運動連鎖道場in米子報告

骨盤輪

 GWの後半戦、5月3日ー4日の二日間、米子東病院にてvol.3 vol.4として股関節〜骨盤の運動連鎖について開始です。初日はまずは股関節です。股関節の機能とは促通とは何か?股関節は足関節とともに姿勢制御の中核を担っている部位となります。股関節は足底から受けるあらゆる刺激に対して即座に対応し、股関節を介した体幹の自由度へとつなげます。
またこの股関節は仙腸関節と連動しており、骨盤が不動の状態では姿勢制御そのものの能力が著しく低下してしまいます。
以下に骨盤に関連する言葉による使い分けとイメージを記します。

⑴仙腸関節:徒手療法・荷重バランス
⑵骨盤:姿勢・姿勢制御・歪み・矯正
⑶骨盤輪:産前産後・重心の動的コントロール・stability

仙腸関節といえば、リハビリにおいては徒手療法のイメージが先ず浮かびます。何故なら関節運動学的なアプローチとして整形外科医が仙腸関節に帯する徒手療法を開発したことで、医療業界にて医師にも広く知れ渡ることになるからです。つまり、医師の認知度が高いということは、リハビリにおいても非常に使いやすいということになります。
 このモビライゼーションや関節副運動に対するアプローチは、仙腸関節の特に仙骨をクローズアップされることになります。仙骨のうなずきと起き上がり、この仙骨の矢状面における運動をベースとする考え方が我々の中に刷り込まれています。つまり、仙腸関節と言えば仙骨に対するアプローチという概念が余りにも強く残っており、そこから動的な骨盤輪という発想になかなか行き着かないのです。
 そして骨盤です。この骨盤は前傾と後傾という矢状面の傾きにおいて、腰椎〜脊柱全体の彎曲に影響を与えることで姿勢分類されています。この姿勢分類は理学療法においても、かなり初期の頃からメジャーな指標として浸透しており、我々の中にも骨盤の前後傾が大きく姿勢に影響を与えいていることの認識があります。
 また力学的な関節モーメントという概念において、骨盤後傾が膝関節に与える影響が示されることによって、さらに骨盤の空間における前後傾が理論的に着目されることになりました。
 しかしながら、この骨盤の前後傾は後傾であることが総じて問題となることを示していたため、後傾悪説として一元化された考え方に至ってしまいました。つまりは、実際には骨盤が後傾が問題であるとされたとしても、実際には前傾にするということの難しさがあったのです。特に高齢者においては既に不可逆的な変化を期待している骨格形において、この骨盤の後傾という問題に対して具体的にどのように対処するべきかの回答が見いだせずにいました。確かに上半身重心と下半身重心が鉛直垂線上に一致するということが、姿勢バランスとしての大枠は当てはまるとしても、そこに至過程においてはあらゆる要素を補完しながらたどり着く必要があるのです。つまりは、針金の人形を粘土細工のように自由に動かして揃えるようにはいかないということです。物理的な伸張と収縮を当てはめたアプローチをしたとしても、身体イメージのアップデートはプラモデルを組み立てるようにはいかないわけで、いくつものパラダイムシフトを繰り返す必要があるのです。
 つまりは、後傾しているからといって前傾のためにハムストリングスをストレッチして大腿四頭筋を収縮させ、アキレス腱を伸ばして、前脛骨筋を促通するというような機会論的なコンセプトでは、変容を促すことは難しいということです。
 つまりは、ブロックを組み立て直すような作法ではなく、姿勢制御としての自由度を拡げることによって、結果的にセンタリングするなどの、姿勢イメージの醸成のメカニズムを理解して、人が本当に学習することで健在化していく過程を踏まなければいけないのです。よって、そこにはこの方法を施術すれば直によくなるというような類いの思考では駄目だとということです。

骨盤の後傾悪説は理想としての前傾位が前提となっています。では骨盤の前傾が何故に大切なのかを改めて述べていきます。
⑴腰椎のアライメントに対する影響
⑵肩甲骨に対する影響
⑶下肢関節に対する影響
⑷歩行における影響

大まかには以上の4点になります。
 骨盤の前傾の延長線上に腰椎の前弯がありますので、後傾位にあるということはそれだけで、腰椎の5番を後方に牽引することになります。それは腸骨と腰椎をつなぐ腸腰靭帯という連結があるからです。この靭帯によるつながりは腸骨の変位が下部腰椎に対する影響の大きさを示しています。結果的に骨盤がというよりも腸骨と腰椎との距離が問題であり、腸骨が後傾することにより腰椎5番が後方変位をおこし、結果的に腰椎の4番・3番が後方に引かれる力に拮抗して前方位に戻す役割を担うことになります。つまり5つの腰椎にて前弯を担っていたものが、サッカーで言えば1人退場した数的不利にてプレーしているようなものなのです。それも常に押し込まれている状況下でということになります。
 この前後の引き合いが、腰椎の無分離辷り症につながります。骨盤の後傾という視点と、仙腸関節における腸骨の変位という組み合わせに寄って、前者が姿勢に対して、後者は分節的な変位に対しての考察ができるのです。

 では骨盤の前後傾という姿勢に対する影響は、まさに重心が後方にかかってしまうということによる弊害です。踵にのってしまった重心は、補正作用を発動させなければいけなくなり、頭頸部の前方変位、肩甲骨の前方位、膝の屈曲位といった姿勢対応がみられます。その対応は重力線に対して立ち直ろうとする作用であり、そして前方に重心を推進させるための方略という二つの役割を担います。この骨盤の前後傾を、関節モーメントにて説明することにより、メカニカルストレスの機序を説明するための有効なツールとなってのです。
 しかしながら、昨今の脳科学の進歩により、生体への感覚入力は骨関節の作用は万有引力という絶対的な法則に則ってはいるものの、あらゆる感覚モダリティにおける生体の情報処理により、姿勢も動きも変化することに気がつくことになったのです。そして一番は身体感覚という、その人にしかわからない主観的な感覚において、構造的な組み立て直しというロジックは、人本来の治癒という満足度を置き去りにしてしまう危険性をはらんでいたのです。
 
歩行における影響
 今月の米子道場においては、実はこの歩行における骨盤の作用として腸腰筋との絡みをより強調してレクチャーしました。一日目の土曜日はまさにこのテーマのみで費やしたといったもいいでしょう。つまり骨盤の前傾という条件がより重心を前方に運ぶための一条件となりますが、そのなかで仙腸関節がどのような役割を果たしているかということです。まず前提として関節は骨は、筋肉が作用しなければ動かないということです。つまりは仙腸関節も何かしらの筋の作用があってこその動きの誘導となるのです。確かに仙腸関節の主動作筋というのは直接にはありませんが、寛骨には多くの筋群が付着しています。床反力の作用線によって受動で関節が歪みやmobilityが生じるということは、そもそも筋の作用があるからなのです。この重心を前方に運ぶということのためには、骨盤が前傾が必要ですが、歩行においては二足直立歩行であるわけで、片脚が前方位にあるならば、対側は蹴り出し側として伸展位にあるのです。そこでは骨盤という塊の前後傾だけでは説明がつかないのです。よって、踵接地において腸骨とそして腰椎とが、時間差をもって連動しながら作動することになるのです。
 腸腰筋が腸骨筋と大腰筋に分かれている意味はそこにあるのです。ローディングレスポンスにおいて、踏み出し足側の寛骨が後傾に回転してしまったのなら、臍にある重心そのものがリードすることは難しくなり、前述した不良姿勢にて代償がみられることになります。よって、ヒールコンタクトにおいて既に腸骨は前方に回転することにより、床反力が後上方に返ってくる力を絶妙に進行方向に転換する機構が働くのです。そしてさらに骨盤が前方に並進運動することにより腰椎前弯との位相差が生じることで、推進性が向上するのです。つまりヒールロッカーとアンクルロッカーはほぼ自動的に転がるように作用することが理想であり、そのためのメカニズムが仙腸関節にあるということです。そして遊脚に移行するにあたり大腰筋が伸張され、これまたブランコのような振り出しにつながるのです。
 つまりエクササイズとしては大腰筋を促通するためには、股関節伸展位でのセッティングが有効だということです。この大腰筋が有効に働くためには、腸骨筋が腸骨を誘導しやすい環境であることが不可欠なのです。つまりは腸骨筋は大腰筋の呼び水になるべき筋肉であり、腸骨の動きが腰椎の連動性に不可欠であるということなのです。そして、この重心の移動、荷重における負担の軽減のための作用として、足部が重要な働きを担っているため、この足部アーチと重心の移動作用である腸骨筋と大腰筋を連動させたエクササイズが有効となってくるのです。
 
スポンサーサイト

コメント:0

コメントの投稿

トラックバック:0