痛みとは何か?

肩甲間部の痛み

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現在、運動連鎖道場in海老名では11期生が学んでいます。2月のテーマは頸部~胸郭~肩甲帯でした。
その中に数年来?だったか右の肩甲間部に激痛を有している道場生がいて、何をやっても治らなかったようです。テーマが丁度格好のケースだったので、アプローチの度にその経過を追っていきました。
肩甲骨のstabilityに関しては、左の方がむしろ低下しており、本来であれば左に何らかの愁訴が出てもおかしくない状況でした。しかし左の肩甲骨のstabilityの欠如が姿勢の中で左肩の下制を招き、そして結果的に右の肩甲骨の挙上を引き起こしていました。またこの写真の被験者とは違うのですが、肩甲骨挙上において全て内転が同居しています。つまり純粋な肩甲骨挙上ができないのです。内転に伴う挙上しかできないということは、肩甲骨の上部のstabilityが低下しやすい条件がそろってきます。不安定性は筋緊張を誘発する最大の要因の一つです。さらに対側の肩甲骨の低下により、右側は必然的に挙上を余儀なくされてしまいます。そのメカニカルなストレスが原因であるとすると、右側だけでなく左側の肩甲骨へのアプローチによって何らかの変化を起こせる可能性が高くなります。
 実際に実技を進める中で最も顕著に改善がみたれたのが左側の肩甲骨stabilityの改善でした。その直後に長年の右肩甲骨間の痛みがほぼ無くなったのです。本人もびっくりしていましたが、圧痛もほぼ消失しています。ここで考察を間違えてはいけないのは、確かに要因としてはstabilityの低下があったでしょう。しかし、その施術前にあった激痛にも近い圧痛の消失の説明にはなりえません。その部位が炎症など明らかに怪我をしていたら、どこを調整しようとも痛いは痛いでしょう。今回のケースがその痛みが無くなったということは、別の機序が考えられます。
 今回の肩甲間部の痛みは比較的肩甲骨の上角に近い部位でした。しかしながら肩甲挙筋の付着部ではありません。頸椎のfacetやC7の変位が原因の場合は、ダイレクトに菱形筋の棘突起に近い部位に痛みが出てきますが、その何れでもありません。僧帽筋であればもう少しトリガーポイントとして直上部あたりに多く圧つができます。しかし、今回は圧痛というよりも、触って激痛というレベルのものです。普通なら相当の傷害があると思われるケースです。痛みは脳が感じるものです。この場合は違和感そのものを痛みという表現にて脳が表出したのではないかと考察するのが適当だと思われる事例になります。
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道場生の研修風景

「脳の痛み 心の痛み」三輪書店。という本があります。
かなり古い本ですが、おそらく最新の知見は他にもあるとは思いますが、十分に参考になるものと思われます。中枢性認知機構についての解説があり、そこでは最終的には痛みについての解釈は前頭葉にて行うとしており、その外部環境と内部環境のインターフェイスの役割をしいてるようです。前頭葉の特性上、個人の体験や記憶と密接に関連付けされて痛みを認知することになります。よって痛みの解釈は人によって相違があるということになります。
 私自身も痛みに関しては、メカニカルストレスだけでは説明ができない事例に遭遇することがあります。その中にもメカニカルと脳の認知の境界型があります。AKAの手技にて消失する痛みはある意味その混在型と言うことが言えます。しかしながら、その今回のケースのように痛みの質とメカニカルが少しかけ離れているよような場合、誘因はメカニカルですが痛みの質があまりにも違う様相を呈しているので、多分に脳の認知機能が働いていたものと思われます。
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コメント:2

No title

回復期PT
いつも拝見させていただき勉強させていただいております。
1つ質問ですが、先生のよくおっしゃられている頚椎と肩甲骨の運動連鎖について理解に苦しんでいます。
もしよろしければ、どの文献に記されているか知りたいのでよろしくお願いいたします。

Re: No title

山本尚司
頸椎と肩甲骨についての文献ですが理学療法第22巻第一号の巧緻性協調性の測定方法にて私が執筆したものがあります。

> いつも拝見させていただき勉強させていただいております。
> 1つ質問ですが、先生のよくおっしゃられている頚椎と肩甲骨の運動連鎖について理解に苦しんでいます。
> もしよろしければ、どの文献に記されているか知りたいのでよろしくお願いいたします。

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