仙腸関節不安定症のスクリーニング方法

仙腸関節不安定症の症状と生活指導

 仙腸関節不安定症については、兼兼、学会レベルにまで昇華して世間への認知度を高めたいという意識は常々申して参りました。それだけ知られてない病体であり、そして診断基準と治療方法が確率されていないため、困っている患者さんが山ほどいらっしゃるのです。
先頃も、数ヶ月前より痛みのため様子をみていたのが、ここ数日で一気に悪くなり、寝返り起き上がり、歩くのも支障がでるぐらいにひどくなったという患者さんが見えました。診察でも脊柱間狭窄があるものの、臨床症状とは一致しません。
 結論からすると仙腸関節不安定症としても、臨床症状が確認できます。最も顕著な所見は、仙骨を押すと明らかな違和感や痛みが生じるということです。ぐっとではなくそっとおすだけで、仮にじん帯が緩んでいたと仮定するならば、そのたわみは患者自身にしかわからないレベルにて、痛みとなります。その微妙なたわみは、治療者側からもわからにあぐらいのものです。つまりはエンドフィールを感じない域にて、既に心理的な制限がかかってしまうのです。
 大概は、運動器の機能障害といえば、エンドフィールからのたわみなど、いわゆる最終域での質的なモビリティを評価します。しかしながら、靭帯損傷などの明らかな不安定性がある場合や、防御性の収縮のような必然性のある筋緊張がみられる場合は、心理的な防御つまりは不安感apprehensionがみられます。もともとは関節の不安定性の評価は、pain、apprehension、instabilityの三兆候をみます。その一つである不安感がでるのです。肩や膝であればinstabilityは徒手的なスクリーニングで明らかです。なぜならば動きの幅が大きいので徒手的な差として十分わかるのです。しかしながら仙腸関節のようなもともとが小さな可動性の関節では、正常の範囲も微妙ですし、ましてやガクガクとはっきりとわかるような所見もありません。

スクリーニングテスト1
「問診」

これはどの病体でにおいても必要不可欠な評価ですが、特に仙腸関節不安定症の場合には、明らかな座骨神経痛や狭窄症とは違います。臀部から大腿外側にかけてのつっぱりなど、神経症状もみられやすい部位ではありますが、その所見が少しはっきりしないなという印象です。不安定性がベースにあり、その不安定性に筋緊張もとまどっているような感じですね。つまりは筋肉は起始と停止部の安定性がなくては、基本的には関節運動の遂行に支障をきたします。つまりは梃でもそうですが、支点が定まっていなければ、力点からの応力が作用点にうまく伝わらないわけです。

スクリーニングテスト2
「仙骨への押圧テスト」

 仙骨を前方に向かって押すと、apprehensionがみられます。おそらくinstabilityも明らかにあるはずですが、徒手においては感じられないレベルであることが多く、またエンドフィールまでいく前に心理的な不安感がきてしまうので、あくまでも患者自身に問いかけながらの検査となります。よってここで知るべき情報は、押したときの自覚的な愁訴について聴取します。基本的には片側性であり、稀に両側にでる場合もあります。
 痛みへの閾値は下がっており、軽く触っただけで違和感となって出てきます。
 例)仙骨から腰椎の横突起のラインにかけての違和感や圧痛など。

スクリーニングテスト3
「体動時痛」

 動作時痛ともいいますか、いわゆる起き上がり、立ち上がり、歩行動作において痛みと支障が出ます。

 スクリーニングとして腹圧や骨盤底筋の収縮を促しながら動作をしてもらうと軽減がみられます。つまり治療においても効果的な方法を、そのまま評価として用いることで感度をみるのです。

スクリーニングテスト4
「仙骨の起き上がり、うなずき運動の確認」

 確認としてのは、他動的な評価ではなく、あくまでも能動的な動的な機能をみる評価ということです。
①呼吸
 まずは呼吸により仙骨のカウンターニューテーションをみます。うつぶせでも座位でも構いませんが、楽な姿勢にて評価します。つまり既に体動などが困難である場合も多く、理想はうつ伏せなのですが、あくまでもその時の楽な姿勢ということです。立位や側臥位においても同様で、十分評価できます。キューとしては「骨盤の後ろで呼吸してください」仙骨を出すようになどと言うと、抽象的ですが患者さんもその意図を十分理解できるようです。
 まずは仙骨が呼吸によって、吸気によってカウンターニューテーションに誘導できるかどうかを確認します。

②脊柱起立筋
 仙骨の評価とともに呼吸によって見れるのが、脊柱起立筋になります。脊柱起立筋、特に仙骨に近い腰椎部位のあたりの繊維となります。呼吸によって膨らませてください。といったキューにて十分その意図が伝わります。つまりは脊柱起立筋の機能が仙腸関節不安定症には不可欠なので、その機能と筋腹のボリュームを確認します。

スクリーニングテスト5
筋収縮

①骨盤底筋
 実は最も治療効果の高い、そして即効性のある改善効果のあるアプローチは骨盤底筋になります。一般的には尿失禁や尿漏れといったウーマンズヘルスの領域にて広まっています。もともとは骨盤底筋というのは、あたかも骨盤底の機能に特化した機能のように捉えられがちですが、骨盤輪に影響を与えることは明らかであり、その隠れた効能については知られていないのが実情です。内転筋~骨盤低筋~腸腰筋~横隔膜の一連の連結は、一つのセンタリング機能として重要な役割を果たしています。また尾骨に付着する骨盤低筋は、尾骨座骨筋、尾骨腸骨筋、尾骨恥骨筋があり、明らかに仙骨に対する作用があることを示しています。尿失禁などに対する対象はむしろ、球海綿体筋や肛門括約筋であったりするわけですが、骨盤低筋のもう一つの重要な作用である、骨盤の閉鎖力、体幹のstability、そして姿勢制御における推進作用などの考察が必要です。これらの局所的な部分作用ではない、動きや動作に関わる骨盤低筋としての作用に言及していくことが理学療法の責務となります。
 さて、スクリーニング方法ですが、これらの骨盤低筋は左右一対を成しており、左右差があります。つまりは、左右別々に機能させることができるのです。よって、この片側の骨盤低筋作用を評価することで、機能障害の改善の可能性をみていきます。骨盤低筋は呼気により収縮を促すことが原則となりますので、そのときに尾骨を中に入れ込むように意識してもらいます。この尾骨を中に入れるということは、犬がしっぽを丸め込むようなイメージとなります。そして、尾骨を屈曲させるということは仙骨そのもののカウンターニューテーションを促すこととなり、結果的に閉鎖力を葉働かせることができるのです。その状態にて動作や体動をすることで、もし愁訴の軽減がみられるようであれば、仙腸関節不安定症の可能性とそして改善方法の示唆となるのです。

②ハムストリングス

 これは深部縦系と言われる、ハムストリングス~仙結節靭帯~脊柱起立筋の系の促通となります。レッグカールにて抵抗をかけると患側は安定性がなく、力の入りにくさを感じます。
 厳密に言うと胸腰筋膜の伸張性を介して、腰部全体のstabilityを促すことにもなっています。ようはハムストリングスを介する方法、うつ伏せでのレッグカールそのものは、単に膝屈曲に作用するということだけでなく、体幹も含めたstabilityの評価となるのです。そのときに座骨を介してハムストリングスが働くことにより、その平衡機能として胸腰筋膜や脊柱起立筋がstabilizeとして働き、結果的に骨盤の前傾位となります。これには膝屈曲による大腿直筋の伸張による尻上がり現象も相まって、座骨の牽引作用としてのハムストリングスという本来ならば骨盤後傾として働くであろうはずが、結果的に骨盤前傾位となることで綱引き状態が生じ、その均衡のためのstabilityが働くのです。
 そのときに、より閉鎖位を保つために閉鎖力が働き、仙腸関節のfixationが得られるのです。

③腸腰筋
 そして何と言っても最も顕著に機能低下のおこる筋肉が腸腰筋です。もともとは、それこそ20年前近くに片側の腸腰筋の機能不全患者を立て続けに外来にて見たことが、今日の仙腸関節不安定症という概念に至っています。
 とにかく股関節の屈曲において、他動的に屈曲位に保持すると途端に滑落するように落ちてしまいます。それだけ力が入らないということです。これは純粋に筋力不足、つまり筋のボリュームが低下している絶対量としての問題か、それとも仙腸関節不安定症における機能不全なのかが問題なのですが、動作時に困難を期待しているような段階にある患者は不安定性からの機能不全に留まらず、やがて筋力の発揮不全が慢性化することで弱化と萎縮に至と察せられます。
 スクリーニングとしてはいろいろな肢位にてチェックできます。座位が一般的ですが、立位でもより難易度の高いテストとして活用できます。スポーツなどのより活動性の高い動作を必要とするクライアントには、より難易度をあげるべきでしょう。


スクリーニングテスト6
動作確認

①歩行:仙腸関節不安定症の歩行における注意事項として、患側からの一歩にて閉鎖位が崩れ、その歪みを元に戻すための閉鎖力が弱っているため、そのまま愁訴となって表れます。よって、歩行時には健側から振り出し、揃え型にてあることを推奨します。健側→患側パターンでの歩行です。
 患側が軸足となることで、閉鎖位となり仙腸関節の不安定性を予防することができます。

②立ち上がり動作
 基本的には強制呼気に伴って動作を遂行します。つまり単純に言うと、腹圧を高めて動作するという腰痛予防のテクニカルと似ています。しかしながら、腰痛予防の腹圧とは違うのは、あくまで仙腸関節の閉鎖力を効かせるということです。その辺りの意識の差によって、結果が全く違ってきますので、見た目ではなく、どこにどのような目的をもって取り組むかを心がけましょう。

③持続的な座位姿勢
実は仙腸関節不安定症において最後に残る愁訴が座位になります。
持続的に座骨から圧迫が加わることにより、仙腸関節にストレスがかかるのです。もともと仙腸関節は骨盤の後傾、直立位になることで剪断力がかかりやすい条件となります。よって歩行や動作時よりも、最後に残る症状が椅子座位による痛みや違和感となります。現代の生活が座位姿勢の頻度が多くなっていることも無関係ではないでしょう。それだけ、座骨支持の座位というのは人間であるが故に、ライフスタイルに無理矢理適応させたアクティビティであったのかもしれません。生活の中では閉鎖位に保持できるように、もしくは閉鎖力を効かせた意識にて座位をとってもらうなどの生活指導が不可欠です。また座骨への床半力を軽減させるべく、円座などのクッションを用いる等の工夫も効果的です。歩き方、立ち方、そして座り方、動作変換など、生活における予防あっての、仙腸関節不安定症の根本的な原因である靭帯の安定性の獲得につながるのです。
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コメント:1

仙腸関節不安定症

飯塚 康介
私も仙腸関節不安定症の様な症状で悩んでいます。
専門的な治療を受けたいのですが、どこに行けば良いかわかりません。
教えていただけないでしょうか。

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