インソールと運動療法

インソールにおけるコンセプトの多様性



 理学療法士がインソールを扱うということが当たり前のように浸透しているのは、先輩方のご尽力と歴史があってのことになる。まさにインソールの恩恵は足へのアプローチとして、どうしても物理的・構造的なアプローチになりがちで、コンセプトも一つの法則をもとに体系づけられていることが大半です。
 骨構造であることを考えると、確かにアライメントを直すということで良さそうですが、そこに感覚入力という作用が混在してきます。現在のインソールを散見すると、この①物理的・構造的なコンセプトと、②感覚入力作用と、そして③身体機能の原理原則作用、の三つ巴が混在しています。



 ①物理的・構造的作用:踏まず支え効果・矯正効果・重心移動などの誘導効果
 ②感覚入力作用:僅かな刺激によって生体の運動連鎖を促し、脳内のプログラムを賦活させる
 ③身体機能の原理原則作用:軸形成・姿勢制御・立ち直り反応・平衡反応を引き出す
 ④足部アーチのstability作用


① の物理的・構造的は、特に後足部へのアプローチにて適応となります。踵は正中重力線に対して、内外反位にあり、明らかに重力線に対する傾きなので、純粋に垂直に補正することが是となります。これほど明確に数値化できて、ニュートンの法則に準じているものはありません。踏まず支え効果も従来の、扁平足に対する内側アーチパッドで盛り上げるという考え方は構造的になりますが、windlassとtrassを共存した状態を作り出すためのアーチパッドは、感覚入力による賦活というカテゴリーに入ります。

② 感覚入力作用は僅かに触れただけでも変化をみられ、そしてマジックのような現象です。触れただけで良くするというのは、治療家にとって奇跡のような錯覚さえおこさせます。治るというよりも変化がおきるという表現が正しくて、そこに期待感やプロセスがあることでその作用は増幅されるのです。このインソールにおける感覚入力というのは、まさに運動連鎖の賦活になります。触ることは特別な作用となります。つまりものが触れることは日々おこっているわけで、別段それで治療効果を実感することはありません。しかしながら、あるポイントにフォーカスをあてて、その行為に注意を向けてもらい、変化を実感してもらうことで、単に触っただけという行為が特別なものになるのです。インソールにおいても、薄い1mmのパットやさらに薄いテーピングにおいても、動きや歩行に変化がおきることを経験します。この細かさと繊細さが日本人の特徴であり、最早職人芸といってもいいでしょう。しかしながら、そこは数寄屋橋次郎の寿司と同じで孤高の極みということになりますので、目指すべきはそこですが職人全てがその域に達するわけではありません。つまりインソールの体系化においては、身内においては支持されたとしても、対外的にそして国際的にはわかりやすい説明とコンセプトが必要となるため、職人的というのは我々の専門性として発展させるためには扱いきれない道具になってしまうのです。これからは常に世界標準という考え方に落とし込んでいくことが必要ですね。


③ 身体機能の原理原則とは軸や姿勢制御ということになります。インソールは普通に考えれば足のために治療方法として用いるもの。しかしながら、このインソールが足の構造や機能に特化するものだけではなく、足が歩行や姿勢の保持においても重要な役割を果たしていることを考えると、単に足の痛みや構造のためにだけではないコンセプトが自ずとでてくるのです。また結果的にインソールというものが、この身体機能の原理原則、抗重力下における姿勢制御へのアプローチが入ってくるため、劇的な変化と効果が出てくるのです。つまり思わぬ効果がでる治療方法やコンセプトは、間違いなく身体機能の原理原則作用が入っており、そのために思わぬ副産物として良くなってしまうのです。
インソールにおいては細かい感覚入力のためのパットではなく、姿勢制御のための作用となりますので、足に合う合わないというよりも身体全体の反応にて評価します。例えば、平面のシートを前足部に敷くだけで、立ち直り反応として重心が前に移動するなどの反応がみられます。つまり感覚入力が足の内在筋や、足趾への刺激、踵への誘導作用を導くためにヒールパッドを入れたり等、とは違って姿勢や動き、そしてリズム性などの要素を促進させることで、インソールの本来の目的以上の機能にアプローチすることができるのです。つまり、どこに何の目的で、そして具体的にどのような効果が出ているのかを自覚しなければなりません。漫然とインソールを入れたとして、その効果がクロスして出ている可能性があります。つまり効果機序を整理しておく必要があるのです。

運動療法の位置づけと役割
~足部アーチstability~

 
④ 足部アーチのstabilityについては運動療法を積極的に用います。インソールにて全てまかなう必要はないということと、そこには必ず限界があるのです。もちろん、どこまでできるかを探求し続けることで、初めてその可能性と限界、適応とさじ加減がわかってくるのですが。足部アーチの緩衝作用によって姿勢制御における立ち直り反応、特に一歩が踏み出るステップの平衡反応へとつながります。そしてこのアーチは内側・外側・横アーチがあり、それぞれに連動性をもってつながっています。それぞれのアーチの作用として身体の各パーツに関連しています。アーチへの刺激+四肢のエクササイズを組み合わせることで、単独に関節のエクササイズをするよりもダイレクトに姿勢制御に反映させることができるのです。

 インソールの最大のメリットは、治療の補助作用としてインソールは持続的に治療効果を出すことが出来ます。そして身体機能の原理原則へアクセスすることができることで、その効果の可能性がかなり広いと言えます。
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