盤の生理的前傾の前弯をとりあえず置いておいて、呼吸に伴う骨盤の開閉、特に吸気に伴うPI腸骨、outflare、座骨の内転というカップリングモーションを強調することを目的とした合目的なボディワークなのです。
 では何故に呼気に伴うAS腸骨ではなく吸気に伴うPI腸骨の視点が優先されるかというと、姿勢制御において吸気は本来であればPI腸骨に伴う背部胸郭の拡張が強調されるべきなのですが、そうすると踵後方荷重になってしまい伸展モーメントが働いてしまいま。必然的に直立を保つためには屈曲モーメントにてバランスをとらなければひっくり返ってしまいます。そこで高齢者のように前屈みの姿勢にて、上半身の重みを利用するストラテジーは若者は見た目としても良くないので自ずと直立を保とうとします。このときに体幹の筋群のスタビライザーとしての働きが必須となります。ここで体幹が効かない人は、若者であっても前屈みの姿勢になってしまいます。つまり体幹のスタビリティを効かせるということは、直立に伸びるということでありその時に吸気に伴う胸式呼吸、特に胸郭の前方部を拡張させ胸を張る動きが強調されやすくなります。
 この胸を張る動作というのがくせ者で、骨盤の拡張に伴う拮抗的な筋群のスタビリティによる姿勢保持は難易度が高いので、脊柱の伸展に伴う骨性支持のストラテジーを選択したり、または上半身の重みを利用して背筋群のコンパートメントを利用するなどの、いわゆる長期にわたると姿勢症候群に陥る序曲を歩みだしがちです。または高齢者ですと、さらに前屈みだと背筋群に負担がかかるため、膝を曲げて骨盤を後傾したまま、身体のパーツを前後に配置しながら、まるで達磨落としのジグザクのような戦略をとることもあります。この時の戦略の特徴は肩甲骨挙上と頭頸部の前方突出になります。これも結局は骨盤の開閉力ではなく、パーツの重みをジグザクに配置することで直立を保つ、不安定な姿勢となります。この不安定性は深呼吸でさえもバランスを崩す要因となるので、必然的に呼吸も浅くならざるを得なくなります。


Q.骨盤後傾または猫背は、あまり作るべきではないという印象を受けました。
それは何故でしょうか?
またこの印象が違う場合、山本先生は骨盤はどこに位置においておくことが適切だと思われますか?

 この質問も前段の質問の回答に含まれてきますが、姿勢制御における戦略として上半身の重みや、背筋の構造的な剛性による支持であったりと、人が持っている一つの手札なので場面によっては必用となってくるものばかりなのですが、どちらかというと緊急時の筋肉による収縮やコントロールが間に合わないときに使用する戦略となるからです。緊急時に使う戦略を、日常的に使うというのは最初は楽ですが、いずれ平時に使わなければいけない機能を衰退させます。そうすると膜性や骨性や靭帯性に支持された身体は、いずれ破綻という変性を辿ることになります。
 昨今の体幹エクササイズが腹横筋などのインナーが強調されるのは、不良姿勢そのものがインナーの貢献度の割合が低下してしまうことに対する改善の一助となるからです。骨性にも靭帯性にも膜性にも寄らない、もたれかからない戦略とは自ずとインナーの働きが必須であり、身体の軸と姿勢保持のためのコントロールし続けることが求められるのです。この機能こそがバランスであり、あらゆる難易度の高い動作やスポーツパフォーマンスを可能にしている源なのです。よってこの機能が低下する高齢化は、自ずと若者のようには動けなくなるということなのです。
 では骨盤はどの位置がいいかということになりますが、視覚的に粘土細工のようにハンドリングしても意味がほとんどありません。それはクライアント自身が全く意識化とその姿勢が動いたときの変化に対するその姿勢の保持をどうしたらいいかわからないのです。よく鏡などをみて、ここが真っすぐですよと修正しても、その良い姿勢の持続と維持は難しいですよね。つまりは、外観からみた良い姿勢というものが、クライアントや患者さんにとってどのような感じがするか?どのような身体感覚が表象されるかを指標とするしかないのです。その身体表象だけでは、これも指標がありませんので+機能的にも示してあげなければいけません。それが呼吸によるコントロールなのです。つまり吸気に伴う拮抗した垂直方向への伸張という操作の上達に伴う、自覚的な安定感、片脚起立や歩いたときの推進感などのインセンティブにより、その戦略が意識が正しいんだと言う意味付けと評価をすることです。そして確かに実際に呼吸のコントロールによりパフォーマンステストが安定すれば、何かしら合理的な身体操作ができているということであり、結果的にその時の姿勢は機能的であるということになるのです。
 その姿勢が必ずしも解剖学的に教科書的に正しい正常な姿勢と一致することが必須ではありません。
例えばボクサーのファイト姿勢は円背の腰が引けたように見えるでしょう。しかしながらディフェンスとオフェンンスどちらもスイッチできる機能的な姿勢なのです。それが高齢者の退行性変性疾患を有する利用者さんにも言えるわけで、合目的なもしくは必然性のたる姿勢そのものを補うために何を強調するか、何を代償として使うかという発想が必用なのです。その戦略が杖やシルバーカーやサイドケイン、歩行器、でもいいということです。そこは身体だけにとらわれず、どのような自助具や道具をデバイスとして使うか?というリハビリにおける発想をフルに使えば良いのです。

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