〜ミラクルボディ〜

〜ミラクルボディ〜

 7月22日日曜日、定期開催となっている大阪の枚方市にあります大潤会 みやのさか整形外科にて開催している、運動連鎖セミナーがありました。今回で5回目の開催になります。本日は石巻市からバスと新幹線を乗り継いで、午後のセミナーにかけつけました。東北から関西へ。この季節になると、気候がかなり違います。
 今回のテーマは足部です。足部といえばNHKにて放送されたミラクルボディを見た方も多いと思いますが、100m世界記録保持者のウサインボルトとマラソンの3時間3分台で走る3名のランナー、初めて3分台で走ったゲブラシェラセ、現世界記録保持者マカウ、そして世界記録にあと4秒とせまったキプサングが特集されていました。
 ウサインボルトは傾いた骨盤に曲がった脊柱そして大きく揺する肩と、おおよそ理にかなった走りとは言えない科学的に解析不能だという走りでした。マラソンの三人においても、常識とは違う前足部接地です。本来なら踵接地にて衝撃を和らげるということが常識のはずですが、それが前足部接地とは42.195キロを走るランナーとしては、ありえない結果でした。いずれも科学者の常識ではありえない、わからないという領域です。単に外観からの分析では計り知れないメカニクスの謎。もっと言えば、現実の前には科学は時に力を失ってしまうのです。もっといえば身体のメカニズムの何たるかは、全く分かっていないことがあまりにも多いということが言えます。
 常識とはあくまでそのときの人が考えるものであって、その全てではないということです。では、何故このような常識外のことが事実としておこるのでしょう。これは一重に意識の問題があります。実は今までも不可思議な走りをして記録を出していた選手はいたのです。我々はカールルイスのように、どこから見ても奇麗で華麗な動きのなかに世界最高を見ようと思います。我々のなかで世界一とはこういことだと決めつけている所があります。そうすると、実は目の前にあることが見えなくなる、見ようとしなくなる、認識しようとしなくなるのです。よって、誰かがその事実に気がついたり、改めて理論的に論じたりすると皆が気がついたように一斉に認識しだすのです。心理的限界とか心理的な壁を乗り越えると記録は伸びると言われており、その心理的壁とは人が皆有している、今ある常識や価値観を変えたくないという防御規制なのです。
 記録もある一人が破ると立て続けに続いていくという傾向があります。その心理的な壁を取り除くことこそが、世界記録への挑戦ということになります。
 今までも100mで世界記録を出した、ドノバンベイリーなどアンバランスな走りをする選手は多々居ました。レールの上を滑るように走る選手のほうが少ないのではないかと思われます。そのアンバランスの中にどのようなメカニズムが隠されているかを、創造して新たな切り口にて見なければ、常識の範囲にある専門家では何も分からないでしょう。所詮は眼に見える現象と外郭のキネマティクスだけで論じようとするからです。腕振りや肩甲骨の役割も何もわかっていないし、ましてや肩甲骨や骨盤そのものが平衡にてぶれないということが正しいとしています。
 またランニングを骨盤と下肢そしてハムストリングなどの視点のみにて分析しようとしています。骨盤も単に前傾などの一体化した形での解釈です。本当は骨盤とは仙腸関節という視点にて分析することが不可欠であり、肩甲骨も骨盤との連動性やタイミングにてみることが大切なのです。ボルトの傾いた骨盤と肩甲骨は実は、ある一定の法則にてリンクしている可能性があります。
 運動連鎖的には同側の前鋸筋と腸骨筋の連鎖性がみられます。つまり骨盤から下肢への動力としての動きだけでなく、実は肩甲骨と骨盤という動力源にて駆動しているのです。同側の骨盤と肩甲骨が連鎖しているということは、例えば右腕が前方に振られた時には同側の下肢は蹴りだしに働いています。つまり腸骨の前傾です。
 もともと短距離は前足部にて駆るように走ります。それはバネを効かせて飛ぶように走った方が速く走れるという論法だからでしょう。しかしながら、この論法が見事に崩れる事象がマラソンによってみられたのです。もともとエチオピアの選手は前足部接地であることは広く知られており、特にトラックでも数々の記録を有しているゲブラシェラセは前足部接地についてはこのほうが早さが出せると言っていました。しかし、それまではアフリカの選手は特別だという思いにて、一考だにされなかったと思います。やはりマラソンは踵接地だと。しかしマカウやキプサングは皆、ハイスピードカメラにて分析すると前足部接地だったのです。前足部から着いて踵にて接地します。この事実は既に常識の範囲外です。私も走るときも歩くときも踵接地だと思っていました。ただし踵接地において腸骨がしっかりと前傾しなかればいけない、よって踵と腸骨筋がリンクすると。そうするとPI腸骨は補正されヒールロッカーやアンクルロッカーなどの、筋力に頼らない梃子の力にて自動的に重心が前方に進むことができます。つまり、全てを下肢の力にて駆動することは効率としては悪いわけで、足からの反力をダイレクトに骨の中心に通し、骨盤の仙腸関節の前傾につなぐことで、重心の移動を促して下腿が前傾するというメカニズムです。踵がついたら前脛骨筋が働いて前方に進むというだけでなく、そこには上半身という大きな物体が乗っているわけですので、その前方へのトランスの方法があるのです。ランニングを足で脚で走るもの、そして三次元動作解析にて測定できる見かけ上のランドマークの変位に対してのみの分析では、選手自身には何も還元できません。その測定結果に対して、現場にてボルトに研究者が「君の走りは何故速く走れるのか説明がつかないんだ」と言った所「難しい話はいい。俺はランナーだ。そんなことはコーチに言ってくれ」とのやや不機嫌な返答でした。理にかなった研究者の頭のなかにある理論に当てはならなければ常識外ということは、まだ測定機器や論点や切り口の創造が乏しいといえます。また分析結果とどこを意識して走っているかということは、全く噛み合わない可能性が高いのです。
 もし理論的に理にかなったとしてもそれを実践すれば早く走れるかということとは別です。民族的な優位性を遺伝子や筋や腱の長さにて解明したとしても、なるほどとは思ってもそこは意識と鍛錬のたまものなのであって、選手にとってみればどうでもいいことなのです。

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