背骨に対するアプローチのあれこそ

変形性脊椎症に対する理学療法

変形性脊椎症になると、脊椎が不可逆的な変化を起こしているので、正常な構造を取り戻すことはできない。
つまり正しい姿勢や正しい脊柱の配列は望めないということである。
しかしながら、不可逆的な構造的な事実はありつつも、さらに機能的に補えるとしたら何であるか?そこを追求さざるを得ない。

5月から始まった運動連鎖道場in福岡も3回目となり、足から始まったテーマも脊柱体幹へと上がってきました。

大半は高齢者を見ることが多い現状において、背骨を伸ばす!という見たそのままの発想は、現実的ではないことが分かります。

理想はそうであっても、それは無理難題であるからです。
体幹には幾つかの何故?があります。つまり未解決ファイルNo.です。
まるでミステリーのようですが、理論とは所詮は誰かがその時々に考えた思いつきのようなもの。その全てが分かっているわけではなく、またその過去も歴史も経緯も理解しているかどうか怪しい時もあります。

歴史を紐解くと、体幹ブームの前の前、腰痛に対して腹筋背筋を強化するという時代。最初にあったのは腹圧でした。つまり腰痛体操や予防は腹圧を高めることが、評価指標だったのです。

定量的にはどうするか?
何やら腹圧を計るための何かを、下から入れ込むしかなかったようです。流石に今ではなかなかそんな研究もやりにくいと思いますが、お腹の中にエアーバックを作って背骨を支える補強するという算段です。今ではほとんど脚光を浴びることがない方法ですが、果たしてそうであろうか? 腹圧の活用場面は踏ん張る時などの、腰部に負担がかかる時になります。つまり腰痛の原因が重たいものを持ち上げた時などの、中腰姿勢にあるという前提だったのです。確かに昔は重たいものを持つ場面が多かったでしょう。しかしながら、最近ではその機会はかなり減少しています。勿論引越し屋さんなど、重たいものを持ち上げる仕事は存在しますが、時代としてメインストリームに立つには、少々現実にそぐわなくなったといえます。

高齢者の変形性脊椎症に戻りますと、腹圧を重たいものをリフトする場面に限定せず、他の活用の可能性を模索することから始めましょう。それが、変形性脊椎症になります。変形性脊椎症は脊椎の変形性だけでなく、椎間板も変性していきます。いわゆる椎間が狭くなるということです。その椎間板を膨らませることは出来ません。よって具体的な方策として、腹筋を鍛えましょうということになります。しかしながら不安定な腰部を強化するということにおいて、負荷に対する耐性が高まり、腰椎に対する負担が軽減するということになります。
当時より不安定性が腰痛の原因であることは言われており、その不安定性を固めることが治療の原則となっていました。固定すれば痛みがなくなるという、今では当たり前の発想に至った経緯として、不安定性がそこに存在するという発見があってこそです。
しかしながら保存療法において、果たして一分節のみを腹筋運動にて固定することができるのか?
効くか効かないかはうやむやのままに、とりあえず腹筋を強化する、腹圧を高めるという論理にて運動療法が用いられていました。モビライゼーションの世界では、弛さの近接した分節には硬さがある、硬さの近接には弛さがあると言われており、だから固定された分節のモビライゼーションは、返って多分節の不安定性を助長するといわれていました。しかしながらモビライゼーションをしてはいけない!とまでは誰も言っていませんでした。

そうらしいよ…というだけで、ではモビライゼーションの意義はどこにあるのか?ということになります。つまりイモビリティのある隣は弛いから、モビライゼーションをしてはいけない?
硬いからモビライゼーションの意義はあるのに、病態を考えるとモビリティを上げてはいけない!となるのです。つまり必然性のある硬さということであり、硬さそのものにも意味がある!ということです。そうすると弛さそのものにも意味があるという論法が成り立ちます。

すると硬いから解す、硬いから伸ばすということを再考しなければいけなくなります。
腹筋を収縮させ尚且つ腹圧を高める・・・椎間の隙間を拡がるかどうかは別として強化するという発想です。

しかしながら腹圧はエクササイズ時には重要としても、それが日常生活において汎用するのか?という疑問が残ります。つまり重たいものをもったりするときの腹部の在り方としては合目的といえますが、普通に立っている時などはどうするのか?安静時にはどうなっているのか?などなど解決しなければいけない問題が山積みです。

腹圧という発想には背筋という考え方がありません。背筋と腹筋のバランスが大切であるという論理も腰痛予防ではかなり言われていました。腹圧というと背筋運動にて高まることは考えにくいのです。つまりどのような場面にてどのような姿勢や目的にて使うかということが大切であり、そのエクササイズや治療方法が何に対して合目的なのか?という視点が大切なのです。

⑴腹圧の合目的な背景
 重たいものをもつなどの前傾や中腰姿勢などの作業姿勢

⑵腹筋背筋のバランス
 脊柱を前後のバランスにおける平衡を演出する。矢状面における正中化。

⑶モビライゼーション
 感覚入力による運動連鎖の賦活。可動性を拡げることを第一義的な目的としてはならない。神経根症においても、ターゲットなる分節に対してモビリティを高めても改善することはほぼない。例えばL4/5に神経根症があったとしても、その部位をアプローチしても仕方がない。
特に変形性脊椎症においては徒手療法にて治すというイメージはない。


⑷ドローイン
 主に腹横筋を促通するためのエクササイズ。お腹を凹ます動作。腹横筋の筋電図学的なバーストは確認できるものの、あくまで日常の生活動作に適したセッティングではない。いわゆる固めることにつながり、固まった体幹になる。座位においてはドローインはPI長骨になりやすく、かえって逆効果。supineさらに四つ這いにおいてドローインを促すことのほうが効果的。特に四つ這いは腰椎のアライメントを考慮しながらセッティングができるため、より効力の高いエクササイズとなる。

⑸ブリージング
 咳き込み、くしゃみなど吐く動作にて腹筋が相当効くことが実家できる。ドローインよりも腹横筋の促通にはさらに高いEMGが検出されている。つまりドローインが吸いながら行うことを推奨されているの対して、こちらは連続的に吐きながらのセッティングになる。より動きやすい実践的な体幹を考えるならばブリージングだろう。

⑹bodywork
 opposite
 two way stretch
 up & over
axial elongation
articulation

 など背骨に対する各種のキューがある。このあたりの狙いは、上下つまり鉛直線上における拡大という要素が入ってくる。従来の腹筋を中心として体幹の発想にはないものとなる。では実際に背骨をこのような意識をもつことで果たして長軸上に伸びるのだろうか?応えは微妙です。背骨や体幹に意識しても、結局はドローインと大差ないのです。up & overのみが腹筋と背筋のバランスおよび脊椎カーブを考慮した要素が入ってくる。つまり伸展と屈曲要素がウエーブ状に作用するのです。いわゆる波状の動きは理学療法には専門外というか管轄外の感があります。それは運動学的に分析しようがないからです。この波状の動きが、背骨の動きとして本来あるべき姿なのかもしれません。この波状の動きが、分節をグラデーションのように動かす airticulationとつながってきます。背骨をつないでいる細かい筋肉を賦活させながら、大きな筋群が硬くならないように背筋を伸ばしていく。それも筋肉が主動ではなく、姿勢制御の反応として伸びるという自然な営みの中で作用する必要があります。
 
⑺姿勢制御
 姿勢制御とはあくまで最低限で最適な作用として働く反応です。つまり、無意識にある程度遂行されている制御機構なのです。目的をもってその部位や筋肉を使おうというよりも、必然性を高めることにより自然に関与してくるのです。縦に作用させるためには、下方の下げる要素により伸びる作用が引き出す必要があります。それが肩甲骨の上下方への動きになります。つまり肩甲骨が上下することにより重心位置が変化し、その結果バランスととるために縦に伸びることになるのです。その時の伸びはあくまで姿勢制御としてのつり合いのとれた状態であり、その時に作用する背骨の筋活動も最適で自然な働きになります。つまりあらゆるエクササイズは何かを意識して行う合目的な運動になりますが、より自然な動きの中で導きだされるものが大切なのです。子供が遊んでいるうちにこのような自然な動きを身につけていくのがよくわかります。

変形性脊椎症に対する理学療法は背骨にのみ着目するだけではく、姿勢制御という観点から、それも上下という観点から臨む必要があるのです。


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