頸部の屈曲

頸部の屈曲の不思議

 頸部の屈曲筋を眺めていると不思議なことに気がつきます。頸部の屈曲に働くまともな筋肉が存在しないのです。まともな筋肉という表現はどうかと思いますが。実際に解剖学の本にて確かめてみても起始停止の関係からいうと、ダイレクトな頸部の屈曲筋はなく複合的にその所作が行われていることが分かります。
前頸部の筋群は主に以下の4種類に分けられます。

①頭部の屈曲に関わる筋群
②頸部と肋骨に関わる筋群
③舌骨と喉頭に関わる筋群
④頸部の屈曲にに関わる筋

個の中で純粋に頸部の屈曲だけに関わるであろうカテゴリーは④になります。この④に関わる筋肉は頸長筋ということになります。C1の椎前部から胸椎に至る筋肉です。かなりマイナーな筋群とも言えます。

 頚長筋は、頚部の前側から上胸部の前側に張り付いている深層の筋肉(インナーマッスル)で、屈曲・側屈を組み合わせた運度の時に緊張しますが、触診できません。鞭打ちの障害で靭帯に緩みが生じると、これらの筋肉は緊張していることが多い。更に、筋膜性の障害が残りやすいと考えられます。(筋肉.guideより)

多くは頸部の屈筋は斜角筋や胸鎖乳突筋ということになります。しかしながら斜角筋は②にあたります。つまり肋骨に作用するということです。肋骨は安定性のある筋肉にとって起始停止部としては不適と思われます。つまり、第一肋骨は本来なら肋間筋の作用にて開閉する肋骨が、最上部の肋骨であるがゆえに情報への開閉が損なわれます。その情報への開閉を補うべく斜角筋があるのだと思われます。斜角筋は頸部の屈曲にも作用することはしますが、起始は頸部というだけであって本来の作用は肋骨の上下方向への働きかけだと考えられます。

また、胸鎖乳突筋ですが、これは①の作用であり。頭部の運動作用となります。鎖骨と乳様突起に付着していることからも頸部には作用しません。ただ人間の動きにおいて頭部と頸部を分けて考えることが少なく、実際にも複合的に遂行されています。この胸鎖乳突筋の過緊張は要注意です。特に乳様突起部の緊張は明らかに頭部の伸展に伴う頸部の伸展を促します。つまり本来あまりしてほしくない、胸鎖乳突筋作用の逆転現象になります。ベクトル上頭頸部が胴体に正しく乗っていれば問題ないのですが、いわゆる不良姿勢である頭部が前方突出位となることで胸鎖乳突筋の作用が逆転してしまうのです。この逆転現象によって抗重力位における頭頸部の屈曲運動時に、後頭下部のつまり感によるめまいの誘発。これは頸部の屈曲が弱く、頭部の前方突出における後頭部の伸展によって引き起こされます。よく頭を後ろに組んで強く屈曲させる腹筋の問題点は指摘されますが、併せて頭頸部の屈曲不全による後頭下の圧迫に留意することが不可欠なのです。

③の舌骨上下筋群においては胸骨と舌骨そして喉頭および下顎との起始停止であり原則的には頸部への屈曲に働きません。また肩甲舌骨筋は肩甲骨に付着していおり、この辺りの筋群は運動というよりも嚥下や上部平衡系としての作用がメインと考えられます。


人間が二足直立歩行という能力を身に付けた段階で喉は身体前面に向くことになりました。つまり四足であれば地面に向かってあった頸部前面が進行方向に変化したということです。もちろん四足にも前方を向いている動物はいますが、人間のように仰向けや座位そして立位などあらゆる肢位にて頸部の運動を強いられる動物はいません。分離した動きとしての巧みさを有する人間は、全てに対応できているわけではない未熟な運動機能となんとな繋ぎ合わせていると考えられます。そのweek pointを補うべく身体の使い方をテクニックとしてセラピストは有しておくことが必要なのです。
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