脊柱固定術後のリハビリテーション

脊柱固定術後の理学療法とは?

 脊柱固定術は脊柱の変形や狭窄症、そして不安定症に対して固定をすることで、motor segmentのinstabilityを改善するための有効な術方法として確立しています。もともとは腰痛の原因は何なのか?と突き詰めた結果、脊椎の不安定性が根底にあるという前提をもとに成り立っています。よって神経症状などが不安定になることで生じているならば、それは固定するということは理にかなっているということです。当然、ひどい神経症状や体動困難となるような腰痛は改善します。歩けないようになるのであれば、それは固定という本来有している可動性を損なったとしても、選択するに値するものなのです。
 しかしながら、昨今の急性期、回復期、そして介護保険下のサービスなどの在宅リハビリ、などの地域リハビリテーションという生活そのものを見る医療という視点が主流となるなかで、その治療という価値観に別の視点が出てきました。このような時代の変遷は高齢化社会を反映していることは明らかで、レントゲン像にて良くなったという医療は、患者側に立った場合は必ずしも一致しないことがあります。
 ともすれば、気のせいだ、気にしすぎだ、心療内科に行った方がいい、と行った風潮が未だにあります。デカルトの心身二元論の流れは、まだまだ色濃く残っており、画像などの診断として明らかでない事例については、心身という精神論ではない、医学としての知見が不可欠なのです。つまりは、認知症が過去には、好ましくない表現にて表現されていたように、現在においては病気として解明されつつあり、より理解と対処方法などが広まっています。
 
 前段が長くなりましたが、脊椎固定術後の予後について、特に多椎間の固定術が昨今において散見されるようになって、その後の臨床症状における情報が少ないと思われます。固定術の有効性が、多椎間においてもinstrumentationのような適応になってきていることをみると、止めてしまえば楽なるという解釈であり、矯正という意味合いと、不安定性のある脊椎の固定という二つのメリットを重ね合わせたものとも言えます。
 レントゲン上は単なる固定された脊椎が増えただけで、より梁が多くなると丈夫になるという大工的な考え方もあるでしょう。しかしながら、人は姿勢制御という重力下において、制御にて動いています。そして運動連鎖という、単一の関節が動くだけで完結する動作もなく、実際に生活場面においてはどのような影響ができるかが明らかでありません。私は何例か、固定術後数ヶ月たってから、つまりは退院後しばらく立ってから、いてもたってもいられず病院に受診してきてリハビリ再オーダーを出さざるを得ない事例を体験してきました。
 気のせいというようなレベルではなく、本当に辛くて仕方がないというのが現状です。見た目もレントゲン上も問題がないように判断されるため、診察レベルでは既にお手上げとなってしまいます。投薬や注射が効かないとは言いませんが、少なくともすごく効く人も居れば、効かない人もいることの事実は病院にいればよく見かけているはずです。
 この薬理学的な作用機序でない痛みや症状については、メカニカルなストレスであることが多いように感じます。つまりはメカニカルなストレスの結果生じる炎症を抑えるのが、薬の本来の役割であって、そこにサポーターやコルセットのような固定制の役割は持ち合わせていません。ではコルセットにて良くなるか?と言われると、これもグローバルな固定であって、ローカルマッスルと言われるインナー系の安定性に関わる機能はありません。ましてや腸腰筋が担っている軸機能としての代わりはコルセットにはなり得ないのです。
 それこそピンで止めたかのような作用は、薬もコルセットも適応外なわけで、結局は自らの固有筋群によって、そして動作指導によるストレスの回避という手段をとらざるを得ないのです。
 これが、運動療法やリハビリが必要とされる所以であり、適応となる判別の考え方なのです。
ただ固定術後のリハビリにおいて、一応のフォーマットというか方針があり、ほぼその方法に準じてプログラムを遂行することで改善が認められます。一発で良くなるというような類いのものではありません。
 それは前提条件として筋肥大が欠かせないからです。筋の使い方やバランスは一時的には良くなるものの、生活動作そのものに耐えうるものではないのです。ただ方針として間違っていないかどうかということを確認するための手段として、一時的であっても改善する方法は評価に値します。

リハビリの方針としてフォーマットを作っていますが、おおよそ以下のようになります。

前提1 背筋をベースとする。肢位:うつ伏せ
 私も当初は腹筋などのstabilityをベースとしてリハビリをしていました。それはどうみても体幹の機能を上げることが絶対的に必要であることは疑い用のない事実だったからです。
 ところが固定術とはもともとは屈曲を強要することは禁忌であり、もちろん回旋などの捻ることはもってのほかです。ただ側屈や回旋は抜きにしても屈伸のどちらを優先するかというと、伸展になります。
 それは、まだまだ検証しなければいけない事項が山ほどあるなかでの、事実として背筋をベースとすることが症状の緩解につながってくるからです。
 解決すべき疑問と事項
①脊柱固定術により、どこの筋肉が主に低下する傾向にあるのか?また背筋とした場合、その背筋低下は固定するとより顕著になるものであろうか?
②メディカルリハビリにおいては、体幹のトレーニングは主に仰向けで行うことが主流となる。その仰向けにおける体幹トレーニングでは背筋の活性化の効果はどうなのか?

つまりはこの上記のヒントになる理論は、①抗重力にあります。つまりは抗重力における動作は姿勢制御が働くことで、自ずと正中重力線からどのように傾いているかが鍵となります。
 そして二つ目は②意識となります。この意識とはエクササイズにおける筋肉という発想では、その時の身体イメージの変容と姿勢制御における適応がどのように成されるかという視点が欠けています。今までは要素還元的な視点で、筋肉と姿勢制御という観点をミックスしてきませんでした。筋肉が強化されて付けばいいという、その発想の原点はやはり問題を限局させることで、治療する取り除くという、西洋医学の大本の前提が関わっています。
 そこに東洋思想とはまた違う、生活という全体性が新たな哲学として考え方として台頭するなかで、エクササイズも再考されつつあるのです。
 
では背筋をベースとするアプローチをうつ伏せを第一千択として用いるのは何故か?
仰向けでもブリッジングなどの方法にて背筋を促通することはできるだろう、と言われればその通りなのですが、
そこがポイントで、重力に対してどの面を上に向けるか!が大切なのです。そして身体の表と裏のどちらに意識を向けることで、姿勢の反応がどのように変容するのかも心理的な反応として臨床では留意すべきことなのです。
 よってうつ伏せにて背筋を意識するという選択がまず行われます。
そしてどのようなエクササイズが安全で有効かも知らなければ行けません。
 うつ伏せも、大概は高齢者であることが多いので、お腹の下にクッションをはさみます。そして顔を上げてもちょうど床面と水平位になることで、背骨をそることなく背筋を促通することができます。
 そして仙腸関節不安定症と同じく、深部縦系を意識したレッグカールを行います。うつ伏せの効果は腹式呼吸を行うと、腹部がクッションにて圧迫されているため、自ずと背面の膨張を促すことになります。それが結果的に仙腸関節のアウトフレアを呼び込み、背筋群の促通にもつながるのです。
 
 そして固定術後における考え方の大切な前提は、残った機能にて代償するということです。代償は時として良くない作用としてイメージがありますが、姿勢制御における配分をどこが受け入れるキャパを有しているかを見定めることです。固定されているということは、それだけ床半力を緩衝するためのパーツを失っている訳で、許容量が減少しているのです。そこは、身体のどこが受け入れる伸びしろがあるかを考えるのです。
 背筋については背骨が固定されていることによる本来の動きができず、周りの筋群が萎縮して低下することが容易に予想ができます。よって傍脊柱筋を始め、背骨の周りを取り巻く筋群にて背骨を補強しなければいけません。そこが体幹というイメージにおける、腹部ではなく背筋というイメージによる軸機能をベースとすることで、腹部の筋群は自ずとコルセットの役割に集中させるのです。何故ならば、柱のない構造は、いくら壁を厚くしても一度外力が加わると容易に崩れてしまうのです。

 よって背筋をベースとするアプローチとは深部縦系が自ずと絡んできますので、骨盤底筋などは必須となります。
そしてうつ伏せの姿勢にてある程度効果が出てきたら、四つ這い、両膝立ち、片膝立ちへとエクササイズ姿勢を変えていきます。つまりは腹部を意識したエクササイズそのものが悪い訳ではないのですが、腹部の前を意識するということは姿勢反応として前屈みになるのです。この前屈みは実は固定された脊柱が直立のまま前傾することになるので、仙腸関節や臀部に負担が過剰となり、愁訴の背景となるのです。
 よって背筋つまり背部を意識することは、自ずと姿勢制御において前屈みではなく、より背筋に負担をかけない直立姿勢の獲得につながってきます。
 また脊椎が多椎間にて固定されている場合は、直立姿勢そのものが後ろにのけぞっているかのような意識にもなるようで、そのため結果的に前屈み傾向になり、生活場面にて負担がかかってしまうのです。
 すると股関節は屈曲、膝も屈曲、頭部も前方位にすることでカウンターのウェイトにて制御をすることにつながりやすいのです。このような一連の姿勢反応は姿勢制御のキャパシティを狭くしてしまい、より背骨に負担をかけることにつながるのです。よって一日起きていることそのものが辛くなり、一日の中で横になることが多くなってしまいます。
全身の廃用が進行し、体力やフィットネスの低下に伴う機能低下が加わり、ますます背骨の愁訴が増長してしまいます。心理的にも当然よくなく、原因もわからず、対処方法もわからずとなり、困っている患者さんが全国に沢山いるのではないかと察せられるのです。
 是非、皆さんも既に医療における治療が終了していて、自立はしているものの生活に支障をきたし、といっても介護の適応でもない不定愁訴の類いに入る可能性がある事例だということです。
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腰椎固定手術後の問題

Easton
68歳男性
昨年11月に腰椎不安定性によりL5/S1間な固定手術を受けました。
3-4ケ月はコルセットをしてまして
腰の問題は無かったのですが、コルセットを外し普通の生活を始めたら腰が痛く未だ治りません。鍼、整体、トリガーポイントブロックなどいろいろ治療しましたが駄目です。手術した病院はリハビリ施設はあるものの入院患者だけで退院後のリハビリは出来ません。石川県内で運動連鎖リハビリが出来る施設はありますか?

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