腸・皮膚・筋肉が心の不調を治す

腸・皮膚・筋肉が心の不調を治す
山口創 著 桜美林大学准教授身体心理学者




 現代は脳科学全盛といっていいほど、全てのコントロールは脳にある。そういっても過言ではないかもしれません。リハビリにおいては、最終的には脳が統合しているわけであり、あらゆる情報の中枢であることは間違いありません。しかしながら、現代は情報過多の時代であり実感がなくともバーチャルにていくらでも疑似体験ができます。またインターネットやSNSといういわゆる情報ツールによって情動は左右され、そして揺らぐことになります。世界はネットによって狭くなったと思わずにはいられないほど、世界中の情報が発信されそしてネットワーク化されています。まさしく座っているだけで、物事が動いていく感覚、上手く一つのツールとして利用するにはいいかもしれませんが、実際には使われている、そしてインターネットビジネスにて成功している人たちは、実感として何かがあるのだろうか?
 最近、そんな現状にへきへきしてSNSかえら離れる人たちがぽつぽつと出てきた。聞くと「すっきりした」とのことだ。いちいち人の情報を見るために一喜一憂して、これはまさに依存症というものだろう。そこに一体何があるのだろうか?どこに行き着くのだろうか?言葉一つで自分を誇張することもでき、そして「いいね」を押す人たち。その「いいね」を見て安心をするのだろう。
 さた前段が長くなったが、ゆっくりと流れる時間のなかにある田舎に行くと、しばらく都心にて喧噪のなかで勝手に急かされているリズムとのギャップに気がつく。
 今回紹介する書籍は、何気なく手にとって買ったものだが、少しばかり視点を変えることになりそうな予感がある。簡単に紹介していくと、著者は現代は脳が制御できなくなった事象による、数々の諸問題への提言から始まっている。そして、身体感覚や五感が大切であることを説いているわけだが、それ自身はそれほど特別なことではないかもしれない。
 中枢神経と呼ばれる脳には、無限の可能性が秘めており、まさにその扉が今開きだし、多くの科学的知見が解明されつつある。その様をみて、セラピストも魅力にとりつかれ、脳こそが情報処理の中枢であるということに疑いの余地はない。心の座さえも脳にあると。しかしながら筆者は心の中枢は、内臓・皮膚・筋肉にあると説いている。別にその説には異論はない。双方向性であることは間違いなく、そしてセンサーである末梢器官から結果的に脳に情報が送られてくるからである。しかしながら、そこに脳の状態により心が左右されるということの前に、内臓や皮膚・筋肉が何らかの発信をしていますよと。つまりは最終的には情動の言語化には認知と過去の経験の照合が行われるのですが、その前にその情動の源にある体性感覚というのは、あらゆる器官が担っているということだということです。
 脳がパンパンに緊張した現代において、少し見つめ直す転換期に来ていることは間違いありません。アウトドアーという言葉も既に死後かもしれませんが、ランニングや山や自然への回帰がますます盛んになっているように、そこには脳とのバランスをとろうとする仕組みがあるのだと思われます。
 脳が大きな脳とするならば、内臓と皮膚・筋肉は小さな脳として、大きな脳の暴走からバランスをとる役割を担っているという視点。また自覚することで、より肥大化した脳とのバランスをとることができるのです。
 筆者は腸を「根源的情動」を生み出す元、皮膚は五感のなかでも「根源的な感覚」である触覚生み出し、筋肉は随意性という観点から「意思力」であり、感情表現に身体運動が自然に表出されるなどの情動や情緒の土台となっていると説いています。
 アリストテレスの提唱した心とは知情意から成ると考えたように、「感じる」ことにより「考えることができる」のです。ネット上の行為は、画面からの情報により感情が必要以上に増幅されます。そこには五感や情動といった根源的なものより、感情的という脳がやたらスパークしているのです。その本来情動の根源である、皮膚や内臓・筋肉などの器官がおざなりになってしまうのです。つまり意思→気分や感覚に応じた反応→動く。考える。という順序をすっとばしてしまうのです。

 「腸—脳—皮膚軸」仮説というものがあるらしいですが、その説の発祥は1930年代とのこと。しかしながら最近ではその説が正しいことが証明されているようです。心理的ストレスによりネガティブな情動が起こると、腸内細菌叢が悪化して悪玉菌が増えます。次に腸管の透過性が高まり、皮膚の炎症につながるという説だそうです。いわゆる腸内細菌を活性化させるようなヨーグルトがコンビニにもこれでもか!と並んでいますが、食物繊維をしっかり摂取することが大切であり、高脂質の食べ物を控えなければいけません。ビフィズス菌とよく耳にしますが、正常な腸内細菌の叢を司っているのです。腸内の透過性が増加するとエンドトキシンが全身を回り、皮膚にもその影響が出てきます。皮膚では細胞の炎症と酸化を引き起こし、サブスタンスPを上昇させます。さらにインスリン感受性が低下することによって、過剰の皮脂の分泌を促されニキビが目立つようになるという悪循環となるようです。
 まだこの書籍の一旦のみの紹介ですが、細く高くではなく広く浅くそれでいて、それぞれの関係性が同心円上に深みを増していきながら真理に近づいていっているような印象を受けます。
是非一読あれ!
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