多裂筋とぎっくり腰の関係

多裂筋由来のぎっくり腰~背筋のアウターとインナー~

 多裂筋が腰部のスタビリティに関与していることは間違いありませんが、なかなか固有に働かせることは難易です。
教科書では、腹横筋の収縮と連動して働くとあります。説明としては多裂筋がチャックのような役割で、脊柱を締め、筋膜を介して腹横筋がコルセットのように働くとなります。考え方によっては、腹横筋を働かせれば自動的に多裂筋が働くとも考えられます。何故ならば解剖学的につながっているからです。
 しかしながら、事は理論通りにいかないもので、実際に多裂筋の収縮を感じ取ることの難しさがあります。
腹横筋であれば超音波にてモニタリングできるわけですが、多裂筋は何かの指標にて働いていると判断しなければいけないからです。
 うまく連動した時の指標としては、脊柱のスタビリティを保持しながら、腹部にも入っている両立です。
現象としては、腰椎の前弯を保持できているか?もしくは形成されているかが視診としてのポイントになります。
よって、腹横筋を意識して腹部前面に意識を向けると、多裂筋の入り方が不十分になることがあります。
つまり腹横筋が働いているからといって、関連部位や筋群の働きは一様ではないということです。
例えば、腰椎は屈曲位でも伸展位でも、腹横筋は働くのです。腹横筋至上主義になれば、入ることに意味があることになりますので、その辺りの関連要因がおざなりになってしまいがちです。
至上主義の怖さは、応用が効かないということです。説明もこれをやっていれば大丈夫ですと、断定することができる半面、他の可能性を排除することになるからです。
これが真理だと信じることは自信にはなりますが、その精神的支柱を失うと同時に、思考の展開をトレーニングしていないため、ステレオタイプの施術家になってしまいます。
腰椎の生理的前弯が指標となるのは、脊柱の安定性には椎間関節の適合性が不可欠だからです。つまり適合性が、解除されているということは、いくら筋肉が働いていても、それはアンバランスな状態であるといえるのです。

例えば腰椎屈曲位にて腹横筋が働くと、固有背筋が過度に緊張することになります。多裂筋をインナーとするならば、最長筋や腸肋筋はアウターとなります。
ただ背筋の場合は、背中に張り付いている状態であり、背骨にまとわりつくように並走しているため、腹部のように機能的なインナーとアウターには分けられない特性があります。
つまり最長筋などは、インナーの延長線上にある、セミインナーとも言うべき役割を担っているからです。
何れにせよ、背筋の第一段階の考え方としては、背筋がリラックスした状態にて働かせるという原則があります。
背筋は硬くなることが多いですが、これはコンパートメント構造による筋の収縮や弛緩という考え方ではなく、構造体としての特性なのです。
つまり中腰姿勢にて作業が出来るのは、この構造体としてのフォローがあることによるのです。筋の収縮だけであれば、おそらく数分ももたないと思います。どこの筋肉であっても持続的な収縮を維持することの難しさは、明らかです。何時間も、かなりの長い作業時間やリフトに耐えうる力を発揮するのは、筋の収縮だけでは到底無理なのです。
つまりコンパートメントという筋間中隔の構造体によって、物理的な力を利用しているのです。
これはテンセグリーなどとも同じことが言えます。膜系の働きにおいて、テンセグリー理論が引用されることがありますが、膜の一枚はただのペラペラです。しかしながら、中空構造でありながら、マッチ棒のような棒の組み合わせにて、崩れない構造体ができるのです。

よって運動連鎖アプローチでは、基本的にはコンパートメントを働かせないで、体幹を使うことを推奨しています。コンパートメントは、重たいものを持ったりと、人が二足直立にて手を使うようになって、支持するための新たなメカニズムとしての背筋が必要になったのです。
 しかしながら、現在は重たいものを持つこと自体ありません。スポーツにおいては、背筋は使いますが、合理的な身体操作が必要なわけで、いきなりコンパートメントを使う場面にはならないのです。
 故障の予防という観点からも、コンパートメントを使い続けることは、何れインナーの弱化を招いてしまいます。
まず固有背筋と腹直筋の緊張は、腸腰筋の低下につながります。これは前後とセンターの柱の関係にて説明できます。多裂筋の場合は、さらに固有背筋との境目がはっきりと分かれていませんので、使い分けはさらに難しくなります。つまり背筋のリラックスを意識しながら、腰部のエクササイズをすることによって腸腰筋の促通ができるのですが、急性腰痛に陥るパターンにおいては、この背筋の適度な筋緊張への回帰ができません。
 つまり持続的に緊張状態にあり、必然性のレベルにまで高まっているのです。
 必然性ですので、これは直接弛めようととしても無理です。何故ならば他に原因があるからです。
反っても曲げても違和感があり、そして背筋の緊張が落ちない状態が見られる時は、多裂筋の萎縮、退行を疑うといいでしょう。つまりより深層の多裂筋はインナーマッスルとしてモビリティレベルの動きを誘導しており、その副運動が無ければ、アウターでの誘導は全て関節運動に不全を引き起こし痛みとなって返ってきます。
 反って痛いのは、反り過ぎではなく、深層の背筋の誘導ができていないからです。そして拮抗するのが大腰筋ということになります。拮抗筋は弛緩ではなく、制御の働きをしていますので、弛んでいては駄目なのです。正常な筋緊張がキーワードであり、伸びやすく収縮しやすい緊張ということになります。決して筋緊張は弛む、硬いという二元化ではないのです。
 曲げた時には当然、最長筋がぴーんと張って、違和感となります。その張りは仙腸関節のロックと対側の背筋の緊張となって固定に入ります。これは必然性のある固定のメカニズムであり、解しても意味が有りません。
 伸展では、副運動を誘導できないためメカニカルストレスがかかり椎間孔が狭小化しやすくなります。
よって伸展屈曲ともに質的なmobilityの制約を受けるも、脊柱としての可動域は正常ですので、そのギャップが動作時のぎっくり腰となるのです。筋にコントロールされない椎間の動きによる、筋肉、靭帯、椎間板などのメカニカルな損傷につながっているのです。
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