強さと速さ

Category: トピックス
箱根駅伝
強さと速さ


 第88回箱根駅伝が終わりました。今回は東洋大学が往復とも新記録で圧倒的な差で完勝しました。普通は速い選手が多いチームが勝ちそうなものですが、駅伝は不思議なものでそうとばかりは言えないところがあります。勿論、ある程度の走力がなければ話にならないのですが、駅伝は10名のそれも20キロに及ぶ長丁場です。なかなか10名の選手を20キロ走れるように仕上げるのには至難の技です。ピーキングといってコンディションをその試合にぴたりと合わせることは本当に難しいです。今までは経験がありますが、走ってみないと調子がいいかどうかはわからないというのが陸上にはあります。もちろん調整方法などもしっかりと熟知したうえで試合に臨んでいるわけですが、やはり走ってみないとわからないところがあり自分に期待していました。昨年21秒差で負けた悔しさを胸に一秒を削り出す練習を一年間積み上げてきたという東洋大学。端正な顔立ちの酒井監督のどこにそんな闘争心があるのかと思うほどに、負けたことに対するう悔しさを箱根駅伝の番組や紙面のなかでも節々に感じました。
 昨年も2位というのは悪くはありません。勿論負ければ悔しいですが、21秒差の2位で良くやったといってもいいはずです。日常生活や仕事のなかで勝ち負けにこだわり続ける生き方というのは、むしろ滑稽にも思える風潮があります。勝負の世界ですから勝たなければいけないのですが、勝負外の世界にいる我々はしっくりとこないところがあります。本当は日常においても全ては負けることそのものが悔しいと思えなければ向上はないのでしょう。よって頭のいい人が必ずしも社会人になって伸びてくるわけではないという現実を見るにつけ、速い選手イコール優秀な選手がその後活躍するとも限らないという現実があります。
 フィギィアの浅田真央選手やゴルフの石川選手などはどう見てもジュニアからのあの活躍ですから天才としかいいようがないですが、それでも勝負や競技に臨むその姿勢は見習うべきものが多々あります。
 昨年、負けた時から柏原頼みだったことを反省し、4区までにリードを奪うという新たなスタイルを確立しました。これは普通ならそんなことは考えません。他の大学が柏原対策で4区までに東洋から2分のリードをと考えて往路にスピードランナーを並べている現実をみても、その中でさらに5区までにトップでタスキを渡すことなどは本当の至難の技だったように思います。大学三大駅伝の出雲だったかで、東洋は駒沢に次いで2位となります。アンカーの柏原は最終区で1分40秒もの差を30秒まで縮めてきます。誰もが致命的な差で諦めていたところを柏原は諦めていないということを走りを持って示しました。またそこまで善戦したらよくやったと周りは思うし、そして本人もある程度はできたと満足するはずです。しかし柏原はそこでも泣きながらゴールをしたのです。もはや、どうしてそこまで悔しがることができるのかが分からないほどです。同じ競技者であっても、あそこまで勝つことにこだわり、そして表現できる選手はあまりいません。自分のなかで満足度を作ってしまうことが常です。私も小学生から中学生のころはとにかく負けず嫌いだったことを覚えています。いかし中学生にもなると周りの微妙な空気の変化を感じます。まーまーそんなに力まんでも・・・というような、真剣に取り組むことを揶揄するような空気を感じたことをよく覚えています。楽にいこうよ的な・・空気ですね。あんまり常にガリガリと真剣に取り組むばっかだと、周りとの軋轢を生むことも確かです。ある程度ユーモアや適当なところがないと、摩擦が起きるからです。しかし今となっては真剣にやることが基本であって、そこをスマートにとかしなやかにというスタンスは本物が何たるかはおそらく掴めないで終わるでしょう。真剣に魂をぶつけるからこそ生まれるものがあるのです。というか魂をぶつけなければ、何も動かないのです。
 軋轢を生むこと、それは真剣に取り組むからこそです。面白くないと思う人もできてきます。しかしだからこそ賛同者もでてきます。避けている生き方は自分が傷つかずにすみますが、誰も賛同もしてくれないということになります。楽しく謳歌するという生き方は誰もが憧れますが、生き方としてはやりたいとは思いません。
 話がそれましたが、今回の箱根はエースが目立っているチームは低迷する傾向にありました。何本柱というようなエースがいるにこしたことはないですが、そのエースが特別視されるチームは往往にして浮上できていませんでした。逆にエースの故障して往路を走れなかった明治大学は、見事3位に入りました。最終区にエースの鎧坂を起用するという本欄ならありえない区間配置にて、結果的に早稲田をかわしての3位ですので最後の立役者になったわけですが、その鎧坂なしでそこまでの順位で繋いできたというところに明治の次年度からの活躍が期待できます。早稲田は安全に昨年、大学三冠に輝くことで満足感と達成感があったと思います。油断とは言いませんが、明らかに前評判通りの4位でした。期待を裏切るぐらいの結果というものが強さです。順当に4位というのは強さがなかったということです。では強さとは何なのか?速ければ絶対的に有利なはずの長距離において、1万メートル28分40秒平均という駒沢が最も有利であったはずです。しかしながら往路で既に5分以上の差をつけられ、いかに柏原選手の山があるといっても、2分以内の差でゴールはしなければいけないチーム力だったと思います。サッカーでもそうですが、J1のチームがJFLに負けることがあります。場合によっては高校サッカーにだって苦戦することがあります。勝手当然という相手とやる時ほど嫌なものはないと、よくプロ野球選手も口にします。全身全霊を込めて常に闘うからこそ、能力は引き出され実力が発揮されるわけで余裕をもって勝てるということはあり得ないのです。臨床でも知識と技術が身に着けば臨床効果が上がるかと言われると、これはノーであることは経験的に分かっています。臨床においても心技体です。私にも心技体の心が足りないことは重々わかっていて、その答えを被災地の中で少し得ることができたように思います。経験のあるベテランが必ずしも戦力として活きているわけではありません。若手の勢いそのものがその場面では必要であることも多々あります。ベテランというのは経験知はありますが、その経験は自らのperformanceとしては表出されないことのほうが多いのです。引退を考えるときは肉体的な衰えよりも気持ちの面だと思います。相変わらずいつまでもというか競技能力が落ちても現役を続けている選手が多くなりました。やはり気持ちの衰え、体よりも頭で考えだすと身体は動かなくなります。考えて動くことでリスクは減るかもしれませんが、結果を出すためには考える前に無意識のレベルで動かなければいけません。考えて動くと予想の範囲で収まります。考える前に動く時に、予期せぬ結果が出たりします。しかし予期せぬですので安定感もなくいつでもではありません。よって確立から考えてデータに頼るのです。しかしそのデータも血となり肉となり消化されていなければ使いこなせません。
 強さとは何なのか?その答えを今回の東洋大学は教えてくれたように思います。攻めて攻めて、往路であれだけ安全パイのリードを奪いながらさらに、復路でも攻め続けて差を広げる。全てのチームが今回ばかりは東洋に兜を脱がざるを得ない結果となりました。21秒の1秒を削り出す努力が、結果的に9分の差となって結実したのですから。プレスでもどうやってそんな強いチームが作れたのか?そんな質問が飛び交ったようです。そんなノウハウがあるか~ですよね。特別な練習とかでなく、責任感や連帯感や本当に一番面倒で難しいところを常に直視しながら歩んできたということであって、おそらく選手自身も次につなげるという顔つきで、奢りや満足に浸っているようには見えませんでした。



スポンサーサイト

コメント:0

コメントの投稿

トラックバック:0