O脚改善のための理学療法

第七回長野運動連鎖アプローチ研修会報告Ⅰ

10月4−5日 台風が近づいて、肌寒くなってきたなかでも二日間、長野県佐久穂町にて恒例の運動連鎖アプローチ研修会が開催されました。半年に一回定期的に開催されている研修会もはや7回となりました。


我々理学療法士の強みは、医療現場にて経験があることになります。O脚といえば美容的なイメージですが、病院では変形性膝関節症となります。変形性膝関節症の場合には内反膝という呼称のほうがしっくりいきます。ところが整体ともなればO脚矯正となります。不思議なものでO脚矯正というと胡散臭いイメージとなり、何をもってO脚が治ってそして維持できるのかは定かではありません。一時的に変化することが定常となるのかどうか?これについては誰も提示した人はいません。前後での即効的な効果として写真にて紹介しているだけなのです。アナログデータでも構わないので、どのようなタイプであれば改善しやすいので、そしてそれが定着するのかという観点にて理学療法士であれば臨まなければいけないでしょう。

 さて変形性膝関節症の内反膝が治るという場合には見た目のアライメントが直るという意味では使いません。何故なら変形性膝関節症における変形は重度でありgrade5ともなれば荷重面の軟骨が摩耗し削れている状態です。そしてその特に高齢者の変形においては、O脚が直るという触れ込みはできないでしょう。むしろコンドロイチンやグルコサミンにおいて変形性膝関節症が楽になるという謳い文句です。決して変形に対して良くなるとは言及していません。つまりO脚矯正とかいうのは病院では対象外ということであり、むしろ美容や整体などの分野にて都市伝説のように良くなるかも?という不確かな情報により期待とコンプレックスにつけ込んでいるということなのです。

だからといってニーズがあることは間違いないわけで、そのための方法論として治療ではない矯正ということになるのでしょう。そしてその役割が現在は整体ということになるのです。しかしながら、その論拠も理論も泣く骨盤矯正すればO脚が直るというような触れ込みで、一つの成功体験をさも普遍的に定説かのように表現します。だからこそ医療従事者である理学療法士として、安全に論理的に定常的な効果が期待できるものを提示する必要があるのです。

理学療法士であればカテゴリー分けと適応と不適応を分別して、何かをすれば必ず治る!というような整体のようなキャッチコピーは使いません。医者や看護師がそのように旗ふりしますか?例えば協会のHPにO脚が直ります!と断言して出していいと思いますか?頭蓋仙骨を調整するのが理学療法士の専門です!と公然と言えますか?そのような輩が沢山輩出されていますが、はっきり言って将来にわたって我々の価値を下げているだけなのです。個人主義に走らせ団体としての求心力を失うことになります。そして団体としての力がなくなることで身分保障がされなくなり職能も失います。そしてますます個人の成功ということに視点がシフトし、業界として地盤沈下していきます。そのような業界をまざまざと見てきましたので、業界そのものが失墜していくとエゴイストが闊歩する場が醸成されます。結局、エゴイストは自分が自分がということばかり言い放つので、業界全体が低落したほうが自分が引き立つのです。しかしながら世間にリスペクトされなくなったその職業はどうなるかというと、世間に居場所を失います。そして職業を名にするのに恥じらいを持つようになります。それが会社でも何か不祥事が会った場合には、途端にリスペクトの対象から外されるのに似ています。既に権力や地位が確保されている職種については、不祥事があるもののその価値は一向に下がることはありません。医者や看護師のドラマでパロディのような内容であっても、それはあくまで娯楽として真に受けることはありません。そこまで我々のイメージが定着するためには何をしなければいけないか?そういった観点からO脚をどのように解釈して理学療法として落とし込むかが大切なのです。
 O脚を語る上でいくつかのキーワードがあります。それが以下となります。

∗ センタリング
∗ Bi-lateral(左右・両側)
∗ 平衡(吊り合い)
∗ 骨盤閉鎖力
∗ 姿勢制御
∗ Strategy (hip/ankle)
∗ 膝の回旋動態
∗ 推進力・慣性(歩行)

 ⑴ O脚というのは前額面の変位である
 O脚は前額面における内外反変位であり、そして変形となります。変形の定義からすると整体をしたからといって変形が直るわけではなく、あくまで変位が治るということなのです。変位であれば可逆的な変化となりますので、機能的なアプローチに改善することができます。そのために必要なキーワードの一番目はセンタリングになります。センタリングは軸とか芯という表現ができますが、ボディという構造的な表現をすると正中重力線ということになります。つまり軸とは身体の真ん中ということであり、抗重力下において姿勢が制御されるとき、脳内で感覚のモダリティが統合されることで形成されるバランサーと言えます。バランサーには中心があるわけで、その中心から伸びる芯が軸ということになります。よってバランスというのは、正中からおおよそ均等に動くことが前提であり、そして必ず通る真ん中があります。振り子においても中央に柱があるわけではなく、分銅の重さにより左右に揺れているだけです。しかしそこには、必ず空間上に振り幅を二等分することができる、正中重力線が存在します。身体ではどうか?物理的に振り子のように明確な部位があるわけではありません。構造的には左右の上下肢があり体幹があって、その中央に背骨があるので正中重力線は背骨を通ることになりそうですが、そこは物体ではなく人間であるということなのです。生命を失ったときに立つことは不可能となり、もはや軸と呼ばれるものは存在しなくなることを考えると、二足直立を成り立たせるためのシステムが不可欠となります。統合され制御するためのシステムこそが必要であり、それは筋や背骨などの筋骨格系だけで成り立つわけではありません。脳にある制御システムと連動してこそなのです。よって軸は脳の中に形成されたシステムであり、統合された結晶なのです。
 
⑵bi-lateralバイラテラル
 bi-lateralとは両側、左右という意味になりますが、軸の脳内形成のためには自由度と汎用性が不可欠となります。つまり軸とは構造物の柱ではなく、結果的に柱である背骨を通る正中と重力線が一致するためには、針を糸に通すようなエクササイズではなく、比較検討する選択肢を多くする必要があるのです。つまり選択肢の多様性、幅・可動性・スピード・緩急・難易度・強度など刺激強度をフィードバックする必要があるのです。制御ということになると静的な場面だけでなく、難易度を上げてダイナミックな動作につなげていく必要があります。

⑶O脚矯正のための距骨誘導
 bi-lateralがあるからこそセンタリングがあるのです。中心とその両翼があっての軸なのです。よってより太い軸形成するためにはセンタリングとともにbi-lateralな刺激が必要であり、このbi-lateralこそが制御の幅になるのです。
 膝関節の制御機構は股関節と足関節に挟まれ、その二つのstrategyのcapacityから溢れ出たときに膝に負担がかかってくるのです。よって足部と股関節の幅を拡大することこそが、膝の前額面への変位であるO脚を改善するキーとなるのです。
 そしてbi-lateralというのは、例えば右足に負傷があると左足に荷重が余分にかかってきます。そして荷重バランスが変わることでその情報が脳梁を介して比較検討され、効果器である身体にフィードバックされ身体バランスとなります。よってその行程にエラーがあれば、フィジカルがアンバランスとなり、自覚的には傾いていても気がつかない状態になります。
 つまりO脚の矯正とは物理的にその膝の内側を近づけようとすることではなく、脳にbi-lateralの知覚情報をフィードバックすることで身体の正中化を促すことにより、膝も結果的に内側に近づいてくるということなのです。
 距骨そのものはそれだけでも効果がある部位ですが、bi-lateralという観点から刺激を入れる対象とすることが大切なのです。よって距骨に対するアプローチは抗重力下にbi-lateralな刺激をいれること。つまり荷重下にてアプローチすることこそが、センタリングを促すツールとなるのです。荷重下では既に姿勢制御機構が働くわけで、その状況で刺激を入れると全てが姿勢に取り込まれていくのです。もちろん運動連鎖とは脳内プログラムですので、バイオメカニクスに代表される物理的な作用は筋連結というようなつながりだけではなく、いわゆるCPUの中のようなものなのです。
 この距骨に対するアプローチにて、相当に歩容は変わってきます。歩行が変わるということはリズムとテンポがよくなるということ、そしてどんどん前に進みやすくなるということなのです。この慣性と推進力こそが矢状面上での動きであり、前額面の変位をカバーしてくるのです。よって変形性膝関節症のように、既に不可逆的な変化をおこした変形であっても、カバーすることができるのです。
 距骨をみることのメリットは、荷重動態を把握できることにあります。左右両側から感覚入力することそのものに意義があるのですが、さらに荷重動態に直接反映している距骨へのアプローチをすることで、ダイレクトに下肢の荷重線に変化をあたえることにより、アライメントにアクセスできます。基本的にはO脚は左右同時にアプローチできること、そして中心への集約が旨となりますが、リハビリテーションに関わる理学療法士の、変形性膝関節症に代表される疾患へのアプローチを経験しているからこそできる発想なのです。これがいきなり軸をつくる体操やアプローチなどになると確かにリハビリに効果そのものにも使えることは使えるのですが、毛色が違うのです。つまり環境やシステムそのものを変えなければ、いろんなモードを同じ現場にて多用することは困難なのです。そのコンセプトでやると決まっていればできることも、実際にあらゆる違う業界のコンセプトを場の雰囲気と違うものを扱うことは難しいのです。例えば、高齢者のリハビリテーションがメインの施設において、リハビリの場と介護の場と健康増進の場が分かれていて、そして理学療法士と健康運動指導士とトレーナーがそれぞれの単元を受け持って取り組むことができればクライアントにとってもセラピストにとってもモードをいちいち変えなくてもすむので結局は良いサービスができるのです。
 歩行分析をすると明らかに左右差があり、ダイナミックアライメントが良くない側が同定できます。それを患側と規程するとアプローチは当然患側に対してやりたくなります。しかしながら距骨をみると必ずしもそうではなく、健側側に対してアプローチすることで患側側が改善することが少なくありません。距骨の荷重動態を変化させることで、そして距骨に全ての身体部位を同調させることで荷重動態の改善効果の持続をより促通することができるでしょう。
 距骨の変位は主に①前後 ②内外側へのスライド ③内外旋 ④回内外 のパターンが組合わさっています。アプローチの基本はメジャーな変位が何で、左右の距骨の変位を、結果と原因側に分けて考えることなのです。

スポンサーサイト

コメント:0

コメントの投稿

トラックバック:0